大手百貨店が日本初上陸のナイトクラブで サステナブルファッションイベントを開催。サステナブルへの関心が高まるなか、SDGsの観点を持ちながら次世代顧客を発掘する試みとして企画された。
高島屋が「Zouk Tokyo」でサステナイベント開催
10月2日、銀座に新たにオープンするナイトクラブ「Zouk Tokyo」で、高島屋がサステナブルファッションイベントを開催した。

会場となった「Zouk Tokyo (ズーク東京)」は、10月6日に東京・銀座にオープンするシンガポール発のナイトクラブ。このイベントでは、入場チケットの代わりに、着なくなった衣料品が回収された。
この回収された衣料品に含まれるポリエステルを、ケミカルリサイクルと呼ばれる分子レベルまで分解するリサイクル技術により、繊維などの原料にして再利用するという。
イベントでは、この再生ポリエステルの生地を使用した、若者に人気のブランドとのコラボ商品もお披露目された。高島屋は、百貨店と接点のない世代をサステナブルで取り込み、新たな顧客獲得につなげたい考えだ。
高島屋 MD本部・氏家友彦マーチャンダイザー:
若年層もあるが、昨今ジェンダーレス、エイジレスもあるので、いろんな層を獲得していかなければ、先はないのかなと思います。
世界全体では、年間9200万トンもの衣類が廃棄されている現実がある。
高島屋は商品を販売するだけでなく、回収をセットで行うことで、循環型社会の実現を目指すとしている。

コラボ商品は、4日から全国の高島屋で発売する予定だ。
SDGs達成には民間企業の投資も必須
「Live News α」では、エコノミストで企業ファイナンスを研究している崔真淑(さい・ますみ)さんに話を聞いた。
堤 礼実 キャスター:
今回の取り組み、どうご覧になりますか。

エコノミスト・崔真淑さん:
百貨店は、インバウンドによる海外顧客、カードなどの金融事業の伸びと、現在のビジネス環境は決して悪くない。
ただ、ビジネスの持続可能性を高めるためには、Z世代の取り込みが課題になる。
今回の試みのように、次世代の顧客として若者向けイベントをSDGSを絡めて行うのは、非常に面白い。
さまざまな調査を見ても、SDGSプロジェクトに参画したいというZ世代は多い。
ただし、「価格が安いと参加しやすい」という調査結果も際立っており、今回は入場料を古着としているところも、Z世代が参画しやすいイベントになっていると思う。
企業によるSDGS投資が問われている今、注目したいイベントです。
堤 礼実 キャスター:
企業によるSDGS投資で、崔さんが注目するポイントは。
エコノミスト・崔真淑さん:
「持続可能な開発目標(SDGs)」は、2030年までに達成すべき目標。
2030年という限られた時間軸の中で、野心的な目標であるSDGsを達成するには、壮大な取組みや投資が必要。
国連貿易開発会議(UNCTAD)によると、2030年までにSDGsを達成するために必要な投資額は、世界で年間5兆~7兆ドルと試算されている。
ODAなど各国の政府関連支出は、年間約1兆ドルにすぎない。やはり、民間企業によるSDGS投資が必要となってくる。
ここで、悩ましいのは、企業の利益にもならないと取り組めないということ。
社会的責任投資がマイナスになる場合とは
堤 礼実 キャスター:
企業と社会の利益のバランスを、どうとるかということですね。

エコノミスト・崔真淑さん:
ファイナンス研究を見ると、民間企業が社会的責任投資をすることは、企業価値に繋がりやすいことが報告されている。
ただ、すべてのケースがうまくいっているわけでもない。過剰投資や本業とかけ離れた投資などでは、マイナスになっている場合もある。
今回の高島屋のイベントは、次世代顧客発掘と、社会へのSDGSの関心を集めるというもので、本業の延長線上での取り組みは、お手本となるようなイベントなのではないか。
堤 礼実 キャスター:
環境に優しいとは何かを考えた際、“循環する”ということがとても重要です。
ただ服やものを売るだけではなく、回収して、リサイクルなどにつなげるなど、意識を高めていくことが必要なのかもしれませんね。
(「Live News α」10月2日放送分より)