2023年6月の黒字から一転、7月の貿易収支は787億円の赤字だった。

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財務省が発表した7月の貿易統計によると、輸出額から輸入額を差し引いた貿易収支は787億円の赤字だった。
6月は23カ月ぶりに黒字となっていたが、2カ月ぶりの赤字となった。

輸出が8兆7250億円と、2022年の7月に比べて0.3%減り、29カ月ぶりに減少した。

アメリカ向けの輸出額が過去最高となった一方で、中国向けの輸出が自動車を中心に8カ月連続で減少したのが影響した。

中国との関係シフトする必要性

「Live News α」では、市場の分析や企業経営に詳しい経済アナリストの馬渕磨理子さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
貿易収支の赤字、どうご覧になりますか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
貿易収支は、「季節調整値」で見るのが基本です。
貿易や商売は、夏や冬といった季節の違いで商品の売れ筋や需要に違いが出るため、「真の経済の状況」を理解するには、季節的な要因を取り除いた数字を見る必要があります。
この季節調整値で貿易収支を見ると、ずっと赤字の状態が続いています。ただ、その赤字幅は「縮小」してきているので、「実態は良い方向」に向かっていると判断できます

堤 礼実 キャスター:
貿易の赤字幅を縮小させるための鍵は?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
まだ赤字が続いている理由で大きいのは、8カ月連続で減少している中国向けの輸出です。
中国向けの自動車、半導体がふるわず、あと 食品も減少していますが、これは福島第一原発の「処理水」放出に反発した輸入規制が影響した可能があります。
ただ、中国向けの輸出で最大の懸念は、中国経済そのものが減速していることです。
消費者物価指数はマイナス0.3%、また、若者の失業率が実際には4割を超えているかもしれないなど、景気鈍化の懸念がぬぐえません

堤 礼実 キャスター:
中国との貿易も変わっていくのでしょうか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
これからの中国との向き合い方は2つあります。
1つは、アメリカとの関係を重視して、経済安全保障の観点から、中国経済との切り離しへと動く「デカップリング」。
そして、もう1つは、いま日本の産業界が模索している「デリスキング」です。
これは、大きな市場である中国との関係をある程度 維持しながら、リスクの低減を図り、中国以外の選択肢を探していくことになります

内需縮小が輸入の減少に影響

堤 礼実 キャスター:
再び円安が加速しているといったニュースもありましたが、輸出や輸入への影響については、いかがですか?

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
円安は輸出には有利に働く一方、エネルギーや原材料の輸入には不利になり、さらなる物価高を招く懸念があります。
いま、輸入が4カ月連続で減少しています。これは、日本の消費や設備投資の弱さ。個人も企業もお金をつかわない内需の縮小が、「輸入の減少」に影響している可能性があります。
国民生活を守るためにも、為替介入など何らかのアクションはあり得るかもしれません

堤 礼実 キャスター:
エネルギーや原材料などの多くを輸入に頼る日本では、円安が進むと物価高、さらには景気の冷え込みにつながる懸念があります。
私たちの暮らしを守るためにも、何らかの対策が求められます

(「Live News α」8月17日放送分より)

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