12日、王座戦5番勝負第2局が行われ、藤井七冠が214手の激闘を制した。

“千日手”にしない攻めの一手

12日行われた王座戦5番勝負第2局では、後手の藤井七冠が214手で永瀬王座に勝利し、対戦成績を1勝1敗のタイに戻した。

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戦型は2局連続の角換わりで、藤井七冠は早い段階で「右玉」を採用する新境地を見せ、千日手になりやすい手を指した。

その後、中盤で永瀬王座も「千日手(指し直し)でもいいですよ」という一手を指した。ところが、藤井七冠は「千日手にはしない!決戦にしましょう」というような戦い方を見せた。

千日手になりやすい右玉を採用した藤井七冠が、決着をつけようと攻めた格好になった。

その後難しい局面が続き、終盤は互いに持ち時間を使い果たして「1分将棋」になった。

その中で永瀬王座が優勢になったが、致命的なミスをしてしまい、藤井七冠が優勢に対局を進めていった。ただ、その後も長時間に渡る激闘が続いた。

藤井七冠は対局後のインタビューで、このように語っている。

藤井七冠:
全体を通して苦しい局面の方が多かったかなと感じています。寄せにいく手順がわからなくて、点数でという感じに方針を切り替えたんですけど。

“点数勝負”に切り替え

藤井七冠が語っている「点数」ということが話題になっている。点数というのは、何のことだろうか。

将棋は、お互いに「入玉」という状態になると、その後、点数によって勝敗が決まるというルールがある。この「入玉」とは、相手の陣地に玉が入ることだ。

元女流棋士の竹俣紅アナウンサー
元女流棋士の竹俣紅アナウンサー

将棋では、玉が相手の陣地である上に行けば行くほど、捕まりにくくなる。

上に行くことで、相手は全方位から攻める必要がある。さらに相手の陣地に入りこめれば、成った駒で自分の王を守ることができる。

自分と相手の双方が入玉した状態である「相入玉」になった場合は、勝敗の決着をつけること自体が困難になる。

そこで、点数計算によって勝敗を決めるルールが適応される。

12日の対局では、藤井七冠が永瀬王座の攻めから逃げる中で、入玉した。それに対し、永瀬王座も「このままでは負けてしまう」ということで、最後の望みをかけて入玉を目指した。

点数は、玉将を0点、飛車と角が5点、その他の駒を1点で計算する。

全ての駒の合計が、両者ともに合計24点以上の際は「引き分け、指し直し」になり、片方が24点に満たない場合は、その人が「負け」になる。

このルールがあるため、永瀬王座はそのまま対局すると負けてしまうので、引き分けによる指し直しを最後の望みとして目指した。

“宣言法”の点数も考慮し対局

ただし、相入玉での勝敗をつけるルール方法には「宣言法」という他のルールもある。

「宣言します!」という形だが、自分の持ち駒と敵陣に入っている駒の合計点を見るものだ。

宣言したが人が31点以上だった場合「勝ち」で、宣言した人が24点以上30点以下だった場合は「引き分け、指し直し」となる。

1分将棋ということもあって、藤井七冠は寄せに行く手順がわからなかったので、点数勝負で勝とうと切り替えた。

寄せに行く手順というのは、玉を追い詰める手順のことだ。そのため、31点以上を取ることも考えながら対局をしていたということになる。

ただ、結果的には点数勝負にはならず、永瀬王座を詰ませて、藤井七冠の勝利となった。

対局開始から約13時間、214手での勝利は、藤井七冠にとってタイトル戦での最長手数の激闘だった。また、タイトル戦の「連敗をしない」という不敗神話を守った形だ。

勝った方が王座のタイトルに王手をかける注目の第3局は、27日に愛知県名古屋市の名古屋マリオットアソシアホテルで開催される。
(「イット!」 9月13日放送より)