この夏の記録的な暑さで、富山県内の「生乳」の生産量が大幅に減少、牛乳などの供給が不足する異例の事態となっている。

乳牛28頭が死亡 生乳不足が深刻化

富山県乳業協会・長谷寛会長(乳業メーカー代表):
毎年9月にこうかというと、そうでもない。(生乳が)入ってこないことにはどうしようもない。出荷制限で対応するしかない

生活に欠かせない牛乳や乳製品。富山県内では8月末ごろから、その原材料である生乳が不足する事態となっている。その原因は、猛暑だ。

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8月、35度を超える連日の猛暑日に高岡市の牛舎の牛たちは必死に暑さに耐えていた。本来、乳牛が過ごしやすい気温は25度から27度以下。

県によると、この夏、熱中症などが原因で8月末までに県内で飼育されている乳牛28頭が死んだという。その数、2022年の2倍から3倍だ。

この牛舎でも乳量の低下が著しく、春先なら1頭につき40リットルの生乳が搾れるところ、30リットル以下と3割も減ったという。

ほかの食品と違って傷みやすい生乳は、国の制度などによって明確な流通ルートが決められている。富山の場合、県内の酪農家から集めた生乳は、北陸地域の指定生乳生産者団体である「北陸酪連」が取り扱い、乳業メーカーなどに供給する役目を担う。

例年であれば、9月に入り生乳の生産が増える時期だが、北陸酪連の児玉参事は、2023年の状況は大きく異なると話す。

北陸酪農業協同組合連合会・児玉耕司参事:
今回は本当に極端な例といえる。2023年は、お盆を過ぎてもダラダラと猛暑が続き、前年比で生産量が大きく落ちた。コロナ禍で需要がだいぶ落ち込み、生乳不足はなかった。2023年コロナへの付き合い方が変わり、生乳需要が上がってきたところだったが、あまりに生産の落ち込み幅が大きく、完全に足りない

県内の生乳の生産量は、一部の公共牧場などを除き2023年4月には約33トン。猛暑となった7月にはかろうじて30トンを維持していたが、8月に入り、生産量は大きく低下。28トン台となり、最新のまとめでは8月下旬の生産量は27.7トンまで低下した。これは前年の89%だ。

2022年の夏は、生産が安定していたことも数字が大きく下がった要因だが、2023年に入ってはじめて90%を割り込んだ。

供給不足の中始まる「学校給食」

そして、もうひとつの理由が…。

北陸酪農業協同組合連合会・児玉耕司参事:
9月は暑さで生乳が出づらく、かつ学校給食が始まる月

子どもたちの成長にかかせない「学校給食」だ。
食育の観点などから、県産牛乳を優先して供給する必要があるとされている。しかし、生乳が著しく不足している新潟県ではコーヒー牛乳や他県産などに切り替えざるを得ない事態も…。

富山県内では、給食用牛乳の供給を維持するため、北陸酪連から供給を受ける県内メーカー7社のうち、比較的生産規模の大きい数社が、大手スーパーなどに卸す一般小売分で出荷調整をかけているという。

富山県乳業協会・長谷寛会長(乳業メーカー代表):
9月に入ってから(大手スーパーなどに)特売を控えてもらっている。当然特売が無いと消費量は落ちる。生乳がないのに特売しますというわけにいかない。売上は少なくなるが、なんとか現状を乗り切ろうと…

生乳不足で調整追われる

平時でも需給バランスの調整が難しい乳製品。
牛乳は、8月値上げとなっただけに供給量不足も加わり業界は対応に苦慮している。

北陸酪農業協同組合連合会・児玉耕司参事:
(8月の値上げ前に)県産牛乳を買ってほしいという取り組みを7月から頑張っていた。価格改定をしたけど飲み続けてほしいと訴えていたのに、今回の供給量不足となり申し訳ないとしか言いようがない。ご不便をかけているが、冬にかけて(気温が下がると)生産量は増えていくので、その中で選ぶのであれば県産牛乳を手に取ってほしいというのが私たちの願い

酷暑がもたらした、予想外の生乳不足。
9月下旬以降解消に向かう見通しだが、メーカーや酪農家のぎりぎりの調整が続いている。

(富山テレビ)

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