旧統一教会をめぐって新たな局面を迎えている。政府は教団に行った質問権について100項目以上にわたり教団側から回答がなかったとして「過料」を科すことを裁判所に求めているが、これについて教団側は「全面的に争う」姿勢を見せた。経緯と、ジャーナリスト鈴木エイトさんの解説だ。

旧統一教会は100項目以上回答せず

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世界平和統一家庭連合=旧統一教会は8日、急きょ記者会見を開いた。

福本修也弁護士:
過料裁判におきましては却下を求めて全面的に争う所存でございます

教団の弁護士が語気を強めて訴えたのは「過料請求の却下」でだった。

                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                                             

2022年7月、安倍元総理を銃撃して殺害した罪などに問われている山上徹也被告が、母親が入信している教団に恨みを抱いていると供述したことから注目された旧統一教会。

事件をきっかけに、親の多額の献金などに苦しむ多くの2世がいることも明らかになった。文部科学省は2022年11月以降、7回にわたり質問権を行使し教団側に組織運営や献金などについて報告を求めてきた。

しかし、文部科学省によると全体の2割に当たる100項目以上に回答がなかったため、10万円以下の過料を科すことを求める通知を東京地裁に出した。

これに対し教団側は「そもそも質問権の行使自体が違法であり、回答する理由はなかった」と主張した。

福本修也弁護士:
質問権行使の要件には、解散事由があると認められる疑いがなければ行使できません。旧統一教会には刑事事件はございません。本来であれば行使できないのが従前の見解でそうでした

福本弁護士によると、「政府が一方的に解釈を変更して質問権を行使したもので違法であり、それを拒否したからという理由での過料は認められない」としている。

福本修也弁護士:
家庭連合は本来、違法な質問権行使に対して全部回答を拒否することもできたわけであります。しかし、沸騰するマスコミ報道と世論などの諸情勢に鑑み、全部回答拒否という選択を回避し、不法行為に関連する質問を中心にできる限り回答してきました。ところが、そうした努力もむなしく文科省が家庭連合に対して過料の制裁を求める判断に至ったことを、たいへん残念に思っています

また、回答しなかった項目については個人情報や宗教の自由に関わるものや、裁判で係争中の案件、時間が経過して提出できなかったものなどがあったと説明した。

旧統一教会は過料の却下を求めて争う姿勢だ。

一方、文科省は「違法な献金・勧誘行為が繰り返し行われ、損害賠償額は総額15億円を超える」と見ていて、政府関係者によると、10月にも教団への解散命令を請求する方向で検討しているということだ。

教団への「解散命令」10月にも文科省が請求か…

文科省が、旧統一教会に対し、「過料」を科す通知を行ったことを受け、教会が緊急記者会見を行った。「解散命令」が請求される方向ということで、今後どうなるのだろうか。旧統一協会内部の独自取材を続けるジャーナリストの鈴木エイトさんに聞いた。

Q.鈴木さんは、今回の会見をどう見ますか?

ジャーナリスト 鈴木エイトさん:
教団サイドの焦りが見えました。解散請求が近づいてきており、焦りと苛立ちがあると思います。今回の会見で、教団がいろんな目論見を持っていたようですが、今日見た感じでは教団の一方的な主張をテレビ局で放送させたり、“教団に近いライター”に質問させたりしていましたね。あとは、「自分たち教団側が被害者である」みたいなアピールをしたり、そういうものを放送で出したかった。ただ、そのもくろみは崩れていたと思います。

“公益法人”は「質問権」に対し回答・協力する義務がある

教団の焦りが見えたという今回の会見、教団側が話した内容から見ておく。

質問権行使については「教団の組織を利用した事件は一件もない、質問権の行使は違法」としている。この質問権というものですが、これは解散を見据えて行使されるもので、質問権の行使自体が違法だということを主張した。

そして、教団側への質問に100項目以上回答しないことから科される過料について、「回答拒否は正当であって過料は認められない。却下を求め全面的に争う」とした。

Q.「質問権」そのものが違法だという主張の教団、これについてはどうご覧になりますか?

ジャーナリスト 鈴木エイトさん:
質問権に関しては公益法人であれば、回答・協力する義務があるんですね。真実を回答するという…。ところが、そもそも教団は応じていない。この100項目は完全未回答で、残りの項目に関してもかなり不十分な回答があったということで、全く誠実性を見せておらず、過料を科されることは普通の流れだと思います

Q.10万円以下という過料についても全面的に争うということですが、これについてはどうでしょう。

ジャーナリスト 鈴木エイトさん:
ここで過料を認めてしまったら、教団は“これまでの主張”を覆すことになってしまいます。当然、過料にも抵抗すると思います。徹底的に争うということは、この教団内部の信者に向けて、「教団は国からの攻撃に対して、ちゃんと抵抗していますよ」と内部統制の手段にも使っていると思います。

Q.そういう信者へのメッセージもあるのですね、では、今後「解散命令」は出されるのでしょうか。解散命令のポイントをまとめました。まず、解散命令の要件は、不法行為の「組織性」「悪質性」「継続性」となっています。鈴木さんは、このあたりの要件、満たしているとみますか?

ジャーナリスト 鈴木エイトさん:
「組織性」については、全国で同じ手口で被害が出ているところで明らかに組織性が認められますよね。「悪質性」もこれまでの被害実態から、これだけ莫大な、年間何十億円もが韓国に送られています。(信者たちが)収奪されているところから当然、悪質性が見えてきます。「継続性」についても、2009年の教団の「コンプライアンス宣言」以降も被害が続いている訳ですから、完全に解散命令についての”要件”は満たしていると思います

文科省は「解散命令」の請求を出せるところまでたどり着いた

Q.ポイントとなる部分などは?

関西テレビ 神崎博デスク:
やはり「組織性」というところですね。高額の献金を、信者が自らの意思でやっていけば問題ありませんが、これだけ全国的に大規模な問題になっているというお話にもあったように、そういうところが問題ですよね。あとは“勧誘”に関しても、最初から宗教団体名と名乗らずに、ある種、違法に勧誘しているということも全国で同じような事例がありました。それらは個々の信者がやっているのではなくて、宗教団体としての旧統一教会が組織性を持ってやっているというところが、1つのポイントになってくるのではないかと思います

Q.教団側からすると「これは信者が勝手にやっている」みたいな言い逃れをする恐れもあると思いますが、この辺りはどう考えますか。

ジャーナリスト 鈴木エイトさん:
教団が発表した「コンプライアンス宣言」自体がそういうものでした。教団が組織的にやってきた違法勧誘・霊感商法を信者の“個人的な活動”として責任逃れをしてきました。いま文化庁、文科省がいろいろな事例を積み上げて、個々の事例についても積み上げて、もう大量の事例が積み上がってきました。「これは明らかに組織性・継続性がありますよね」ということを、裁判所に提示できるだけの資料を今、揃えているということです

Q.これまで質問権行使が7回もあり、それでも回答していない項目もあったということですが、文科省・文化庁からすると、解散請求が出せるぐらいのものをすでに持っていると見てもいいんでしょうか?

ジャーナリスト 鈴木エイトさん:
はい、持っていますし、そもそも教団が真摯に回答してくると想定していないと思うんです。なので、それと質問権の行使と並行して、全国の被害者にヒアリングをして、全国弁護士連合会と連携しながら、あらゆる資料・情報・データを集めて、ついに最終的に請求が出せる段階までようやく来たということだと思います

「解散命令」でなくなる“税制優遇” それでも信者への献金ノルマは続く

Q.今後、実際に解散命令が出されたらどうなるのか?命令が出されると、宗教法人格を失うことになり、税制優遇がなくなります。しかし、宗教団体としての活動は、続けることができます。解散命令が出されることである程度、活動が制限されることになるのでしょうか?

ジャーナリスト 鈴木エイトさん:
そうでうね、法人名義の建物が持てなくなるといったことはあります。そういう制限はありますが、信仰を目的としている宗教団体なら、別に問題ないはずなんです。 信仰以外のところを目的としているのであれば、例えば献金を集めて観光に来るとかですね、そういうところに影響は出るかもしれません

Q.多額の献金や霊感商法をやり続ける恐れというのもあるのでしょうか?

ジャーナリスト 鈴木エイトさん:
そうですね、一般企業と同じように税金を払った上で献金を集めればいい、と韓国人総会長は言っています。実際にそういう情報もあって、解散命令が出たとしても、その信者に対する過烈な献金ノルマ・献金集め・集奪…こうしたものは変わらないでしょう

旧統一教会、日本国内ではこういった動きになっていますが、韓国ではどんな状況になっているのか、鈴木さんの取材によると…

Q.9月以降、「修練会」名目で日本から韓国へ現金を運ばせる指示が出ている模様ということです。外為法ギリギリの100万円を信者に持参させたりしているそうです。この「修練会」というのは何でしょうか?

ジャーナリスト 鈴木エイトさん:
いわゆる合宿です。ここに参加する名目で、日本からやってくる信者にお金を運ばせようとしているのではないかと。これが9月以降、切れ目なくスケジュールが入っています。外為法違反にならないギリギリのお金を信者に持ってこさせると。しかも必ず現金で持ってくる形になっていて、日本から振込みをできないようにしているんですよね。日本から韓国に持っていき、そこで韓国の宗教団体に収めるお金に関しては「日本の宗教法人は関知していません」と日本の教団は言っています。証拠が残らない形で日本から韓国にお金を移そうとしているんじゃないでしょうか

例えば、宗教法人格を剥奪されたとしても、これは続いていきますか。

ジャーナリスト 鈴木エイトさん:
はい。これチェックもされないことです。送金ルートもいくつもあるんですよね。そういうものは、なかなか網がかけられないのが実態です。ただ解散命令によって、制限がかかるので、まぁ少しは制限になるかな…というところですかね

Q.解散命令が出ると韓国の本部も解散でしょうか?

ジャーナリスト 鈴木エイトさん:これはならないですね。あくまで日本の宗教法人に対する解散命令です。しかも解散というのは、宗教法人でなくなるだけなので、団体自体は日本にも残ります。韓国には何の影響もありません。

Q.ただ、韓国の本部にもダメージはあるのでしょうか?

ジャーナリスト 鈴木エイトさん:
韓国を含む世界中の関連団体、教団施設はすべて日本からの献金、日本から収奪したお金でほぼ成り立ってると言われています。日本からのお金が集めづらくなるような状況、つまり宗教法人でなくなる影響を鑑みると、非常に焦っていると思います。だから韓国から様々な指示が出ます、6月には「岸田首相を呼べ!」という発言もありましたが、やはり苛立ち・焦りはあると思います

「解散命令」が出た時点で教団の資産は海外に移されている恐れが

Q.多額の寄付金について、解散になったら返却はどうなりますか?

ジャーナリスト 鈴木エイトさん:
これは非常に重要なところです。解散命令が通った場合、精算人が選定されます。その時に教団の持っている資産を現金化して賠償します。債権者に対して賠償する段階になった時は当然、被害者も債権者になれますので。ただ、その時に財産が残っていない恐れがあります。海外とか関連団体に資産を移されてしまう可能性が高いんですね。宗教法人法には財産保全の項目がありません、そこが会社法と違います。なので、この宗教法人法に特別措置として財産保全に関する法改正をしてほしいと弁護士団体が訴えています

Q.実際にそういう動きはあるのでしょうか?

ジャーナリスト 鈴木エイトさん:
そういうことを想定して教団も動いているとは思うんですけれども、登記簿などから見える情報を確認している限りまだ大丈夫なので、今後はその辺りを注意して見ていく必要あります

解散命令は出されるのか?そのタイミングはいつなのか?今後も注目したい。

(関西テレビ「newsランナー」9月8日放送)

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