国の調査で、全国で夏休み明けとなる9月1日は「子どもの自殺が1年で最も多くなる日」とされている。「つらい」と感じた時、どのように周囲にSOSを出せばいいのか。家族はSOSをどのように受け止めれば良いのか。専門家に聞いた。

ストレスは「心の疲れ」ととらえて

2023年7月、山形・長井市の中学校で「心の健康」をテーマに特別授業が行われた。この授業は子どもの自殺対策として、県が県立保健医療大学と連携して2023年度から始めたもので、「心の負担を感じた時にどうすれば良いのか」を専門家が生徒たちにアドバイスした。

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県立保健医療大学・安保寛明教授:
自分にとって負担になる状況がある人も、もしかしたらこの中にいるかもしれない。相談窓口に相談したり、場合によっては「負担だ」と言ってもいい

特別授業の講師を務める安保寛明教授は、まず「心の負担」、つまり「ストレス」を感じたら、「心が疲れた」ととらえてみてほしいと話す。

県立保健医療大学・安保寛明教授:
ストレスを嫌なことととらえると、ずっと嫌なことがありすぎて、嫌なのか嫌じゃないのかわからなくなる。子どもは我慢してしまう。嫌なことではなくて考えすぎて疲れるとか「頭が疲れる」というニュアンスを伝える

エネルギーがなくなると自力で元に戻れない

例え話として安保教授が取り出したのは「紙風船」。風船のふくらみを「エネルギー」に、そしてへこみを「ストレス」に見立てる。

紙風船をポンポン手でつき弾ませてみせた安保教授。子どもたちの心が普通の状態であれば、多少のストレスを受けて紙風船がへこんだとしても、元のまんまるの状態に戻ると話す。

県立保健医療大学・安保寛明教授:
寝て、ご飯を食べて、本を読んだり、運動したり、暮らしのリズムがあれば、人の脳と心は回復してきょうも頑張ろうとなる

ぺしゃんこになってしまった紙風船は弾まない
ぺしゃんこになってしまった紙風船は弾まない

しかし、ぺしゃんこになってしまった紙風船は、ストレスを多く抱えすぎて「エネルギー」がほとんどなくなった状態だ。こうなると、子どもたちはなかなか、自分の力だけでは元に戻ることができなくなる。

県立保健医療大学・安保寛明教授:
弾まなくなると暮らしの力で回復するのは難しくなる。誰かに息を吹き込んでもらえば、また弾むようになる

心がぺしゃんこの状態になったら、自分ではどうしようもないと判断して、誰かに助けを求めなければいけない。では、子どもはどのように周囲に「SOS」を出せば良いのか。

「疲れ」に言い換えてSOSを出す

県立保健医療大学・安保寛明教授:
「私、心が疲れている感じなんだ。話を聞いてほしい」という言い方をする

「ストレス」や「嫌なこと」ではなく「疲れ」に言い換えて「SOS」を出すことで、周りの大人もしっかりと耳を傾けてくれるようになるという。

県立保健医療大学 安保寛明教授:
最近イライラすると言ったら、「自分で解決しろ」と大人は自分の考えを言ってしまう可能性がある。でも大人も疲れたら休まないと…と思う。それは休まなきゃ、と思いやすくなる

そして、もう1つ重要なのは周りの人の「SOSの受け止め方」、特に「声のかけ方」だ。

一緒に受け止め助けてくれる人を探す

県立保健医療大学・安保寛明教授:
例えば「最近どれくらい明るい気持ちでいられている?」とか「最近ぐっすり眠れている?」など、プラスの言葉で聞いてほしい。「疲れてるんじゃないの?」と親がマイナスの言葉で聞いてまうと、子どもも「自分は疲れていると思われている」と思って、かえって強がってしまうことがある

「死にたい」など、死を具体的に意識するほど子どもが追いつめられている場合は、悩みの理由に寄り添うことが大切だ。

県立保健医療大学・安保寛明教授:
はっきり「死にたい」と言った場合には「よかったら、そう思うようになったきっかけがあるなら教えて」というように。「あんたが死んだらみんなが困るでしょ」と説教すると子どもも、大人でも何も言えなくなってしまう

悩みの理由はさまざまで、相談に乗れないこともある。すぐにアドバイスをするのではなく、まずは一緒になって悩みを受け止めること。そして、保護者や先生、相談窓口など「頼りになる人」を見つけることが重要だ。

県立保健医療大学・安保寛明教授:
さっきのつぶれた紙風船のイメージになる。一人では無理だとはっきり言う。どうしようかというと本人が「自分が頑張る」と言ってしまうので、誰に助けてもらおうかとはっきり伝えて、自分たちにとってプラスになる人を探す

県は、9月1日から自殺対策推進月間として、県内各地で啓発活動を行っている。また、電話やインターネット・LINEの相談窓口もある。「心の疲れ」を感じるという人は利用してほしい。

相談窓口
「こころの健康相談 統一ダイヤル」
0570-064-556(月~金 9時~12時/13時~17時)

(さくらんぼテレビ)

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