福岡・豊前市が出資する第三セクターが、半年にわたって県の土地を不法に占拠している。一体、何が起きているのか。当事者を直撃した。
第三セクターが宇島港を“不法占拠”
福岡県東部に位置する人口約2万4,000人の豊前市。海と山に囲まれた自然豊かなこの町で今、大きな問題が起きている。

川崎健太キャスター:
あー、ありましたね。これですよ。これが、いわゆる不法占拠の山ですね。高さもすごいし、量もかなりの量で、土地を埋め尽くしていますね
豊前市の北部に位置する宇島港にうずたかく積まれていたのは、大量の砂のようなもの。実は、この場所は福岡県の港湾用地で、豊前市にある会社が不法占拠を続けているのだという。
この場所で一体、何が起きているのか。管理する県の担当者に聞いた。

福岡県京築県土整備事務所・藤本秀司副所長:
これは火力発電所から排出された石炭灰を加工して製造した製品となっておりまして…
放置されているのは、火力発電所で使った石炭の灰を加工して作ったリサイクル材で、敷地の埋め立てなどに使用されているという。

福岡県京築県土整備事務所・藤本秀司副所長:
もともとこの用地はですね、荷物を一時的に保管するための港湾の施設なんですけども、令和4年度までは「豊前開発環境エネルギー」が使用していたんですけども、使用料の支払いの滞納がありましたので、令和5年度については使用を許可しておりません
不法占拠しているのは、豊前市が出資する第三セクターで産業廃棄物処理会社の「豊前開発環境エネルギー」。県は、2022年度の土地使用料の一部を会社が支払わなかったため、2023年4月からの使用更新を認めなかった。

そのため、港に置かれたリサイクル材を速やかに撤去し「原状回復」するよう会社に求めているが、約半年が過ぎた現在も放置が続いているという。
福岡県京築県土整備事務所・藤本秀司副所長:
県としては非常に遺憾だと思っておりますが、一番いいのは自主的な撤去だと思っておりますので、1日も早い撤去を求めていきたい

豊前開発環境エネルギーが不法占拠を続けているのは、宇島港にある3区画。置かれているリサイクル材の量は2,200万リットルに及ぶ。これは一般的な25メートルプールに換算すると約40杯分。仮に撤去するとなると数億円単位の費用がかかるとみられている。
川崎健太キャスター:
本来は県の土地なので、会社側がまったく動かないとなれば、最終的には県による行政代執行という可能性も考えてしまうんですけど、その前にまず自分たちで片付けてもらうように(考えている?)
福岡県京築県土整備事務所・藤本秀司副所長:
そうですね。我々、整備事務所としましては、港湾の管理者として施設の不法利用に対して適切に対応していきたいと思っております
不法占拠の理由は…役員に直撃電話
県が再三、リサイクル材の撤去を求めているのにも関わらず、豊前開発環境エネルギーは、なぜ不法占拠を続けているのか。
会社の事務所に電話をかけてみたが、つながらなかった。しかしその後、役員から折り返しの電話があり、直接話を聞くことができた。

川崎健太キャスター:
なぜこういった“不法占拠”の状態が続いている?
豊前開発環境エネルギーの役員:
今、県の土地代を支払う資金力がない状態

実はこの豊前開発環境エネルギーは、2022年3月に営業許可を取り消されている。許可を得ずに「バイオマス発電の焼却灰」を取り扱っていたとして、県から廃棄物処理法違反で5年間営業許可を取り消す行政処分が下されていたのだ。
川崎健太キャスター:
この不法占拠状態が続いていることの責任はどう捉えていますか?
豊前開発環境エネルギーの役員:
それについては、私どもも申し訳なく思っているのは間違いないし、1日でも早くどうにかしないといけないということで日々動いています。だから極論、したくてしているワケではない
土地に置いているリサイクル材はごみではなく利用できる製品で、もともと売却先が決まっていたものの交渉が決裂したため、現在も売却先を探している状況だという。

豊前開発環境エネルギーの役員:
いたずらに不法占拠をしたくてしているわけではない。とにかく改善すべく鋭意努力しています。ただ、かたちが見えてない限りは迷惑をかけている状況には変わりがないので、1日も早く、今の現状を打開したいと強く思っています
川崎健太キャスター:
いたずらに行っている行為ではないというニュアンスですけど、結果的には、これはかなり景観を含めて大きな問題になっているが?
豊前開発環境エネルギーの役員:
それを否定する気はもちろんないです。申し訳ない思いがないワケでは、全くないですよ
市長「市にも責任あると認識」
不法占拠が続いていることに市民は…。
豊前市民:
景観やね。花火が上がるとき見えないよね。早めに撤去してほしい

豊前市民:
早く片付けてほしいよ。景観としてもよくない。前はなかったんやけんね。不法占拠や。この会社自体、辞めてほしい。こんな会社、要らん。ようそんなんで市が金を出したなと思う
市民は、この問題には豊前市にも責任があると考えている。豊前開発環境エネルギーは第三セクターで、豊前市が480万円を出資しているからだ。
今回の不法占拠をどのように考えているのか。豊前市の後藤市長を直撃した。
川崎健太キャスター:
今、宇島港の一角が不法占拠状態になっていることについて、市も出資している第三セクターの行為ですけど、市長としてどう捉えていますか?

豊前市・後藤元秀市長:
非常に残念です。本当に市民の皆さんに心配をかけておりまして、申し訳ないと思っています。第三セクターという、市が株式を保有する会社組織ですから、市の責任はあると認識しています

会社の設立は2014年。市から会社に監査役を1人送ることになっていた。しかし、前任の監査役がいたのは2017年までで、その後は会社側に拒否され、市として経営を監視することができていなかったという。
豊前市・後藤元秀市長:
私たちもできる限り担当者としょっちゅう連絡を取っていたんですが、なかなかまともに受けてくれなかった。それが今につながっているというところです
川崎健太キャスター:
端から見ると、積極的に市が関わってこなかったように見えてしまいますが…

豊前市・後藤元秀市長:
非常に残念ですが、そういう風に見られているかもしれません。文章で「こうしてほしい。こういう情報が欲しい。何とか協力してください。ぜひ話を聞かせてください」という申し入れは再三にわたり出しております。ただ全部無視されております
川崎健太キャスター:
結果的に関与しにくい部分もあったのかもしれないが、不法占拠になっていることに対する市としての責任をどう(感じている)?
豊前市・後藤元秀市長:
あの港の姿、本当に我々としても申し訳ないと思っております。なんとか県と相談しながら、早く解決できるように努力していくということに尽きます

豊前市の第三セクターによる県の用地の不法占拠。県は、引き続き会社に速やかな撤去を求めていくとしている。
(テレビ西日本)