福島県の相馬地方で3日間にわたって行われる「相馬野馬追」は、例年 熱い日差しを浴びながらの開催となる。20年前の2003年は珍しく雨が降った。この年を最後に野馬追と別れを告げた一人の男性が、仲間の支えを受け再び出陣を果たす。

二度目の初陣へ

「野馬追本番っていう気持ちが高ぶっています。神旗争奪戦では、ご神旗を2本取ったことがありまして、その時は嬉しかったですね」

福島県南相馬市原町区の古内賢二さん(62)
福島県南相馬市原町区の古内賢二さん(62)
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福島県南相馬市の古内賢二さんは、2023年の野馬追を「二度目の“初陣”」と話す。
祖父も父も、代々野馬追に出陣。それは家族の誇りであり、幼いころの古内さんにとって憧れだった。

1968年の相馬野馬追の様子 代々出陣してきた祭り
1968年の相馬野馬追の様子 代々出陣してきた祭り

父の死と原発事故による避難

18歳の時、騎馬隊に号令を出す螺役(かいやく)で初陣を飾り、その後は神旗争奪戦などでも武勲を立てた。

18歳で初陣 神旗争奪戦でも武勲を立てる
18歳で初陣 神旗争奪戦でも武勲を立てる

しかし、勤めに出ている古内さんに代わり、馬の世話をしていた父・正一さんが亡くなり、2003年の出陣が最後となった。その後、東日本大震災と原発事故で福島県外に避難。山梨県の企業で定年まで働き、ふるさとに帰ってきた。

珍しく雨の中での開催となった2003年の出陣が最後に
珍しく雨の中での開催となった2003年の出陣が最後に

もう一度あの舞台へ

一観客として見た2022年の野馬追。「関わりたかったというのが一番。本当に来年こそは自分がそういう立場になりたいって」と心が揺さぶられたという。

相馬野馬追のメイン 神旗争奪戦
相馬野馬追のメイン 神旗争奪戦

20年ぶりに野馬追に出陣したい・・・古内さんの思いを聞き、かつての仲間が馬を用意し力を貸してくれた。「ある程度乗ると身体は意外と覚えている」と話す古内さん。

しばらくぶりの乗馬でも身体が覚えている
しばらくぶりの乗馬でも身体が覚えている

心身にしみ込んだ相馬野馬追

長い間、野馬追から離れていたが、馬具のつけ方、甲冑の着付け、すべてが身体にしみ込んでいる。北郷騎馬会の菅野茂雄さんは「20年間我慢してたみたい。今まで溜めていた分、発散して獅子奮迅の活躍をしてほしい」とエールを送る。

馬具のつけ方・甲冑の着付け 20年経っても忘れない
馬具のつけ方・甲冑の着付け 20年経っても忘れない

螺は避難した際にも手放さず、ふるさとを思いながら響かせていた。武田流陣螺術師範螺役の菅野大作さんは「20年のブランクっていうのは全然感じない。古内さんとは小さい時から一緒に野馬追に出ていて、久々に北郷騎馬会に戻ってきたということで、大変嬉しい」と話す。

避難しても続けた法螺貝 ブランクを感じさせない
避難しても続けた法螺貝 ブランクを感じさせない

思い入れのある馬具と共に

初陣の時に作ってもらった馬具や、父から譲り受けた和鞍。手入れをする度に野馬追が大好きな自分に気づかされた。

父から譲り受けた和鞍
父から譲り受けた和鞍

「色んな人の思いがこもっている道具なので。やっぱりね宝ですよ私の。周りの人にかなり助けられながら、支援を受けながら野馬追を続けられるということに感謝しています。父も多分向こうで喜んでいるんじゃないかと思っています」

亡き父・支えてくれた仲間に感謝し二度目の初陣へ
亡き父・支えてくれた仲間に感謝し二度目の初陣へ

変わらない野馬追への誇り。古内さんは20年分の思いを胸に、勇ましく出陣する。

(福島テレビ)

福島テレビ
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