函館~札幌結ぶ都市間バスの便数半減

観光客でにぎわう函館市の「函館朝市」。

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コロナ禍以前に戻ったかのような活気にあふれている。

秋の観光シーズンに向けさらに期待が高まる中、それに水を差しかねないような動きが出ている。

函館市と札幌市を結ぶ都市間バス「高速はこだて号」。

「函館バス」など4社が共同運行し、帰省や旅行で使われるなど利用者に親しまれてきた。

現在1日8往復運行されているが、10月からは4往復と半減することが決まったのだ。

便数が半減する理由は、「函館バス」以外の2社が減便、1社が路線から撤退してしまうため。

函館バスの大隅穣さんは「事情もあるので仕方がないと思っている」と語る。

バスの運転手不足が原因だ。

近年、定年などの退職者の数に対し採用が追いついていないことなどがあり、運転手が足りていないという。

「バス業界ではバスの運転に必要な大型二種免許の取得のために費用と時間がかかる。これが一番のネックになっている」(函館バス・大隅穣さん)

「高速はこだて号」の利用客は、コロナ禍以前の2018年度は約12万人。

2022年度は約6万人と半減したが、2023年度は行動制限がないこともあり週末は満席に近い状態が続いているという。

「歯がゆい思いは正直ある。6月にバス運転体験会を開いて好評を得ていたので、バスの乗務員の魅力を伝えて新規採用につなげたい」(函館バス・大隅穣さん)

利用客・観光業界からは戸惑いの声

需要が戻ってきた中での便数の半減。

利用客からは戸惑いの声が聞かれる。

「札幌市などに行くときは、だいたい高速バスを使う。飛行機やJRは料金が高いので、バスだとコストパフォーマンスがいい。減便はちょっと悲しい感じがする」(函館市民・20代)

「ちょうどいい時間帯の便がなくなると悲しい。仕方がない。自動運転が普及すればよくなるかも」(函館市民・20代)

観光復活の兆しが見えた矢先の減便に、観光業関係者からも懸念の声が。

「多少なりとも便数が減れば、入ってくる人も少なくなる。減便にならないで、普通に来てもらえるとありがたい」(函館朝市で働く人)

「こういう仕事をしている人にとっては大きな打撃だと思う。人手不足はいろいろな職種ですごく感じている」(函館朝市で働く人)

懸念される”2024年問題”

バスの運転手不足は深刻さを増している。

最盛期の1975年度、全国の乗り合いバスの運転手は約10万7000人。

しかし、2021年度には約7万4000人と3割も減少している。

この状況は2024年春からさらに拍車がかかる可能性があるのだ。

労働時間の規制で収入や輸送量の減少などが懸念される「2024年問題」が控えているからだ。

流通経済大学・矢野裕児教授に聞くと、「バス運転手は非常に労働時間が長いという問題を抱えている。2024年の春に時間外労働の上限規制が適用されると、時間外労働が減ることによって、給与が減ってしまうという可能性がある」という。

過酷な労働環境を見直すため、政府は2024年4月からバスやトラックの運転手などの時間外労働時間を規制する。

長い労働時間は改善されるが、規制されることで収入が減ると転職する人が増える可能性もある。

そのため、さらに運転手不足が深刻化する恐れがあるという。

「労働時間が短くなることによって収入が減ると、ますます若い人にとっては魅力的ではなくなる。労働時間が短くなるのなら、それに合わせて給料は変わらなくすべき。今から議論が必要なことだと思う」(流通経済大学・矢野裕児教授)

都市間バス「高速はこだて号」の便数半減に留まらず、さらに大きな影響が出ることも予想される。

私たちの生活を支える大事な交通基盤を、どうやって守っていくか。

真剣に考えなければならない問題だ。

北海道文化放送
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