新型コロナの第9波が到来しているが、同時に流行しているのが“季節外れ”とも言えるインフルエンザだ。この状況にどう対応すればいいのか、どう備えたらよいのかについて、感染症の専門家・関西医科大学附属病院の宮下修行教授に聞いた。

観測史上初の「ずっと流行期」

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(Q.コロナもインフエンザルも増えていると、現場で実感していますか?)
関西医科大学附属病院 宮下修行教授:

お盆明けにコロナがぐっと増えた印象があります。インフルエンザは学校の新学期が始まり一気に増えてきた感じがします

まずはインフルエンザからみておくと、インフルエンザは観測史上初の「ずっと流行期」にあるそうだ。定点1医療機関あたりの感染者数の推移を見ると、1人を超えると流行していると判断されるが、2022年12月に流行期に入り、大きく感染が広がった。一時やや減少したが、ずっと流行している状態が続き、2023年9月に入りかなり数を増やしている状況だ。

インフルエンザによる学級閉鎖も増加傾向にある。9月1日時点では42クラスでしたが、2週間後の15日には360クラスにまで増えている。

この状況について宮下教授は「コロナ対策はしていたがインフルエンザの免疫を持たない人が増えている」と指摘している。確かにここ数年は、インフルエンザは流行していないが、その影響があるということだろうか?

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
インフルエンザは南半球から日本に入ってくるものです。ここ数年、日本はコロナによる“渡航制限”をかけていたので、それがありませんでした。それが3年間続きましたので、私たちはもう(インフルエンザに対する)免疫をほとんど持っていません。その状況下で今インフルエンザが発生し、流行してしまっている現状です。(Q.インフルエンザの免疫はどのくらい持続するものですか?)ワクチンの免疫が5~6カ月しか続きませんが、それと同じぐらいですね

コロナ感染者も増加傾向

一方で、新型コロナの感染者も増えている。新型コロナの定点1医療機関当たりの感染者数の推移をみると、冬の「第8波」が過ぎ、一時は感染者は減っていたが、6月ごろから増え始め、増加傾向が続いている。

新型コロナによる学級閉鎖も増加傾向にあり、9月1日時点では、207クラスだったが、2週間後の15日には663クラスにまで増えている。

この状況について、宮下教授は感染対策の緩みと変異株の影響を指摘している。5月には、感染法上の位置づけも「5類」となりマスクを外す人も増えてきて、そういう影響もあるだろうか?

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
やっぱり大きいですね。今回のコロナでこの3年半、皆さんが一生懸命マスクをして、手洗いもして、ソーシャルディスタンスをとって、それが呼吸器系のウイルスには極めて効果的であったということは間違いありません。ただ、冬に流行した「第8波」はBA.5というオミクロン株の一種だったのですが、これがまた変異して感染しやすいものに変わってきました

感染力の強い変異株「エリス」が増加中

「エリス」と呼ばれる変異株が、大阪府では37.1%がこの株に置き換わっている。いま主流の株はエリスだ。主な症状はのどの痛みや発熱で、宮下教授の病院では肺炎が多い印象だということだ。

感染力に関しては、従来株の1.2倍という研究結果もある。この「エリス」が増えていることも、感染拡大に影響しているということなんだろうか?

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
そうですね。感染力が強いと他のウイルスよりも優位になってしまいます。こういうウイルスは、やはり強い方が流行してしまうものです。「XBB」というオミクロンの中の系統なんですが、それが枝分かれしていった1つが「エリス」です。肺炎を起こしやすいタイプです。ただ、肺炎と言いましても、初期の第1波、第2波で流行したようなものと比べますと症状が軽いタイプが多いですね。

(Q:ということは「エリス」は毒性は弱くなってるのでだろうか?)
関西医科大学附属病院 宮下修行教授:

その通りです。オミクロンに変わってから、病原性というものが低下しましたので、重症化する人は減りました

そして、新たな変異株も出てきてる。通称「ピロラ」と呼ばれる変異株だ。WHO世界保健機関は8月、“監視下に置くべき変異株”に指定し推移を見守っている。

日本でも7日に東京で初めて確認されている。35以上のタンパクの変異があり、まだ不明なことが多いピロラだ。近畿では確認はされているのか?

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
いまのところ近畿では確認されていませんが、恐らくこれはもう入ってきていると思われます

(Q:不明なことが多いという「ピロラ」にどう警戒したらいいのだろうか?)
関西医科大学附属病院 宮下修行教授:

問題は35以上の変異があるという点です。何が問題かというと免疫です。例えば私たちがオミクロンにかかったとしても、その免疫をすり抜けて、またこのピロラにもかかってしまう…というぐらいの“免疫逃避”をするタイプなんです。ただ、感染性を「エリス」と比べますと「ピロラ」の方が試験管の中では低いという結果が出ています

コロナのワクチンは20日からスタート

(Q:新型コロナとインフルエンザは同時感染しますか?その時の症状は重くなるのか?)

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
同時感染の報告は多数あります。残念ながら、新型コロナとインフルエンザとでは、系統が違うウイルスです。なので同時感染すると、それだけ症状が強くなってしまうというデータは出ています

(Q:新型コロナだと、喉の痛みとか、場合によっては肺炎になる方もいるが、そこにインフルエンザが加わるとどうなるのか)

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
インフルエンザというのは、全身感染症で高熱が出ます。関節の痛み、筋肉痛といったような症状が出るので、それらがコロナに合わさってしまうと、より強く症状が出てしまうということになります。

(Q:感染したらどうすればいいのか?直接病院に行ってもいいのだろうか?)

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
5類に移行してからは直接病院に行っていいということにはなっております。ただし、やはり発熱外来というのを設けて、時間制で対応している病院もあります。やはり個々の病院に確認していただきたいです。まずは電話をしていただきたいです

では、どう対策をとればいいのか。その1つの手段がワクチンだ。コロナワクチンは、9月20日から接種がスタートする。こちらは現在流行中の「エリス」にも対応しているということだ。

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
これはXBB対応のワクチンで、これまでのデータによると「エリス」、それから「ピロラ」に一応、中和抗体ができるものです。

そして、インフルエンザのワクチンについては例年通り10月以降に接種がスタートする。

(Q:この2つのワクチン(コロナとインフルエンザ)は同時に打っていいのだろうか?)

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
コロナがメッセンジャーRNAワクチン、そしてインフルエンザは不活化ワクチンで、全くタイプの違うワクチンです。同時に打っても全く問題はないとお考えください。集団免疫を作るのがワクチンの大きな特徴で、これは大きな意義があります

(Q:混合ワクチンの開発は進んでいないのだろうか?)

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
研究は進んでいますが、安全性の問題などもあり実用化はしていません

(Q:家族での隔離は掃除がしんどい、今は「5類」なので簡単に考えていいのだろうか?)

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
これは、簡単に考えていい…とはなかなか言えません。というのも、感染力が強いので、むしろ以前のウィルスよりは容易に感染しやすいです。ただし、隔離が1番間違いないのでソーシャルディスタンスがあれば、そうそう感染するものではありません。ですから、お互いがマスクをして距離を取る。これが重要になってきます

ウィルスが変異して感染力強めていくということは、ワクチンを打っても基本的にはどんどん防ぎにくくなっていると思うが、どうやって対抗していけばいいのだろうか?

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
基本はやっぱりワクチンが絶対的に間違いありません。ただ、今言われたように効果が衰えてきますが、ウィルスの方も明らかに“弱毒化”してきています

(Q:インフルエンザと新型コロナ、同時に検査した方がいいのだろうか?同時に検査するキットもあるようだが…)

関西医科大学附属病院 宮下修行教授:
はい、これは今は同時検査が主流になっております。インフルエンザは流行期に入っていますので、そういう意味では2つ同時に検査することが良いかと思います

(関西テレビ「newsランナー」9月18日放送)

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