アートを通して、規格外野菜の価値を見つめ直す。

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大きな3つの足があるようにみえる大根。

リンゴや街のイラストが描かれたかわいらしい絵画。

さらには、傷が背骨のように見えて、丸まった赤ちゃんのようなかわいらしい形のトマトの写真もある。

規格外野菜をテーマとした展示がならぶ
規格外野菜をテーマとした展示がならぶ

リポート:
規格外野菜をテーマにした作品が、こちらでは展示されています。

“規格外野菜”とは、形や大きさなどが農産物の規格規定を満たさず、廃棄されたり、値下げして販売されることの多い野菜だ。

そんな、規格外野菜の価値を“新たな形で見つめなおす”美術展「アートな青果展」が、東京・港区のITOCHU SDGs STUDIO GALLERYで、2023年9月18日までの期間限定で開催されている。

例えばある作品では、実際に収穫された規格外野菜を3Dスキャンし、彫刻作品として再現した。

作品名だけでなく、作者である生産農家の名前なども添えて展示している。

そして、来場者自身が好きなポーズを取り、AR技術で規格外野菜の彫刻作品に変身できる体験も行っている。

さらに、規格外野菜ならではの個性的な断面を波形にし、音楽ソフトでその波形を音に変換したユニークな“野菜の音楽”を楽しむこともできる。

また、来場者がアート作品と一緒に、実際の規格外野菜を自分自身で値付けし、購入できる青果店コーナーを設けている。

視点を変えることで、規格外野菜の“価値”を考えるきっかけを提供している。

来場者:
いろいろこういう形でも食べられるよっていうのが面白くて、楽しかったです。

来場者:
こんな形があるんだと思って。全然味は一緒だし、 (個性ある形なら)面白いかなと思って買いたい。

主催者は――。

伊藤忠商事 Corporate Brand Initiative・菰田 有花 さん:
各展示で規格外野菜の価値を見つめなおして、それで終わるのではなく、今後のSDGsに関連するアクションにつなげていただけたらなと。

「規格外は個性」認め正当な価格を

「Live News α」では、コミュニティデザイナーで、studio-L代表の山崎亮さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
規格外野菜の価値をアートで見つめ直そうという試み、山崎さんは、どうご覧になりましたか。

コミュニティデザイナー・山崎亮さん:
多様性が重要だという掛け声は広まりつつあるが、それがどういうことなのかを実感させてくれる展覧会として注目したい。

この展覧会を通して、野菜における多様性についても考えて欲しい。規格外野菜は「価値が劣るもの」とするのではなく、「価値のある個性」として捉えることで、フードロスの解決にもつながるのではないか。

堤 礼実 キャスター:
見た目などのせいで、出荷されずに廃棄されてしまう野菜があるのは、もったいないような気がしますが、いかがですか。

コミュニティデザイナー・山崎亮さん:
実はこれは農家にとっても、悩ましい問題。農産物は、取引や流通を円滑に行うために、大きさ・色・形などを等級付けした農産品規格というものが設けられている。

この規格から外れた野菜が「規格外野菜」となり、「価値が低い」とされ、出荷されずに廃棄されてしまうものも多い。

農家にとっても、丹精込めて育てた野菜を、誰も食べることなく、捨ててしまうのはつらい。
しかし、もったいないからと、規格外野菜を安い値段で市場に大量集荷すると、どうなるか。

農産物全体の価格の下落につながり、農家の経営を圧迫することになり、農業の持続性が失われてしまう懸念がある。

多様性が認められる社会が実現すれば、野菜もその価値を活かしやすくなる。人間も同様だろうし、そうなればきっと生きやすい社会が実現されるのではないか。

違いに価値を見いだす第一歩

堤 礼実 キャスター:
こういったアートに触れる前と、触れた後では、何か感じ方に変化があるかもしれませんね。

コミュニティデザイナー・山崎亮さん:
多様性が認められる社会を実現させるためには、多様なことの中に価値を見つけられる人が増える必要がある。

その「気づき」のきっかけとして、今回、人の感性に訴えるアートをもってきている。

「これはこんな点で魅力的だ」「あれは不思議と心が和む」など、それぞれの違いを価値として、認識できるようになるには練習が求められるだろう。

そんな練習の一つとして、野菜の違いを価値として展示された空間に身をおいて、自分なりの価値付けをしてみるのがいいだろう。

堤 礼実 キャスター:
SNSなどでも時々、ユニークな形の野菜や果物が話題になったりしますが、それぞれの特徴に焦点を当てて、価値を見出すことは素敵なことですよね。

欠点だと思っていたことが、実は、魅力でもあるということに気付くきっかけになるかもしれません。

(「Live News α」8月1日放送分より)