アメリカ軍による原爆投下から78年。各国首脳らがそろって原爆慰霊碑に献花する姿が印象的だった2023年5月のG7サミット後、最初の「原爆の日」を迎えた。平和の祈りに包まれた広島の8月6日を振り返る。

夜明け前から参拝者の「祈り」続く

広島市の平和公園では夜明け前から多くの人が原爆慰霊碑を訪れ、犠牲者の冥福を祈った。

8月6日午前3時ごろ、参拝者が訪れる広島市の平和公園
8月6日午前3時ごろ、参拝者が訪れる広島市の平和公園
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4歳の時に被爆:
今、ロシアとウクライナが戦争している。犠牲者がたくさんいると思う。関係のない人たちが犠牲になる戦争は悪いことだと、みんなわからなければいけないのに

参拝者:
一切、核兵器を持たないという考えを示さなければならない時だと思う

2023年は4年ぶりに一般席や屋内会場も復活。2022年の安倍元首相の銃撃事件や、2023年の岸田首相の襲撃事件を受け、入場時には入念な検査が行われた。

「原爆の日」の平和記念式典
「原爆の日」の平和記念式典

広島市中区で最高気温が36度を超える猛暑日となった6日、特に注意が払われたのは暑さ対策だ。強い日差しが照りつける中、原爆資料館近くで冷水やおしぼりがサービスがされ、希望者は次々と水を受け取っていた。

平和公園に設けられた冷水サービス所
平和公園に設けられた冷水サービス所

過去最多の111カ国が式典に参列

平和記念式典には被爆者や遺族のほか、岸田首相をはじめ過去最多となる世界111カ国の駐日大使らとEUの代表などが参列した。

原爆投下時刻の午前8時15分。「黙とう」の合図で、平和の鐘が鳴り響く。

「平和の鐘」を鳴らす遺族代表とこども代表
「平和の鐘」を鳴らす遺族代表とこども代表

式典会場を埋め尽くす多くの人が目を閉じ、元安川にかかる橋の上には手を合わせる親子の姿も…。広島のさまざまな場所で祈りがささげられた。

元安川にかかる橋の上で黙とうする人々
元安川にかかる橋の上で黙とうする人々

一方、厳粛な式典会場の近くには大声で行進するデモ団体が。「静かに祈ろう」という青いプラカードを掲げる人々をよそにデモ隊同士が激しく衝突する事態も発生し、機動隊による厳重な警戒態勢が敷かれていた。

式典会場を囲むデモ隊と機動隊
式典会場を囲むデモ隊と機動隊

こうした中での「平和宣言」。

広島市・松井一実 市長:
世界中の指導者は核抑止論は破綻しているということを直視し、個人の尊厳や安全が損なわれない平和な世界の実現に向け、為政者に核抑止論から脱却を促すことがますます重要になっています

岸田文雄 首相:
ロシアによる核の威嚇等により、その道のりは一層厳しいものになっています。しかし、このような状況だからこそ国際的な機運を今一度呼び戻すことが重要です

変わらない現実、進む被爆者の高齢化

式典の後、岸田首相は「被爆者から要望を聞く会」に出席。

広島市中区で開かれた「被爆者から要望を聞く会」
広島市中区で開かれた「被爆者から要望を聞く会」

被爆者団体の代表からは核兵器禁止条約への署名・批准を求める声が相次いだ。

しかし…

岸田文雄 首相:
核兵器国が行動しないと、何も現実は変わらないというこの厳しい現実を前にして、核兵器国はこの核禁条約に1カ国も参加していないわけですが

政府は「核保有国の関与を得るべく努力を続けていく」とするこれまでの主張を繰り返した。
その後、岸田首相は被爆者が入所する広島市安佐北区の原爆養護ホームを慰問。

広島市安佐北区の原爆養護ホーム「倉掛のぞみ園」
広島市安佐北区の原爆養護ホーム「倉掛のぞみ園」

2023年、被爆者の平均年齢は85.01歳と前年比で0.48歳高くなり、被爆者の高齢化は一段と進んでいる。

高齢の被爆者へ花束を贈る岸田首相
高齢の被爆者へ花束を贈る岸田首相

6日夜、原爆ドーム前の元安川で行われた灯ろう流し。

平和への祈りや原爆死没者を追悼する言葉が書かれた色とりどりの灯ろうが、ゆっくりと川面を流れていった。

(テレビ新広島)

テレビ新広島
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