エンゼルスの大谷翔平選手が右肘の靱帯を損傷し、ピッチャーとしては今シーズン登板しないことが発表された。

右肘の内側側副靭帯の損傷とはどのような状態なのか。

「トミー・ジョン手術」という修復手術の権威である、慶友整形外科病院スポーツ医学センター長の古島弘三医師に聞いた。

「トミー・ジョン手術」なら来季も厳しい

ーー内側側副靭帯の損傷とはどのような症状?

ピッチャーに起きるもので、肘の内側の小指側が投げた時に痛くなる症状です。

投球動作の中で、右手を上げた状態からボールをリリースするまでの間に、肘の内側に負担がかかり、その内側が痛くなって投げられなくなってしまいます。

慶友整形外科病院スポーツ医学センター長・古島弘三医師
慶友整形外科病院スポーツ医学センター長・古島弘三医師
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大谷選手の場合、セットポジションから左足を上げて、左足が着地する時に右手は頭の後ろに来ています。

その位置からボールを投げてリリースするまでの間に肘の内側に一番負担がかかります。

途中降板する大谷選手(時事通信提供)
途中降板する大谷選手(時事通信提供)

ーー痛みがなければ来シーズンは大丈夫?

MRI画像を見ないとどこまで損傷しているのかがわからないので、何とも言えません。

もし、もう一度「トミー・ジョン手術」が必要となったら、来シーズンも厳しいという話になってきます。

保存治療か手術治療か

大谷選手が損傷した肘の靭帯は、肘関節の内側に位置していて、骨と骨を結びつけ、関節の動きを安定させ、外側にそる動きを制限する役目がある。

筋肉の疲労がたまると損傷しやすくなり、損傷すると患部の痛みや関節が不安定になるとされている。

(イメージ)
(イメージ)

ーー痛みの程度によるところが大きい?

今回休むことによって回復するのであれば来年は大丈夫だと思いますが、痛みがなかなか抜けないとか、投げられない状態が続くと、シーズンオフをどうするかが気になるところです。

手術になってしまえば来シーズンは厳しいです。

まずは、大谷選手がどういった状態で降板したのか。
違和感があってこのまま投げたらまずいと思って降りたのか、それとも痛みが走って降りたのかによっても違いが出てくると思います。

(時事通信提供)
(時事通信提供)

ーー打つだけなら大丈夫?

痛みがないのであれば、打つことは可能です。
ただ、違和感があってMRI画像で炎症や損傷した所見が確認されれば、肘は一旦、局所安静が望ましいです。

痛くないから続けるとなれば、治りは悪くなります。

(時事通信提供)
(時事通信提供)

ーー先生としては打者を続けることも勧めない?

状況がわからないので、まず痛いのか、痛くないのか。
炎症程度なのか、それとも、筋肉の付着が“少し断裂”や“損傷しているか”でかなり変わってきます。

靱帯が切れているとなった場合は手術が必要になるし、筋肉の付着部が切れていればそれも重症な所見になるので、保存治療で治るのか、手術治療が必要なのか検討が必要です。

局所を押した時の痛み「圧痛」があるかどうかを確認して判断することになります。

疲労が蓄積した可能性

2018年にも右肘の靭帯を損傷し、シーズン終了後の10月に「トミー・ジョン手術」を受けている大谷選手。

翌シーズンはバッターに専念し、投手として復帰を果たしたのは2020年7月下旬、693日を要した。

ーー2度目の手術となった場合は?

難易度は上がりますが、2度目の手術は可能です。

復帰までに要する時間は、1度目と変わらず1年はかかると思われます。

(時事通信提供)
(時事通信提供)

ーー原因と対策は?

腕が疲労すると、肘の外側に反る動き「外反ストレス」を支える力がなくなり、靭帯そのものに全ての負担がかかってしまいます。
こうした疲労状態で投げ続けると、靭帯が切れたり、炎症を起こしやすくなります。

しっかりと疲労を取って、登板していくことが大事だったと思いますが、試合に出続けないといけないとか、記録がかかっているとか、期待が大きいとなかなか休めない状況だったのかなとも思います。

後半戦になって疲労が蓄積した結果、こういうことになったと考えられます。