大手化粧品メーカー「ポーラ」がANAホールディングスと共同で、宇宙で使える化粧品「COSMOLOGY(コスモロジー)」を開発した。

化粧品(顔用)として日本で初めてJAXA(宇宙航空研究開発機構)に採用され、2024年頃に予定されている油井亀美也宇宙飛行士のISS(国際宇宙ステーション)の長期滞在において、実際に搭載される予定だ。

今回、開発されたのが、洗顔料(クレンジング)と保湿剤(クリーム)だ。洗顔料は、宇宙で貴重な水を使わないふき取りタイプ、保湿剤は半固形のジェルクリームが肌に伸ばすと液状に変化する。

コスモロジー スペースクルーキット(画像提供:ポーラ)
コスモロジー スペースクルーキット(画像提供:ポーラ)
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どちらもISSでは使用制限のある貴重な水をみずみずしく感じられる設計や、重力が小さいところで飛散しないような設計になっている。10月1日には一般向けに発売され、洗顔料(60g)と保湿剤(30g)のセットで、値段は7480円(税込)だ。

「COSMOLOGY」について、ポーラの及川美紀社長は「思うように水が使えない場所でも、こういうものを使うことで肌を健やかに清潔に保つこともできる」とコメントしている。

宇宙向けとして日本で初めてJAXAに採用されたということだが、開発するにあたりどんな苦労があったのか? 一般発売もされるとのことだが、地上で使ってもメリットを感じられるのだろうか?

ポーラの開発担当者に詳しく話を聞いてみた。

宇宙は乾燥しやすい状態

――宇宙でも使える化粧品を開発したきっかけは?

ポーラは2029年に創業100周年を迎えますが、創業以来、そして未来に向かっても目指しているのは、常に人々のQOL(クオリティ・オブ・ライフ)を高め続けることです。

今、私たちは大きく変化する環境やライフスタイルの変化等により将来の予測も不確定な時代を生きています。その中で、まだ見ぬ無限の可能性を秘める宇宙に視点を置き、宇宙の過酷な環境でもQOLを高められれば、地球の未来を豊かにするヒントにつながるのではと考えたことが開発のきっかけです。


――宇宙空間は地上より肌のダメージは大きいの?

ISSの湿度は砂漠と同程度と言われており、今回私たちが開発にあたり宇宙飛行士の方にヒアリングした際も、「ISS 内で、乾燥トラブルを経験している」 という声があったことから宇宙は乾燥しやすい状態であると考えます。

コスモロジー クレンジングウォッシュ(画像提供:ポーラ)
コスモロジー クレンジングウォッシュ(画像提供:ポーラ)

――宇宙飛行士から、宇宙でも美しくいたいという要望はあった?

開発にあたり山崎直子さんにお話をうかがった際、「もちろんゆっくりスキンケアやメークをする時間はないものの、ちょっと口紅を塗るだけでも気分が明るくなるもの。人のためではなく、自分の気分を上げるために行っていた」というお話をお聞きしました。

過酷な環境だからこそ、自分自身をケアし、心地よさを感じる時間に非常に意味があると感じたエピソードです。


――化粧品の特徴は?

宇宙品質を満たす機能性と、感触や香りといった気分まで豊かにうるおうような感性品質を両立していることが特徴です。過酷な環境下の宇宙であっても、2ステップの簡潔・凝縮ケアでスピーディに、かつ心豊かにケアすることができます。
※宇宙品質…国際宇宙ステーション(ISS)に搭載可能であること。

気分まで豊かにうるおう品質

――この化粧品は女性用なの?

男女問わずお使いいただけます。


――この化粧品は地上で使っても良いの?

もちろんご使用いただけます。

コスモロジー ローションクリーム(画像提供:ポーラ)
コスモロジー ローションクリーム(画像提供:ポーラ)

――地上で使うとどんな良い点がある?

宇宙は身体的にも精神的にもストレスの多い環境ですが、地上で生きるわたしたちの生活においてもそれは同様であると考えています。

過酷な宇宙環境でもスピーディに簡潔・凝縮ケアができ、気分まで豊かにうるおうこの商品は多忙な私たちの日常生活においても、価値を発揮する商品です。


――次はどんな商品の開発を計画している?

詳しくはお話ができないのですが、今後も宇宙に関わる産業全体の発展と歩みを共にしながら、宇宙を起点とした新たなアイテムを展開していきたいと思っております。



宇宙で使える化粧品「COSMOLOGY」は2024年ごろにISSに搭載される予定だ。その際は、宇宙飛行士のストレス軽減に是非とも役立ってほしい。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。