特定危険指定暴力団「工藤会」の組員が、北九州市の高級クラブに手榴弾を投げ込んだ事件から2023年8月18日で20年となり、当時の従業員が今も消えない恐怖の記憶と暴追への願いを語った。

手榴弾投げ込む“テロリスト行為”

20年前の2003年8月18日、事件は北九州市小倉北区の夜の街で、いつもの賑わいを見せ始めていたクラブ「ぼおるど」で起きた。

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記者リポート(2003年8月18日):
北九州市小倉北区の繁華街の高級クラブに、爆発物のようなものが投げ込まれたようです

元従業員の女性は修羅場と化したあの日の惨状を今でも忘れることが出来ないでいる。

元従業員の女性:
真っ先に思い出すのは、爆発したとき頭蓋骨に響くような「ゴーン!」って音が鳴って…。真っ白な光線。爆風でボーッと周りの景色が変わっていくような…

工藤会組員の男が投げ込んだ手榴弾が店内で破裂し、来店客や従業員合わせて12人が重軽傷を負うという、前代未聞の惨事となった。

組織の威力を背景に、飲食店の「みかじめ料」を始め、民間への不当要求を繰り返していた工藤会。事件は、要求を拒み、暴追運動の先頭に立っていた「ぼおるど」の経営者への手段を選ばない「見せしめ」だったとみられている。

元従業員の女性:
暴力団の枠を遙かに超えている「テロリスト」。撲滅させないと安心して暮らせない。安心して町を歩けない

組織の意に沿わない市民に容赦なく牙をむいた工藤会。北九州市民が下した選択は事件に畏怖することなく街から暴力を一掃することだった。

「半グレ」使い資金調達との情報も

北九州市や県警は「ぼおるど事件」をきっかけに、毎年8月18日を「市民暴排の日」と定め、暴力団追放に一層力を入れるようになった。暴追気運の高まりは工藤会壊滅を目指す福岡県警の「頂上作戦」へと繋がり、市民を狙った4つの襲撃事件で殺人などの罪に問われた組織トップの野村悟被告(76)は、2021年、死刑判決を受け、控訴している。

北九州市・武内和久市長:
今後も手綱を緩めることなく、暴力のない、安全安心な町作りを進め、日本一住みよい町の実現に向けて努力を続けて参ります

福岡県警によると、工藤会の組員数は、準構成員も合わせると、最も多かった2008年には1,350人に上っていた。しかし、以降は徐々に減り、県警が野村総裁を逮捕した2014年の頂上作戦もあって、現在は320人まで減っている。

人数は減ったものの一方で、暴力団に属さない、いわゆる「半グレ」と呼ばれるグループを使って、工藤会が資金集めをしているという情報もあり、その動向がよりつかみにくくなったという実情もあるようだ。

工藤会壊滅の取り組みが、さらに強まる起点となった「ぼおるど事件」。20年の節目を迎えた北九州の市民は暴力団排除への決意を新たにしている。

(テレビ西日本)

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