子どもたちが夏休みの自由研究で、空の旅に隠されたSDGsを探す。

この記事の画像(23枚)

空港内をあちこち見回りながら歩く親子がいた。

女の子が手に持っているのは、一枚の大きな紙。

その紙は、JALグループが旅の中で簡単にできるSDGsアクションをクイズ形式で紹介している「#かくれナビリティ 自由研究シート」だった。

これは、この自由研究シートを利用してもらいながらSDGsを学び、発見してもらう、JALによる夏休み限定のイベントだ。

「#かくれナビリティ」とは、“かくれたサステナビリティ”を利用者に周知してもらうきっかけとして開始したものだ。

JALは今回新たに、「『#かくれナビリティ』夏休みキャンペーン」として、国内線を一人で乗る小学生や国際線の親子連れなど、子どもたち達を対象に夏休み期間中に「自由研究シート」を配布している。

小学3年生のみずきちゃんは、祖父母の元へと初めて“一人旅”に挑戦する際に、このイベントに参加した。

見送りに来たお母さんと一緒に「自由研究シート」を使って、隠れた“サステナビリティ”の探索を開始した。

みずきちゃん:
飛行機に乗る前にトイレに行こう!

お母さん:
おぉ、いいね。

最初に見つけたのは、「飛行機に乗る前にトイレに行こう!」だ。

飛行機が軽くなるほどCO2排出量を軽減するとともに、体も心もスッキリして乗ることを推奨している。 

親自身の考えるきっかけにも

他にも、気になるものを見つけていく。

みずきちゃん:
こういうつえついている人とかをこうやって楽にするため?

お母さん:
そうそう、うん。

体が不自由な人が移動しやすい、自動走行の車椅子を発見した。

さらに、出発時刻が迫ってくると――。

お母さん:
みいちゃん、出発する前に早めに到着するのも書いてませんでした?時間を…?

みずきちゃん:
まもる

時間を守ることでスムーズな運行ができるため、無駄なCO2排出を防ぐことができる。

親子でコミュニケーションをとりながら、自由研究シートを使ってSDGsについて理解しながら発見していく。

今回、何個見つけられたか聞いてみると――。

みずきちゃん:
この中でいったら全部いけたかな。4個は見つけられたはず。

みずきちゃんの母親:
(自由研究シートを使うことで)気づきが新しくあったので、そこが良かったなと思いました。

親子の時間を惜しみながらも、初めて1人で飛行機に乗り込む姿を見送った。

この経験を経たことで、隠れたSDGsを発見するきっかけになったという。

日本航空CX戦略部戦略グループ・石川恭子主任:
サステナビリティというと少し難しく勉強のように感じの方もいると思うが、空の旅におけるサスティナビリティを身近に感じていただいて、親子で考えるきっかけや行動につなげていただきたい。

「保護者の力」影響しやすい課題解決型

「Live News α」では、津田塾大学教授の萱野稔人さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
今回の試みに参加した子どもたちにとって、この夏の大切な学びになるかもしれませんね。

津田塾大学教授・萱野稔人さん:
夏休みの自由研究というと、かつては実験や観察が大きな傾向だったが、近年では、課題解決型のものが増える傾向がある。今回のJALの取り組みも、この課題解決型になる。

いま、社会全体のニーズを反映して、夏休みの自由研究だけでなく、学校教育全体が課題解決型の取り組みをより重視するようになった。このこと自体はとても望ましい変化であると言える。

ただ、懸念がないわけではない。それは、課題解決型の自由研究が重視されるようになればなるほど保護者、多くの場合は親の力がより反映されやすくなってしまうということ。

堤 礼実 キャスター:
具体的には、どういうことでしょうか。

津田塾大学教授・萱野稔人さん:
課題解決型の自由研究は、そもそも課題を見つけること自体、子どもにとってとてもハードルが高い。

そのため、保護者が座学の勉強以外に、どのような経験を子どもにさせてあげられるのか。これによって大きな違いが生まれてくる。

具体的には、保護者が日頃子どもとどんな会話をしているのか、どんなことに子どもの関心を向けさせてあげられるのか、いわば「保護者の力」のようなものが子どもの学力に大きな影響を与えてしまう。

つまり、夏休みの自由研究は課題解決型になればなるほど、「保護者の力」によって教育格差を生むことになってしまう。

多くの人は教育格差について親の経済力だけを問題にしがちだが、それは、一つの要素にすぎない。

親自身がどれぐらい勤勉で、向上心があり、どんな時間の使い方をしているのか、といったことが子どもの学力に関係していることを、多くの研究が示している。

堤 礼実 キャスター
日頃の子どもとの向き合い方が影響するんですね。

津田塾大学教授・萱野稔人さん:
親がどれぐらい子どもの教育に関与しているのか、親自身が日頃、どのようなことに関心を持ち、どのような語彙を使っているのか、課題解決型の自由研究は、親がそれを振り返る一つのきっかけにもなると思う。

そして、この教育格差の問題にどう対処していくべきか、家庭や学校だけでなく、社会全体としても考えていくべき。

堤 礼実 キャスター:
SDGsやサステナビリティと聞くと、少し難しく思われがちですが、こういった何気ない気づきを旅の中で楽しく見つけていくことで、子供たちにとって印象的な体験として、記憶に残るのではないでしょうか。

(「Live News α」8月10日放送分より)