今、ふるさと納税の駆け込み申請が相次いでいる。その理由が10月から始まる国によるルール改正だ。あなたが狙っていたあの返礼品も、手に入らなくなるかもしれない。

ふるさと納税の2つの大きなルール改定

大阪の泉佐野市が2年前から、新たな地場産品として推し進めてきた返礼品に「氷温熟成肉」がある。 氷温熟成肉は0度以下の低温で、うま味成分を引き出した熟成肉だ。 しかし、10月1日からスタートするふるさと納税に関するルールの改定で、返礼品として認められなくなるのだ。 ルール変更は大きく2つのポイントがある。

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さまざまな自治体で返礼品として人気の「熟成肉」や「精米」については、原材料を他の都道府県や海外などで調達したものは10月以降、返礼品として認められなくなる。

さらに、これまでグレーゾーンとなっていたふるさと納税の事務処理などにかかる費用、いわゆる「隠れ経費」も含めて「寄付額の5割以下」に全て収めるよう制度が厳格化。 そのため、これまでと同じ寄付額ではもらえる返礼品の量が減ってしまう可能性が高いのだ。

このルール改定で寄付額32億円減少、関連事業者は「頭が真っ白」

この変更が「急だ」と訴えているのは、「熟成肉」を全面アピールしてきた泉佐野市だ。

泉佐野市 千代松大耕市長:
今回の悪質な改正によって大きな影響が出てるということを心苦しく思っています。『取り下げなかったら不指定にする』という脅しのような文言があったので、それに従わざるを得ないという感じですね。

泉佐野市は、10月からのルール変更で、人気の”熟成肉”や”精米”を返礼品として扱えなくなることで、2023年度は寄付額が32億円減少する見込みだということだ。

ふるさと納税の需要を見込んで、泉佐野市内に熟成肉の工場を建てた事業者は「正直、頭が真っ白になった。本当にどうしたらいいんやろうっていうのが今の状況」と頭を抱えている。

ルール変更の理由について、総務省は「地場産品を扱うことで、その地域の活性化を図る制度の趣旨に合わない」としている。

丸善食品の担当者:
当時の総務大臣から『地場産品がないなら地場産品を作り出したらいいんじゃないの』っていう意見をいただいたので、われわれ市役所の担当者の方も含め、いろいろなところにご相談ご協力いただいて「氷温熟成」という技術を習得させていただいて。全部ひっくるめると約4億円弱の費用ですかね。加工場が2つあるんですけど、全部で(従業員)10~15名ぐらい。この先が本当に心配ですね

泉佐野市に2つある加工場の売り上げの約8割がふるさと納税の返礼品で占められているということで、今後に不安があると話す。

泉佐野市 千代松大耕市長:
新しい返礼品を開拓してきたんですけど、そいういうアイデアを全部踏みつぶされたような気がしまして悔しいですね

泉佐野市は、国に対し、今後も協議を求めていくということだ。

「熟成肉・精米」加工のみNGは改悪か?

これまでも泉佐野市と総務省は、ふるさと納税をめぐり何度も対立をしてきたわけだが、今回のルール変更について双方の言い分を整理する。

泉佐野市の千代松市長は「悪質な改正だ」と批判し、「アイデアを全部踏みつぶされたようで、悔しい」と話した。ちなみに今回のルール変更で泉佐野市の寄付額は年間32億円も減る見込みだということだ。

一方、総務省は今回のルール変更の理由として「熟成肉・精米の加工のみでは十分な付加価値がなく、地場産品とは認められない」と説明している。 また「泉佐野市だけを狙ったものではない。熟成肉・精米を広めているのは数十の自治体で見受けられるため、今回のルール変更に至った」としている。

地場産品、地場産業がない自治体ができるアイデアについて、番組コメンテーターで尼崎市長を経験した稲村さんは「税金というのは地場産品、地場産業の応援だけでなく、本来、社会インフラを支えるためのものなので、“モノ”だけではなくサービスに充てるということも“できる工夫”の一つではないか」と話す。

熟成肉とハムの違いは何?

今回のルールだが、少し曖昧だなと感じるところがある。

泉佐野市の返礼品としてNGとなった熟成肉だが、これは何をもって“熟成”とするのかが曖昧で、冷凍保存との区別がつかないためNGとなった。では「加工のみ」が行われたハムはどうなのか聞いてみると、「加工食品に近い商品だからOK」ということだ。これに対して泉佐野市は「肉の成分の変化などデータも持っているから基準が曖昧なのでは?」と話している。
国は「付加価値とは言えない」としつつ、泉佐野市は「データがあり、付加価値はある」という主張をしているということだ。

今回のルール変更について番組コメンテーターであるエコノミストの崔真淑さんは「ふるさと納税の制度自体がいたちごっこになっているところがある。お金の使われ方に対して本当に課題はないのかということをもう一度再検証しても悪くないのではないか」と話した。さらに稲村さんは「納税をするというのはネットショッピングをするのは別のこと。今は本来の趣旨からは外れてしまっているんじゃないかなという根本的な議論も必要なのでは」と話した。

ふるさと納税をめぐってはこれまでもルール変更が相次ぎ、国民もそして自治体も混乱してきた。そもそもの制度に乗っ取った安定した運用を国の主導で進めていってほしいと思う。

(関西テレビ「newsランナー」2023年9月26日放送)

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