旅行や帰省など、地方の旅先で食べられる名物料理、初めて出会う食材や料理、地元で親しまれている少し不思議な食べ合わせなど、その土地ならではの“ご当地グルメ”も旅の醍醐味のひとつだ。

特定のカルチャーをより深く味わう「沼から来た。」。

今回「ご当地グルメ」の沼にハマった専門家が、その底知れない魅力をたっぷり紹介する。

あなたも“ご当地グルメ沼”にハマってみませんか。

200種類以上の地元の味を知るマニアが登場

おすすめを紹介する“ご当地グルメ沼の住人”は、食文化研究家で、B-1グランプリ主催団体の会長の野瀬泰申さん。

47都道府県を回るご当地グルメ取材が、すでに4周目に突入したという。

食文化研究家・愛Bリーグ会長 野瀬泰申さん
食文化研究家・愛Bリーグ会長 野瀬泰申さん
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“ご当地グルメ”と名のつくものはたくさんある。

しかし、野瀬さんは「安くて長年地域で愛され続けるグルメ」のことを、“ご当地グルメ”の定義としているという。

全国のご当地グルメ
全国のご当地グルメ

全国、津々浦々、あまり知られていないグルメもある。

まずは北海道・根室市のご当地グルメから教えてくれた。

おすすめ<1>「ボリューム満点トンカツ」

北海道は魚介のイメージが強い。

しかし、根室市のご当地グルメ「エスカロップ」は、お肉がメイン。

北海道・根室市「エスカロップ」
北海道・根室市「エスカロップ」

「エスカロップ」とは、タケノコ入りのバターライスなどにトンカツをのせ、上からデミグラスソースをかけた洋食。

60年近くの歴史があり、根室のレストランをかねた喫茶店が発祥とされているという。

創作和食 根室ふうれん(東京・人形町)「知床豚のエスカロップ」ランチ1000円
創作和食 根室ふうれん(東京・人形町)「知床豚のエスカロップ」ランチ1000円

「エスカロップ」という名前は諸説あるが、フランス語などで「肉の薄切り」のことを「エスカロープ」ということからついたといわれている。

根室市は外国人が出入りする漁師町で、洋食文化がベース。

市内の喫茶店が漁師から「いつも魚ばっかり食べているから、ボリュームがある肉が食べたい」と要望を受け、全部を一皿にまとめた「エスカロップ」が生まれたのでは、ともいわれている。

続いては、意外な誕生秘話の“ご当地グルメ”。

おすすめ<2>「ふわっふわの玉子焼き」

兵庫・明石市のご当地グルメ「明石焼き(玉子焼き)」。

だが、野瀬さんは「『明石焼き』とみなさん言いますが、地元では『玉子焼き』と言います。明石では“たこ焼き”をソースではなく、だしにつけて食べていると思われがちですが、実は全くの別物なんです」と話す。

兵庫・明石市「明石焼き(玉子焼き)」
兵庫・明石市「明石焼き(玉子焼き)」

野瀬さんいわく「玉子焼き」は卵がメインで基本、卵の黄身とタコ。

一方「たこ焼き」は小麦粉とタコなので「玉子焼き」と「たこ焼き」は全くの別物なのだそう。

そして驚くことに、この「玉子焼き」が誕生当初は“だし汁”ではなく、水につけて食べていたというのだ。

野瀬さんは「熱くて冷ますために水につけて食べたのが始まりだそうですが、水だと味気ないということで“だし汁”に進化したようです」と語った。

続いては、ユニークな歴史がある“ご当地グルメ”。

おすすめ<3>「アレンジ自由自在!万能調味料」

大分・佐伯市のご当地グルメ「ごまだし」。

焼いた魚をほぐしたものに、すりつぶしたゴマ、醤油やみりんなどと合わせて作る万能調味料だ。

大分・佐伯市 漁村女性グループめばる「ごまだし(アジ)」希望小売価格1188円
大分・佐伯市 漁村女性グループめばる「ごまだし(アジ)」希望小売価格1188円

佐伯市は水産物が豊富で、この「ごまだし」は、市場に出回らない小さい魚や調理が難しい魚の活用法として、家庭料理から生まれたとされている。

魚の「エソ」を使って作った“ごまだし”が元祖だが、「アジのごまだし」や「タイのごまだし」など今は、いろいろな種類が作られている。

「入れるだけで“だし”にも“調味料”にもなるすぐれもの。ゆでたうどんに『ごまだし』をのせて食べるのは、地元では定番で人気です。うどんのほかにも、焼きおにぎりや冷ややっこにもおすすめです」(食文化研究家・愛Bリーグ会長 野瀬泰申さん)

このような万能に料理に使える“ご当地グルメ”はほかにもあった。

おすすめ<4>「江戸時代に誕生した発酵食品」

福井・若狭地方のご当地グルメ「へしこ」。

サバを塩と米ぬかに漬け込んだ江戸時代からある発酵食品だ。

福井・小浜市「朽木屋」鯖へしこ 1匹 2268円
福井・小浜市「朽木屋」鯖へしこ 1匹 2268円

生で食べることができ、料理の味付けでも活躍する。

特に、暑い今の時期は、冷たいお茶漬けで食べるのがおすすめだという。

おすすめの食べ方を野瀬さんは「まず、“ぬか”をとり、薄く切ってフライパンで少し温めるとやわらかくなっておいしいです。とった“ぬか”は捨てずに、フライパンで炒るとサバのだしたっぷりのおいしいふりかけになり、無駄がありません」と教えてくれた。

メイン料理から万能だしまで様々ある“ご当地グルメ”。しかし、実はご飯だけではない。

最後は、驚きの“ご当地スイーツ”も紹介する。

マニアオススメ“ご当地スイーツ”「意外すぎる組み合わせ」

山形・山辺町のご当地グルメ「すだまり氷」。

山形・山辺町「すだまり氷」 ※画像:山辺町観光協会
山形・山辺町「すだまり氷」 ※画像:山辺町観光協会

ただのかき氷ではなく、イチゴなどのシロップがかかっているかき氷に「酢じょうゆ」をかけたものなのだ。

なぜ、こんな意外な組み合わせが誕生したのか。

昔、かき氷の出店にきた子どもたちが、氷代しかなくシロップが買えない時にお店の人が「ところてんの酢じょうゆならタダでかけていい」とサービスしたことから、このメニューが生まれたという。

野瀬さんは「美味しいの!?と思ってしまう組み合わせですが、後味がサッパリし、意外とクセになる味です」と話した。

マニアオススメ“ご当地スイーツ”「ビスケットの天ぷら」

驚きの組み合わせ“ご当地スイーツ”でも、野瀬さんのイチオシが、岩手・西和賀町の「ビスケット天ぷら」だ。

岩手・西和賀町「ビスケット天ぷら」
岩手・西和賀町「ビスケット天ぷら」

市販の「かーさんケット」というシンプルなビスケットに、もち米粉入りの天ぷら粉で揚げて作る、西和賀町で人気の家庭のおやつ。

食糧難でビスケットが希少だった時代、ビスケットを大事に食べていたら湿気てしまった。

そこで衣を付けて揚げればボリュームがアップし、湿気ているのも気にならないという知恵から生まれたご当地おやつなのだという。

西和賀産業公社「ビスケット天ぷら 手づくりセット 500円(送料別)
西和賀産業公社「ビスケット天ぷら 手づくりセット 500円(送料別)

野瀬さんいわく、アイスクリームをのせたり、衣にチョコを入れるなどアレンジは自由自在。

「ビスケット天ぷら」を家で再現できる「手づくりセット」も販売されているため、興味がある方は手作りしてみては。

まだまだ底が知れない“ご当地グルメ沼”。今後もどんな新しいご当地グルメが出てくるのか、目が離せない。

(ノンストップ!『沼から来た。』より 2023年8月23日放送)