夏休みはどう過ごす? 「国内旅行」には慎重な姿勢

まもなくお盆休み。

7月22日から「Go To トラベルキャンペーン」を開始するなど、新型コロナウイルスの影響を受けた観光業界の盛り上げに力が注がれているが、8月5日現在、国内感染者数が4万人を超えるなど、いまだ収束の兆しを見せない。

SNSを中心に「キャンペーンは始まったけれど、今旅行に行くのは心配」「夏休み、お墓参りに行こうか迷っている」との声も挙がっている中、線香の製造・販売を手掛ける株式会社日本香堂が「コロナ自粛による生活者意識の変化」に関する調査結果を発表した。

調査は6月23、24日の2日間に、全国20~79歳の男女1036人を対象としてインターネットで行われた。

「今年の夏休み・お盆休みの過ごし方」での旅行やレジャーなどについて、個別に「計画・実施したい(積極派)」「自粛するべきと断念する・自粛すべきか迷い中(慎重派)」「計画・実施したいと思わない(無関心派)」として回答してもらったところ、

多くの人が「計画・実施したい」と答えたのは「近場に出かけるショッピングや外食(69.4%)」「お墓参り(51.2%)」「(国内外問わず)日帰り旅行(43.5%)」など。

一方で「テーマパークや遊園地へ行く(18.3%)」「同窓会や地域・コミュニティの親睦会(13.5%)」や「海外旅行(8.5%)」については“積極派”が少なく、多くの人が夏休みの過ごし方として選択しない、という結果となった。

日本香堂によると、例年「夏休みの過ごし方」としてトップを争っているのは「帰省」や「国内旅行」。

しかし、今回の結果を見てみると「自分の帰省・親族の帰省迎え入れ」は“積極派”が37.3%と全体で4位、「1泊以上の国内旅行」は続く5位となる“積極派”35.1%と、全体で4割程度の人が行いたいと考えているのにとどまった。

最近はビデオ通話を使った「オンライン帰省」や、「VR墓参りサービス」なども登場しているが、なぜいまだ小型の旅行にも慎重になる声が多い中、「お墓参りに行きたい」という人が多いのだろうか。

調査を行った日本香堂にお話を聞いてみた。

帰省や旅行より「ハードルの低い」お墓参り

――調査のきっかけは?

私達の日常を一変させたコロナ禍、とりわけ3密回避のための自粛生活により、これまでの行動様式や価値観に大きく変容を迫られる中で、“物理的距離”を埋め合わせるような、“心の距離感”(エモーショナルディスタンス)の緊密化を指摘する向きも少なからず聞かれました。

このことから“心のつながり”重視の傾きがもたらすかも知れない「供養行為・意識」の高まりを例証することに主眼を置き、併せて間近に迫った「お盆」の帰省や贈答の意識動向も見定めたく、本調査を実施した次第です。


――今年は「お墓参り」をしたい人が多い印象。その理由は?

以前に「墓参の意識・実態」を調査した際、全国の30代以上の男女生活者における「お盆」の墓参実践率は「3人に2人」(67%)の高水準で、それに比べれば今年はまだまだ“控えめ”といえます。

一方で、同調査による「墓所までの片道移動時間」は平均「2時間8分」で、大多数が日帰り圏内にあることから、宿泊の伴う「国内旅行」や「帰省」よりは行動のハードルが低く、51%の墓参意向に表れたと考えます。

また同調査による「墓参の意義」では、「故人/先祖の冥福を祈るため」(58%/52%)という信仰心が重きを占めるのは当然ながら、それに次いで「お墓をきれいに保つ」(35%)という動機も高く、自粛期間~雨期には手を入れられず夏草の生い茂ったままの墓所に対する清掃ニーズも、お盆を前にして一段と高まっているのでは、と推察されます。

日本香堂によると、旅行や帰省は宿泊を伴い同じ場所にとどまるためまだまだハードルが高く、代わりに、日帰りで済ませられる「お墓参り」への意識が高まっているのではないかとのことだった。

また、墓が近場にあるという人も緊急事態宣言の解除を経て「掃除などもしたいし…」と実際に足を運ぼうという動きがあるようだ。

そんな中で、日本香堂は「オンライン帰省」や「オンラインお墓参り」へのシフトはそれほど進まないのではないか、と捉えているという。


――オンラインサービスを使った帰省やお墓参りは今後増えていく?

今夏については「帰省積極派」37%に対し「慎重派」29%という拮抗した構図となっていますが、感染拡大への警戒が解かれるに従い、慎重派もまた元に戻るのではないか、と希望的観測ながらも見ております。

自粛期間中の「オンラインによる家族交流」の経験価値から日常的に定着する一方、「帰省」はごく限られた機会の“ハレ”のイベントとして、むしろ強く意識化されたようにも思料いたします。

また「墓参」については、前項でも触れたように、「墓の清掃」というリアルな役務を伴い、まだ代行サービスの利用意向もそれほど高くないことから、オンラインへのシフトはさほど進まないように思われます。

日常的なコミュニケーションを増やす選択も

一方、東京都を始め、大阪、愛知、福岡などでも感染者数が増えつつある中、夏休み前には「お墓参りに行きたい」と考えていたとしても、日々変化する状況の中で再び外出自粛のムードが高まり、「自粛した方がいいのでは…」と悩んでいるのも事実だろう。

そんな中、今年の夏休みの過ごし方のポイントとなりそうなのが「心の距離感」だ。

「帰省」に積極的と回答したのは37.3%と少なめだったが、その代わりとして「電話やメールで頻繁にコミュニケーションしたい」と考えている人が過半数という結果が出ており、また、帰省に対して“慎重派”と回答した人たちの51.0%は「帰省自粛によって会えない家族と電話やメールで普段よりも頻繁にコミュニケーションしたい・検討したい」と回答している。

日本香堂は「今回の自粛期間が“家族のつながり”を再確認させる契機となった可能性が示唆される」として、「本来は一緒に過ごせた時間の、少しでも埋め合わせを求める心情が窺われる」と分析している。

「家族に直接顔を見せに行く」というこれまでの夏休みのスタンダードな過ごし方や、一度の通話で終わってしまう「オンライン帰省」ではなく、短い通話やメールだとしてもその機会を日常的に増やす、という選択が今後増えていくのかもしれない。

――コロナ禍の中で、今後「夏休み」「お盆」の過ごし方はどう変化していく?

コロナ禍の先行きも見えない現状にあり、経時的調査が必要と考えます。

弊社的には、日本の夏の風物詩といえる多くの伝統的催しが中止を余儀なくされた2020年が分水嶺となって、季節行事に対する価値の再発見へと傾くのではないかとの仮説の下、引き続きウォッチングしていきたいと願っております。


刻々と変化する新型コロナウイルスの感染状況から、遠出や連泊での帰省が難しい今年の夏休み。
そんな中で、日帰りで行えるお墓参りが人気となるほか、再びリスクの高まる外出の代わりに、日常の中でコミュニケーションの機会を増やすといった、新しい夏の過ごし方が見えてきた。

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