「お役に立てればプロジェクト」とは

新型コロナウイルス感染拡大でダメージを受けた産業界をアシストするために、大学が特許を無償開放する。

前に進んだかと思えば、斜めにバック、今度は真横と縦横無尽に動き回る不思議な車輪。

人の手の動きをリアルタイムにマネする、手首型のロボット。
まだ眠っている発明の数々が、コロナ禍の社会を立て直すヒントになるかもしれない。

東京工業大学が、新たに立ち上げたプロジェクト。
その名も、「お役に立てればプロジェクト」。

東京工業大学・大嶋洋一教授:
研究者は自分たちも社会貢献をしたいのに、何をしたらいいんだろうと思っている人が多くて

東工大が保有する131の特許を一定期間、無償で開放することにした。
新型コロナの影響で、ダメージを受けた産業界の復興に役立ててもらおうというのが狙い。
リストには、どんな発明があるのか。

特許を無償開放 発明の数々

特許を無償開放した鈴森康一教授:
デコボコがあっても、横方向も縦方向も、斜め方向もいろんなところに行けるというのが、この車輪の特徴

鈴森教授が発明したのは、全方向に移動できる車輪機構。
たくさんのローラーがついた爪を段差に引っかけ、向きを変えることなく、前後左右斜めに進むことができる。
ウイルス対策のための非接触型ロボットの足としての応用などが期待される。

コロナ禍で存在感が高まる、オンライン機器の進化につながる特許も。

特許を無償開放した矢野哲司教授:
強いガラス、安全なガラスというのが新しい生活スタイルにも何かしら貢献ができるんじゃないか

矢野教授の発明は、ガラスを強化する技術。
通常のガラスに比べ、およそ5倍の強度があり、1平方センチメートルあたり、10トンの力を加えなければ割れない。
これを使えば、丈夫なスマホが作れるという。

人の手に取り付けたセンサーを通じて、その動きをリアルタイムに再現できる装置。
医療向けロボットなどの遠隔操作への活用が考えられる。

今回、大学が特許使用料をとらずに無償開放するわけについて東京工業大学・大嶋洋一教授
「社会で使われる可能性が広がるという意味では、無償でも、それを利用してもらえる喜びの方が(研究者には)大きい」と話した。

こうした大学の取り組みを、産業界は、どう受け止めているのか。

町工場による深海探査艇プロジェクトなどを成功に導いた浜野製作所・浜野慶一社長
「どこの大学の研究室が、どんな特許を持っているかを調べる機会がない。うまくマッチングできれば、いいものに変わっていくのかもしれない」と話した。

三位一体の好循環をつくる

内田嶺衣奈キャスター:
特許の無償開放、すごく素敵な取り組みだなという風に感じたんですけれども、こういった大学の知的財産を今後事業化していくためのポイントはどんなところになりますか?

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
ずばり初期投資。ここにあると思うんですよね。
いい特許があっても事業化する投資が必要なんですがここを誰が負担するのか。
これが最大のネックだと思うんです。
今、中小企業は、実際日々の資金繰りにかなり困窮されていますから、この初期投資を生み出す余地がまだ余力はないんです。
ここのところを政府系の金融機関、銀行とかを含めたリスクマネーを投下して解消していけるかどうかがポイントだと思います。
私はこういった状態を目指して中小規模を支えていく。
これが大事ではないかなと思うんです。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
大学は特許を通じて支え、
政府系の金融機関や銀行が、融資ではなくて出資のようなリスクマネーを中小企業に提供していく。
これによって中小企業初期投資の負担を軽減していくことによって事業化を後押ししていく。
この結果うまくいけば中小企業の売り上げになりますし、大学には特許料とか金融機関には配当等で還元がされる。
こういった「三位一体の好循環」を作っていけるかどうかを目指して協力してほしいなというふうに思います。

内田嶺衣奈キャスター:
その松江さんがおっしゃる「三位一体の好循環」というのが社会問題解決へとつながっていくのがベストですよね。

デロイトトーマツグループCSO 松江英夫氏:
このコロナで、非接触ニーズとか衛生とか非三密ニーズ、こういった技術的ニーズは高まってますから一体となって解決していくことによって社会が良くなっていく。
これが一番求められる方向ですね。

内田嶺衣奈キャスター:
今回の大学による特許の無償開放から新しい製品やサービスが生まれていきますとこれが社会貢献の新しいロールモデルになりますし。
後に続く大学が増えていくといいなと思います。

(「Live News α」7月3日放送分)