夏休みも残りあとわずか。
新型コロナウイルスによる規制が緩和された今年の夏は、景色を見ながらのんびり旅を楽しめる「観光列車」の旅を楽しんだ方もいるだろう。
想像よりも“ナナメ上”に変化を遂げたものに注目する「ナナメ上調査団」では今回、そんな「観光列車」に注目。
「おなかがいっぱいになりすぎちゃう列車」「絶景・絶叫列車」「全力のお見送り列車」まで、一度は乗ってみたい!けれど、ナナメ上なこだわりがある「観光列車」を取材した。
まずは、まさに贅の極みの観光列車から。
最高級の観光列車
JR東日本の豪華寝台列車「TRAIN SUITE 四季島(トランスイートしきしま)」の車内は、まるで高級ホテルのような空間だ。

中でも最高級クラスの「四季島スイート」はメゾネットタイプ。
1階はベッドルーム、見晴らしのいい2階は和室という、ゆったりとした空間に、ひのき風呂まである。

湯船に浸かりながら移動なんて、まさに贅の極みだ。
気になる値段は、例えば、上野を出発して北海道・函館などを巡り、青森の観光地や、宮城の鳴子温泉に立ち寄る3泊4日のプランは、1人100万円。
値段も豪華な観光列車となっている。
そして観光列車といえば、食事も楽しみのひとつだ。
池袋・西武秩父駅間などを運行する「西武 旅するレストラン 52席の至福」はその名の通り、定員52人に至福の料理が用意されている。

至福の旅へといざなうのは“感動のイタリアン”とも称される「La Brianza(ラ ブリアンツァ)」のオーナーシェフ・奥野義幸さんが監修するイタリアンなど、有名店のシェフが季節替わりで監修した、極上のコース料理を楽しむことができる。

そんなゴージャスな旅の思い出を提供してくれる観光列車だが、中にはこだわりが一癖も二癖もある列車もあった。
おなかいっぱいになりすぎちゃう観光列車
北海道・函館を出発し、往復4時間、道南地区を旅する「ながまれ海峡号」。
天気が良ければ津軽海峡や函館山の景色を車窓から楽しむことができるという。

「本当においしいものをたくさん食べてもらって、地域の魅力を知ってほしい」というこの観光列車で、まず出てきたのは函館の有名スイーツ店のオリジナル焼き菓子だ。

世界文化遺産に登録された函館の縄文遺跡をイメージした、プティ・メルヴィーユのバター風味のクッキー「かっクッキー」。
調査員は「やさしいバターの甘みでしっとりとしていて、おいしいです」と堪能した。
次の駅では、今では珍しいホームでの立ち売り販売も行われていた。
切符に付いている500円分のクーポン券を使い、調査員は北海道産のホッキ貝をたっぷり使ったシューマイと、地元のパン屋さんのガーリックラスクを購入。

「貝のうま味が凝縮されていておいしいです」と調査員は観光列車の旅を楽しんだ。
そうこうしているうちに折り返しの木古内駅に到着する。
外に出て少し休憩して車内に戻ると、ナポリタンとカボチャの冷製スープが座席のテーブルに置かれていた。

調査員は「けっこうここまで食べているんですけど…」と戸惑い、同じように続々と登場する食べ物に他のお客さんも「何食出るんだろう…」と驚いていた。
しかし、それはまだまだ終わらず、次の駅の茂辺地駅では、ホームでバーベキューを開催。

ホタテ、ホッキ貝、アオツブなど、地元産の貝を焼いた「いさりび焼き」が振る舞われ、満腹になるが、その後もフルーツやおにぎりセット、大福とエンドレスにおもてなしが続く。
その数なんと、4時間で12品。

「多分、自分がお客様として食べてもきっとおなかいっぱいだろうなというのは、見ていて十分わかりますね」(道南いさりび鉄道・春井満広さん)

北海道、道南の魅力が文字通りたっぷりと味わえるフルコース。
こんなにおなかが満たされてしまう「ながまれ海峡号」は、1人1万2900円から楽しむことができる。
続いては景色にまつわるナナメな観光列車が登場。
絶景・絶叫観光列車
観光列車といえば、車窓からの眺めも魅力。
宮崎・高千穂を走る「グランドスーパーカート」は、息をのむ大絶景が楽しめる列車のひとつだ。

廃線跡を使用した観光鉄道で、オープンタイプの車両に乗って、のんびり30分の鉄道旅を満喫することができる。
この旅の最大のウリは、高千穂鉄橋からの大絶景だ。

その高さなんと105メートルで、鉄橋の上で列車が停止するため、ゆっくりと非日常体験を楽しむことができる。
一方、群馬県桐生市と栃木県日光市を結ぶ「わたらせ渓谷鐵道」では、現在、夏季限定でナナメ上な観光列車を運行している。

渡良瀬川沿いの山あいを走るのどかな路線で、川のせせらぎや鳥の鳴き声を聞きながら、渓谷の四季折々の絶景が楽しめる。
しかし、現在走っているイベント列車は、なんとその景色を楽しめないというのだ。
「最初はみんな反対というか『えー…』という感じで引いてたんですが、『今まで乗ったことのないお客さんが乗ってくれるんじゃないか』ということで実施することになりました」(わたらせ渓谷鐵道社長・品川知一さん)
「みんなに反対された」イベント列車とは、何なのか。
外から車両を見てみると、窓が塞がれ、さらに列車の中は観光列車とは思えないおどろおどろしい空間が広がっている。

そして列車が出発すると、車内から悲鳴が響き渡り、無数のゾンビも出現。
そう、この列車は「ゾンビトレイン」。

襲いかかるゾンビの恐怖体験を味わう観光列車なのだ。
「女性とかお子さんは『キャー!』と最初は怖がっていますが、乗客を怖がらせるだけじゃなくて楽しんでもらうエンターテインメントな列車になっています」(わたらせ渓谷鐵道社長・品川知一さん)

怖がらせるだけでなく、ピエロゾンビがマジックを披露したり、アイドルゾンビが客と一緒に踊ったりと、怖いのが苦手な人でも楽しめるようになっているようだ。
気になる方は体験してみては。
続いては、個性が強すぎる人に出会える観光列車。
現役の海女さん列車
観光列車の旅といえば地域の特性に触れ、素敵な出会いがあるのも魅力のひとつ。
伊勢志摩の海風を感じながら走る、観光列車「つどい」は、現役の海女さんがおもてなしする、その名も「海女さん列車」だ。

車内ではアオサ汁が振る舞われたり、海女さんクイズ大会も開催される。
海女さん文化に触れる貴重な体験をすることができる。

一方、京都の嵯峨嵐山を走る観光列車「嵯峨野トロッコ列車」では“全力のお見送り”を体験できると今、話題だという。
全力のお見送り観光列車

トロッコ列車に乗って保津川沿いの自然や渓谷美をゆったり楽しめると、外国人観光客にも大人気の「嵯峨野トロッコ列車」。
ホームから列車が出発すると、扇子を振り、舞いながら見送る女性駅員さんの姿があった。

「ありがと~!3号車~!」と全力で盛り上げるのがトロッコ嵯峨駅、駅員の池田美穂里さん。
全力のお見送りを始めたきっかけは、上司の「踊ってよ」という、まさかの一言だった。

今では、お客さんの反応がうれしくて、逆に元気をもらっているのだという。
みなさんも楽しいナナメ上な観光列車の旅へ、出発してみては。
(ノンストップ!『ナナメ上調査団』より 2023年8月22日放送)