「日本の夏の風物詩」のラムネが、いま絶滅の危機にさらされている。昔懐かしい文化を次の世代に残そうという取り組みを取材した。

自分好みのラムネ作りに子ども歓喜!

厳しい残暑が続く8月最後の土曜日。福岡市民憩いの場、大濠公園の一角にはラムネが所狭しと並んでいた。

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昔懐かしいラムネは、暑い季節に飲む定番として親しまれてきた。

この日、開かれていたのは、ラムネの魅力を体験できるイベント。タイトルは、その名も「ラムネの涙2023」。年々、姿を消しつつあるラムネの魅力を子どもたちに伝えようと九州産業大学が始めたイベントだ。

ラムネを1本買えば、好きな味のシロップに炭酸水を混ぜて、自分好みのラムネを何本でも作ることが出来る。その上、飲み放題だ。

自分で作ったラムネは、瓶をひっくり返すことで炭酸の圧力がかかり、蓋をしていたビー玉を元に戻すことができる。担当者がこのラムネの仕組みをイベントに訪れた女の子に伝えると…

女の子:
せーの!5、4、3、2、1、0
担当者:
瓶を元に戻すとービー玉がはまってるの
女の子:
わー、ホント!すごい!
担当者:
これで何回でも飲めるよ

ラムネ特有の「プシュ!」という音も何度も楽しむことができ、女の子は自分で作ったラムネに満足げだった。飲み干した空き瓶をカラカラと鳴らしていた。

しかし、ラムネを飲む体験について子どもたちに話を聞くと―。

男の子:
お菓子のラムネしか食べたことない。(瓶があるの)知らなかった

残念ながら、いまの子どもたちは「飲み物」としてのラムネを知らなかった。

“夏だけ”は商売困難…瓶も高騰

九州産業大学 伊藤敬生・教授:
ラムネは、夏だけの飲み物としては商売としては厳しいという状況もある。燃料の問題などで、ガラス瓶が高騰していてコストの面でも非常に厳しい。(現在)瓶メーカーが日本に2社しかない

新型コロナの影響で、お祭りなどのイベントが減ったことに加え、瓶を作る材料や燃料の高騰によりラムネを作る会社は大幅に減少。1950年代のピーク時の2300社から、2019年時点で僅か37社にまで減少してしまっている。

小松飲料 小松三郎・社長:
子どもたちがラムネを飲む機会が、どんどん少なくなってきているなという印象

魅力発信へ!ラムネは「日本の文化」

年々、ラムネ離れが加速するなか、生産者は新たな商品でラムネの魅力を発信しようと試行錯誤している。

川の上空を多くのこいのぼりが泳ぐことで有名な熊本県の杖立温泉では、ラムネがユニークな土産商品になっている。

まるはら 川崎弘さん:
ラムネの見た目が「こいのぼりっぽいよね」ということで、2年前から「こいのぼりラムネ」として杖立温泉の新しいお土産として販売してます

「こいのぼりラムネ」を手にする川崎さん
「こいのぼりラムネ」を手にする川崎さん

九州産業大学の伊藤教授は「こうしたイベントや新商品を出すことでラムネを絶やすことなく、その魅力を伝え続けていきたい」と話す。

九州産業大学 伊藤敬生・教授:
ラムネは「日本の文化」だと思っているので、それを一度、深めた上でラムネを飲んで頂くとすごくいい味がするし…

絶滅の危機にさらされているラムネ。次の世代に残すための取り組みが続いている。

(テレビ西日本)

テレビ西日本
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