日本で初めて客用として運用が始まったエレベーターが神戸にある。98年前から現役で活躍中だということで、一体どんなものなのか取材した。
■【動画】日本最古のエレベーターが神戸のビルに 日本で初めて客用の運用を開始 ハンドル回して昇降するレトロ感がたまらない
大正時代から活躍 日本最古のエレベーターが神戸に
年月を感じさせる蛇腹式のドア。動き出すとモーターや滑車のどこか懐かしい音が響く。一般のお客さんを乗せるものとして、日本で最初に運用が始まったといわれるエレベーターだ。このエレベーターが設置されている「松尾ビル」があるのは、阪神・神戸高速線の西元町駅の近くだ。なぜここに古いエレベーターがあるのかというと…。

実はこのビル、できたときは百貨店だった。今から98年前の大正14年に「小橋屋呉服店」という百貨店としてオープン。この建物には当時の最先端技術だったエレベーターが設置された。
大正時代の百貨店建築を伝える貴重な建物として、2014年には国の登録有形文化財(建造物)にもなっている。

エレベーターをよく見てみると…蛇腹の扉に到達した階を針で指し示す表示板があり、エレベーター内部の壁にも装飾が施されている。

エレベーターを利用したい人がブザーを鳴らすと、1階の事務所から男性が現れ、エレベーターに乗り込んだ。実はこのエレベーター、ハンドルを回して操る“手動式”なのだ。
「松尾ビル」管理人・松尾隆博さん:
エレベーターの底辺と降り場をピタッと合わすのが難しい。(初めは)行き過ぎて降りる人がつまずいたりすることがあった。

入居者に愛されて98年 4つの時代を経て今も現役でお客さん乗せる
このビルに事務所を構える建築士の竹内さん。雰囲気が好きですでに15年入居している。
建築士・竹内明子さん:
入ったときに昔に返れるというか、大正時代に戻れるというか、そういうところがいいな。

地上5階建ての松尾ビルだが、今もすべて事務所や靴の工房、雑貨店などで埋まり満室だ。
建築士・竹内明子さん:
本当好きで入ってこられた、好きで好きでっていう方がすごく多い。ビルの高さが良いとか、音が反響しているのがいいとか。エレベーターも開いたまま動くから景色がどんどん変わってきて、途中で誰か通ったらあいさつもできるし、向こうの声が聞こえたりとかするし、すごく面白い。これまでいろんな人がこのビルにいて、歴史の中のわたしもその一人。ずっといたいなと思います。

実はこのビル、今だけのもう一つ素敵なポイントが。隣のホテルが建て替えで更地になり、これまでは隠れていた建物の外観が、今は見られる状態になっているのだ。
建築士・竹内明子さん:
毎日楽しみで、きょう(隣のビルが)ここまで下がった、ここまで下がったって。見ることができるのは、この機会を置いてはないかな。できるだけいろんな方に見てもらって、こういうビルがあると知っていただきたい。

大正、昭和、平成、そして令和と、4つの時代でお客さんを運び続けているエレベーター。訪ねてみると、そこには歴史を感じながら、今の雰囲気を愛する人たちの息づかいがあった。
(2023年8月24日 関西テレビ「newsランナー」放送より)