絵画のように青色に染められた空
耳に響き渡る蝉の声
眩い日差しに目を細め、小さな手のひらを空に伸ばしたあの夏の記憶

南アルプスの山々を背景に咲き誇る60万本のひまわり

山梨県北杜市明野町は、北に八ヶ岳、南に富士山。西に南アルプス、東には茅ヶ岳と四方を山々に囲まれている。
「太陽の街とも呼ばれるこの場所には、およそ60万本ものひまわりが太陽に向かって、まっすぐに背を伸ばし、訪れる人たちを出迎えてくれる。

 
 
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60万本のひまわり畑はどのようにして生まれたのか。

1992年、“日照時間日本一”を謳う明野村(2004年に合併し北杜市明野町)で、太陽をイメージする花「ひまわり」を観光の目玉にしようと始まった「明野サンフラワーフェス」。
開催当初はおよそ2万5千人の来場者数だったが、年々その数を増やし、現在はおよそ20万人もの人々が訪れるようになった。

今年5月、地元の小学生やボランティアらが種まきを行ない、ひまわりは満開を迎えた。
つぼみのうちは、太陽の動きを追いかけるように成長し、最終的に太陽が昇る東を向いて花を咲かせる。

和名は「向日葵」。「葵」は太陽に向かって成長する植物という意味を持つ。
和名は「向日葵」。「葵」は太陽に向かって成長する植物という意味を持つ。

「太陽の街」を裏付けたのは中学生だった

「日本一の日照時間」を謳う明野町。
日本一であることを独自に調べたのは、地元・明野中学校の生徒たちだった。

今から38年前の1980年7月、中学校近くに日照計、日射計、温度計などを設置。
その年の8月には気象観測委員会の生徒12人によって本格的な観測が始まった。

2017年の観測データでは、明野の日照時間は月合計で2608.3時間。
東京は2050.9時間。
日平均で明野7.2時間。東京5.6時間を記録している。

取材の合間に、今も観測を続ける明野中学校を訪れてみた。
対応してくれたのは進藤先生と気象観測委員会に所属する2年生の清水くん。

 
 

気象観測委員会では、朝早く観測データを記録し、1ヶ月に一度、データの打ち込み作業を行っている。

1年生の時から委員会に参加している清水くんになぜ入ったのか聞いてみると「他の学校にはない気象データを観測できて、楽しそうだったからです。」とまっすぐにこちらを見て話してくれた。
38年の伝統を引き継ごうと責任感を持って活動していることが、ひしひしと伝わってくる。

「気象観測委員会は学校の特色であり、生徒に自信を持たせる委員会として存在しています。」と進藤先生が語る。

毎年、観測した1年間のデータは、冊子にされる他、中学校のホームページでも公開されている。
この冊子を楽しみに学校を訪れる地元の人も多い。

また明野のレタス、トマト、大根など高原野菜の栽培時期の目安になる大切な資料としても重宝されているという。
「太陽とひまわり」は、明野の誇りなのだ、ということがわかる。

本物のひまわりで作った扇子

サンフラワーフェス会場では、地元グルメやひまわりのグッズが販売されている。

暑い夏には欠かすことの出来ない<うちわと扇子>。
ひまわりをモチーフにしたデザインが一層、夏らしさを演出している。

会場で販売されているうちわと扇子は、去年咲いたひまわりの茎を使った和紙でできている。

 
 

山梨県の伝統工芸品「西島手漉和紙」。
担い手が不足する中、「次の世代に和紙の魅力と伝統を伝えていきたい」とサンフラワーフェスとコラボ。
試験販売をしたところ好評で、今年から本格販売が始まった。

これまではイベント終了後、ひまわりは刈り取られ、畑は耕されていたが、このコラボレーションによって今、ひまわりは、うちわや扇子に姿を変え、生まれ変わることになったのだ。

取材を終えて、扇子をあおぎながら、風に揺れるあのひまわりに思い馳せてみる。
眩しく照り付ける夏の太陽が瞼の裏に今でも焼き付いている。

(取材撮影部・永岡清香VE)

<施設情報>
「明野サンフラワーフェス2018」は、8月19日まで開催。
住所:山梨県北杜市明野町浅尾5664
電話:0551-42-1423(北杜市明野サンフラワーフェス実行委員会事務局)

ひまわりソフトクリーム(350円)は、ひまわりの種がトッピングされ、ここでしか食べられない味を楽しむことができる。