ソフトバンクグループ傘下のイギリスの半導体設計大手「アーム」が、アメリカのナスダック市場に上場申請した。

この記事の画像(11枚)

ナスダック市場に上場申請したアームは、半導体の回路の設計を手掛け、ソフトバンクグループが2016年に総額約240億ポンド、当時の価格で約3兆3000億円で買収した。

株式の売り出し価格については明らかにしていないものの、上場時の時価総額は600億ドル、日本円で約8兆7000億円になるとも言われ、今年最大の新規株式公開案件になる見通しだ。

アームの上場予定日は未定
アームの上場予定日は未定

上場予定日は未定だが、2023年9月中とみられている。

ソフトバンクグループの孫正義会長兼社長は、6月の株主総会でアームについて、「爆発的成長期の入り口に入った」と期待感を示していた。

ソフトバンクグループの“反転攻勢”

「Live News α」では、市場の分析や企業経営に詳しい経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
ソフトバンクグループ傘下のアームがアメリカで上場申請ということですが、いかがですか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
いよいよソフトバンクグループの「反転攻勢」が始まった、そんな印象を受けます。

ソフトバンクグループの孫社長の凄みの一つに、失敗は失敗と認めながら、その悔しさを絶対に忘れず、次の成長のバネにしていることがあります。

例えば、2023年6月の株主総会で、シェアオフィスを展開するWeWorkへの投資は、「私の人生の汚点」として、率直に投資の失敗を認めています。

その一方では、「反転攻勢」というキーワードを使って成長戦略を語っていますが、その中核がアームです。

2016年、約3兆3000億円でアームを買収していますが、今回の上場によって、その時価総額は、約8兆7000億円になるとも言われています。

やはりAI、半導体が次なる時代の覇者になると見越して投資をしてきた孫社長の先見性と、継続性は評価が高いです。

堤 礼実 キャスター:
そもそもアームとは、どんな企業なんでしょうか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
いま話題のAIでも膨大な半導体が必要とされますが、この半導体の回路設計をアームが手掛けています。

小型で省エネルギーの半導体設計に特化しており、スマートフォン向けの設計技術で、世界シェアの約9割を握っています。

そして今回の、アームの上場に合わせて、インテル、米エヌビディア、米アップルといった複数の企業が出資を検討しています。

アリババ株売却から復活へ

堤 礼実 キャスター:
ソフトバンクグループは赤字の決算が続いてましたが、これを機に黒字への転換を果たし、再び成長軌道に乗せることができるのでしょうか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
孫社長は、ソフトバンクグループは「金の卵を生み出す製造業」だと話しています。

そうした「金の卵」の一つに、世界最大のB2Bオンラインマーケットである「アリババ」があり、その筆頭株主はソフトバンクグループでしたが、拡大する赤字の中で、保有するアリババ株のほぼ全てを売却しています。

これによって、利益を4.6兆円計上することで、急速な財務の改善を図りました。

そして、次なる金の卵は「アーム」なのでしょう。これから、ソフトバンクグループが反転攻勢し、復活することが期待されます。

堤 礼実 キャスター:
AIの開発が加速して、半導体の需要も高まっています。

こういった市場が拡大する中での上場申請、その行方を注視していきたいと思います。

(「Live News α」8月22日放送分より)

この記事に載せきれなかった画像を一覧でご覧いただけます。 ギャラリーページはこちら(11枚)