エスカレーターを立ち止まって利用することを義務付けた条例が、名古屋市で2023年10月から施行された。条例に罰則はないが、市は「AI」を使って違反者を特定する「実証実験」に乗り出した。

自動運転のAI技術を活用して実証実験

政令市で初となるこの条例は、エスカレーターでの事故を防ぐため、歩いて利用することを禁止し立ち止まることを義務付けるもので、安全な利用を促す狙いがある。

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名古屋の金山総合駅で10月2日、河村市長や職員らがティッシュ配りなどを通して、市民らにエスカレーターの安全な利用を呼びかけた。

名古屋市では、エスカレーターの事故などによる救急隊の出動件数が年々増えている。

70代の名古屋市民:
(条例は)助かります、不自由だから。パッと来たときにカバンなんかに当たったりするのが一番怖いです

40代の名古屋市民:
子供と一緒だといつも上下で乗っていたので、それが普通に(横並びに)乗れるようになった方が安全かなと思っていたので

名古屋市スポーツ市民局長:
右側を歩く習慣がついてしまっているんですけども、今回この条例を施行することで、安全にご利用いただきたい

大きな手に「なごやかにSTOPしてね」と書かれたパネルを背負い、正しい乗り方を実践する「なごやか立ち止まり隊」も発足した。

しかし、取材を続けていると、多くの人がエスカレーターを歩いて利用している現状があった。

50代の名古屋市民:
誰かが見張っているわけでもない。1人1人が知らないと意味がない

40代の名古屋市民:
罰則は取れないでしょうね。今までとあまり変わらないかなというのが正直

この条例には罰則がないことから、その効果を懸念する声も聞かれた。

そんな中、名古屋市はある実証実験に乗り出した。

実証実験に使われるのは、名古屋市中区の会社が開発し海外の自動運転タクシーなどにも使われているという、AI機能を搭載したライダーセンサー。

来栖川電算の山口陽平取締役:
カメラとよく似たものではあるんですけど、距離が分かる。撮ったものを3次元的に表示しているんですけど、AI的な処理をして違反している利用者にアナウンスして、その行動が改善されるか経過観察する

小型センサー1台で、180mの距離まで立体的に人の流れを捉えることができる。

実証実験ではセンサーをエスカレーター付近に設置し、AIシステムが違反者を特定すると、「今、違反者がいるので歩かないでくださいね」「2列で並んでも大丈夫ですよ」などと周囲にアナウンスが流れる仕組みだ。

来栖川電算の山口陽平取締役:
罰則がなかったとしても、大半の人がちゃんと守っている状況であれば、その人たちからの視線は辛くなると思うんです。それなりの効果はあるんじゃないかなと思っています

名古屋市は2024年2月までに数カ所の地下鉄の駅のエスカレーターで実証実験を行い、今後の実用化を目指すとしている。

(東海テレビ)

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