2022年にテレビ熊本で紹介した熊本市のお笑い芸人・星野竜馬さんが放送後、病に倒れ急逝した。熊本のお笑い界を盛り上げたいと奮闘していた星野さんの遺志を引き継ぐ人たちを追った。
身近な笑いを届けた「熊本ラーメン王」
お笑い芸人の星野竜馬さんは芸歴20年。拠点を熊本に置き、熊本を盛り上げようと奮闘する星野さんをテレビ熊本が取り上げ、特集を2022年8月に放送した。

お笑い芸人・星野竜馬さん(享年43):
暗い時期なので、“一日一笑”で“1日1回以上は笑いましょう”というのは熊本に、日本に広げたい

そう語っていた約3週間後に、星野さんは帰らぬ人となった。脳梗塞だった。数日前には大きなライブを開催したばかりだった。

パプリーさん:
急いで今の相方と病院に向かった時には意識がない状態で、めちゃめちゃ元気だったので、まさかあんな大きなライブをした何日か後に(亡くなる)とは思わなくて

そう振り返るのは、星野さんの相方だったパプリーさん(40)だ。お笑い芸人が熊本から誕生してほしいと、ライブができる店「ヤングサロン コバベヤ」を熊本市中心部で経営している。

一時は芸人を目指していたパプリーさんは、星野さんと出会ってから再びお笑いの道に。「熊本ラーメン王」というコンビを結成し、2年間ほぼ毎日一緒に活動してきた。

パプリーさん:
僕は全然感覚も忘れているし、竜馬さんが全部フォローしてくれて、何言っても返してくれて、僕が何も言わない時は竜馬さんが面白いこと言ってくれて、めちゃくちゃやりやすかったですね。それに楽しかったです

ステージだけでなく、相続の問題について笑いを交えて分かりやすく解説する「相続漫才」をしたり、新型コロナウイルスで苦しむ熊本のラーメン店を楽しく応援しようとYouTubeチャンネルを開設したりと、“身近な笑い”を多くの人に届けてきた。
新生「ラーメン女王」相方は素人
活動が軌道に乗り始めた矢先に突然相方を失ってしまったパプリーさんは、あまりのショックに数カ月先まで入っていた仕事を断り、活動の継続も諦めかけていたという。

パプリーさん:
「せっかくここまで築き上げたことをこのまま辞めるのはもったいないし、竜馬さんも望んでないんじゃない」って。「私(なおみさん)が竜馬さんの代わりにそれを覚えたらどうにかなるんじゃないか」って言ってくれたんですよ

2人の活動を近くで支えていた店のスタッフ・なおみさん(46)が、竜馬さんの代役を買って出たという。

パプリーさん:
その気持ちもうれしかったし、確かに竜馬さんもその言葉聞いたらうれしいだろうなって

なおみさんは全くの素人だったが意志は固く、パプリーさんは新たにコンビを組むことを決意した。

なおみさん:
興味も一切なかったんですけど、一つ一つのネタを丁寧にしっかりやることが自分の務めだと思って、1回それをしたら自分の中で自信がついてしまって、お笑いってこんなに面白いんだって。みんなが笑ってくれることに「これはいける」と志願しました

新たなコンビ名は、「熊本ラーメン王」ならぬ「ラーメン女王」だ。

なおみさん:
「一つ一つの言葉をはっきり言わないと通らない」と言われているので、言葉はしっかり話すようにしています

ネタは星野さんとパプリーさんが作ったもので、2人で練習を重ねた。
星野さんの芸人仲間と共に初ステージ
2023年4月に、2人は熊本市で開かれたお笑いライブのステージに立った。

パプリーさん:
大きい会場でライブをしたことはあるが、ここまでお客さんが入った状態でやるのはこの2人では初めてなので、僕の方が緊張してるかな

出演者は主に熊本で活動するプロ・アマの芸人たちで、これまで星野さんと共に熊本を盛り上げて来た仲間だ。

肥後ドッコイ・イサオさん:
お笑いライブは熊本はなかなかなったので、少しでも星野竜馬先輩が作ってくれた土台を続けていけたら

星野さんが名付け親・エンブンさん:
「ブンブンブブブン、エンブン」っていうのは、竜馬さんが作ってくれたもの。世に広めていくことは竜馬さんと一緒にやってると思うので頑張ろうと思う
そして、いよいよ「ラーメン女王」の初ライブがスタートした。

なおみさん:
ラーメン女王です。お願いします。小学生の時に初恋の人に書いた恋文を見つけたの

パプリーさん:
え、なおちゃん初恋の時恋文書いたの?でも恋文っていうと年代がばれるから

なおみさん:
家康くん

パプリーさん:
家康くんって徳川幕府か!変わった名前だな

なおみさん:
の、親友のハリファくん

パプリーさん:
ハリファくん!家康くんの友達のハリファくんが好きだったのね

なおみさん:
ちょっと、うるさくて手紙読めないじゃないの

パプリーさん:
手紙だけに僕、空気読めてなかったかな

なおみさん:
手紙だけにね

パプリーさん:
言うてる場合か!
「一日一笑で地域のために貢献を」
観客からの感想も「めちゃくちゃ面白かった」「また来たい」など好感触で、星野さんの母・菊子さんもライブに駆け付けた。

星野さんの母・菊子さん:
天国から息子の竜馬も絶対応援していると思います。本当にありがとうございます

なおみさん:
竜馬さんの遺志を継いで一生懸命やっていきたいと思う

パプリーさん:
頑張ります。熊本を笑い転がせられるように

パプリーさん:
“一日一笑、一日一笑”っていうのも本当、常日頃言っていたので、そういう次世代というか人のため、自分たちの住んでいる地域のために何か貢献できることはしていかないといけないのかなというのは、竜馬さんに教わったことかなと思います

星野さんの思いは多くの人に引き継がれている。
(テレビ熊本)