宮城県気仙沼市にフェンシングの全国大会で優勝した小学生がいる。競技を始めてからわずか2年3カ月。快挙を達成した背景には、この土地ならではの練習環境と明確な目標があった。

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フェンシングの街 気仙沼

気仙沼市に住む小学4年生神山瑛くん。地元のフェンシングクラブに所属し、9月に開かれた全国小学生フェンシング選手権フルーレ男子小学3・4年生の部で優勝を果たした。

9月に行われた全国大会で 見事優勝した気仙沼市に住む神山瑛くん
9月に行われた全国大会で 見事優勝した気仙沼市に住む神山瑛くん

神山くんが所属するクラブでは、小学3年生から中学2年生の約20人が、週2回のペースで練習している。身近なライバルと技を磨きつつ、練習では県大会で優勝経験のある高校生からも指導を受けている。高いレベルで練習に取り組むことができる環境が整っているのだ。

高校生から指導を受ける神山くん
高校生から指導を受ける神山くん

もともと、気仙沼はフェンシングが盛んな街。3度オリンピックに出場した菅原智恵子さんや、2012年ロンドンオリンピック・フルーレ団体で銀メダルを獲得した千田健太さんといった、世界で活躍する選手も多く輩出してきた。

神山くんがフェンシングを始めたのも、そんな町で生まれ育った母からの勧めだった。

「私は鼎が浦高校(現・気仙沼高校)出身で、昔からフェンシングが有名だったので、同級生や先輩が活躍している姿を見ていたので、息子が運動が得意なのを見てやってみたらいいんじゃないかなと思い、フェンシングを勧めました」
(母・望さん)

神山くんがフェンシングを始めたきっかけは、母・望さんからの勧めだった
神山くんがフェンシングを始めたきっかけは、母・望さんからの勧めだった

競技歴わずか2年3カ月

じつは、神山くんはフェンシングを始めてまだ2年3カ月。全国大会初出場での初優勝はまさに快挙だった。

強さの理由について、指導する気仙沼ジュニアフェンシングクラブの小野寺征貴監督に話を聞くと、「武器は頭。よく考えていること」と話す。攻撃を仕掛けながら、相手の特徴を捉えていく力があり、試合形式での練習においても、やみくもにやるのでなく「どんな技を習得するか」常に目標を定めて取り組んでいるのだという。

「相手が打ってきた所に合わせて打って相手の剣だけ抜けるようにしたり、タイミングをずらしてからの攻撃ができたり…。この相手にはどの技が効くとか、何をやったらだめとか、考えて見極めるのが好き。」
(気仙沼ジュニアフェンシングクラブ 神山瑛くん)

一方で、成長を近くで見て来た父・慶さんは「没頭する能力がずば抜けている」と話す。
神山くんは、恵まれた練習環境の中で持ち前の「頭」と集中力で、めきめきと力をつけてきたのだ。

夢はオリンピックとお医者さん

さらなる成長が期待される神山くん。これからの目標を聞いた。

「来年の全国大会でベスト8に入って、日本代表になることです。将来の目標はお医者さんになることと、フェンシングのオリンピック選手になること。弟が生まれつき心臓病で、それを治したいからです。」
(気仙沼ジュニアフェンシングクラブ 神山瑛くん)

神山くんは3兄弟の長男。両親に話を聞くと、マイペースながらも面倒見のいいお兄ちゃんだという。特に同じ小学校に通う3歳下の弟・陽くんとは、休み時間も一緒に過ごす仲の良さだ。そんな陽くんだが、じつは、純型肺動脈弁閉鎖症という心臓の病気で手術を受け、今も薬の服用を続けている。

医者というもう一つの夢には、「弟の病気を自分の手で治したい」そんな弟を思う兄としての思いが込められていた。

3兄弟の長男の神山くん(右)面倒見のいいお兄ちゃんだ
3兄弟の長男の神山くん(右)面倒見のいいお兄ちゃんだ

「フェンシングのオリンピック選手とお医者さん」

気仙沼の小さなフェンサーは、これからも夢へ向かい、突き進む。

(仙台放送)

仙台放送
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