「楽しくアクションSDGs」と題して、持続可能な社会のために何ができるのか、SDGsを見つめ直す。今回は、“脱プラスチック”への挑戦を取り上げる。

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海に大量に流入するプラスチック。“プラスチック汚染問題”は、海を悩ませる深刻な問題だ。

ロンドン市民:
プラスチックがどこにでも多すぎる。(代わりになるものがあるなら)完璧な解決策だね。

そんな環境問題に対し、ロンドン市民が“完璧な解決策”と感じた、脱プラスチックへの取り組みとは…。

年間約800万トンのプラスチックが、ゴミとして海に流れ込むとされるなか、海で採れる素材に注目が集まっている。

それが“海藻”だ。

世界中のどこの海でも採れる“海藻”だが、そのほとんどが、収穫されても捨てられているという。

「海を悩ませるプラスチックの代替品を海の中に見つけた」

その“海藻”に目を付けたのが、イギリス・ロンドンのスタートアップ企業「Notpla(ノットプラ)」で、社名はノット・プラスチックの略称だ。

ノットプラが開発したのは、海藻からできた飲み物や調味料のパッケージ「NotPla Ooho」。プラスチック製の“代用”になるとして、注目を集めている。

ロンドンから西に400km離れた、ウェールズにある水産養殖場で採れた海藻を、工場で乾燥させ粉末状に。

粉末状の海藻から作られた薄い膜
粉末状の海藻から作られた薄い膜

その後、独自の特別な処理を施し、薄い膜の形状にして出来上がる。

現在では、ロンドン市内のプールで、海藻パッケージに入ったスポーツドリンクの試験販売を行っている。

FNNロンドン支局・一文字哲也カメラマン:
口の中で割ると、スポーツドリンクの中身が出てくるのですが、海藻の風味やにおいは全くありません。パッケージは口の中で自然に溶けていきます。

そのまま口に入れることのできる“海藻パッケージ”を使った製品は、マラソンの給水所でランナーに配布されたり、屋外イベントで販売されるアルコール飲料のパッケージとしても使用されている。

海藻を使った素材はプラスチック素材と違い、土の中に埋めると、最大6週間で分解される利点がある。

ロンドン市民に、海藻からできたパッケージについて聞いてみた。

ロンドン市民:
海藻!プラスチックに代わる簡単なものがあれば、考えなくてすむ。これは素晴らしい選択肢ね。

ノットプラは2022年12月、ウィリアム皇太子と王立財団が設立した、環境問題への取り組みを表彰する「アースショット賞」を受賞。 

9月にはウィリアム皇太子とキャサリン妃が、ウェールズにある海藻の水産養殖場を訪問し、ノットプラの取り組みを視察した。

ノットプラの設立者の一人であるピエール・パスリー氏は、「私たちは海を悩ませるプラスチックの代替品を海の中に見つけた」と述べた。

これからも、使い捨てプラスチックを永久になくすことに取り組んでいくという。

「つくる責任、つかう責任」を果たす好例

「Live News α」では、一橋ビジネススクール教授の鈴木智子さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
この試み、どうご覧になりますか.

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
プラスチックは軽くて耐久性にも優れ、比較的安く生産できることから、この50年で生産量は20倍になっているという統計もあります。

ただ、安くつくれるから「使い捨て」にされるケースが多く、しかも、耐久性に優れているため、埋め立てても自然に帰ることが期待できないなど…。これまで素材として重宝されていたメリットが、SDGsな視点で見直すと、デメリットが目に付くようになりました。

SDGsの17目標のひとつに「つくる責任、つかう責任」があります。この「つくる責任」を果たすために、企業はプラスチックに代わる素材の見直しを進めていて、今回の海藻の活用は、その一つの答えかもしれません。

堤 礼実 キャスター:
今回のような取り組みを、加速させるためのポイントは。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
捨ててしまえばただのゴミでも、工夫次第で利益を生み出す可能性を秘めています。今回の海藻は、まさにそうです。これまでの当たり前を見直して、もっと地球にやさしい方法はないかと、考え直すことは大切です。

“発想の転換”でイノベーションに繋げる

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
無意識のうちに前提条件としていた事柄を疑い直す“発想の転換”によって、イノベーションへとつながる場合もあります。

堤 礼実 キャスター:
発想の転換によって生まれた地球に優しいものには、どんなものがあるのでしょうか。

一橋ビジネススクール教授・鈴木智子さん:
例えば、通勤に使う、ドライブが好きなど、自動車を所有する理由はさまざまですが、実は、1日のうち、約22時間40分は駐車場に車は止まったままで、実際に車を運転する時間は約80分というデータがあります。

ここから、車は所有するのではなく、必要な時に利用できればいい。そのほうが得だという発想が生まれます。これは、シェアリングエコノミーという新しい経済の動きになっています。

環境問題の解決は待ったなしです。人間の豊かな発想力で、社会が変わるといいなと思います。

堤 礼実 キャスター:
海藻は自然の中で循環が行われますし、成長も早く、しかも豊富なため、さまざまな可能性がありそうです。こういった、環境にも人にも優しいものが、もっと広がっていくことを期待したいですね。
(「Live News α」9月20日放送分より)