福島県鮫川村を流れる戸草川。きれいだった川の水は今、豚のふんや尿によって汚れ、周辺の環境や農作物などへの影響が懸念されている。
清流が一変 濁りや悪臭
福島県の鮫川村から古殿町、そしていわき市へと流れる鮫川。その上流の戸草川では2023年4月以降、「濁り」や「悪臭」が問題となっている。原因となっているのが、上流部にある養豚場から出された“ふん”と“尿”。

高濃度の汚染物が流れ込む
家畜の排泄物は、適切な処理が法律で定められている。鮫川村の関根政雄村長によると「経営者側は、6つあるふん尿処理施設の4ヵ所が故障し機能が果たせなかった。それによって、ふん尿を処理する施設に大きな負荷をかけて、濃度の高い汚染物が川に流れ込んだというような答弁をしている」という。 養豚場は処理設備が故障したため、適切に処理されていないふんや尿が流出してしまったと説明している。

2キロ離れた所でも基準値超
鮫川村と福島県などが行った水質調査では、基準を大幅に超える濁りや汚れが検出されている。養豚場から2キロ離れた場所でも基準値を超えるアンモニウムを検出しているため、福島県の自然保護指導員でカジカやヤマメの放流に力を注ぐ齋須寛一さんは、川の生き物への影響を心配している。

「川に汚れが入ってくると、汚れを分解するために川の中の酸素をみんな使ってしまう。必然的に酸素がなくなるから、魚そのものがそこには住めないから真下に下るか、どこかに避難する形になると思う。無責任もはなはだしい」と齋須さんはいう。

農業にも影響 汚水で病害発生
さらに芳賀春男さんが飼料用のコメを栽培する田んぼでは、汚れた水を引いてしまったため、稲が枯れてしまう「葉いもち病」の被害を確認。「コメはなるけども、玄米にするときにボロボロになって壊れてしまう。とりあえず水が綺麗になれば」と話した。

具体的な対策について言及なし
戸草川で濁りや異臭が確認されたことを受け開かれた住民説明会。会には養豚場を経営する神明畜産の高橋義一社長が出席。「故意に流してはいない」「誠意を持って最大の努力をする」としたが、具体的な対策についての回答はなかったという。

鮫川村の関根村長は「きちんと監視、チェックをしていかなくてはならない。村としても、それが守られないのであれば、きちんとした形の法的手段を講じるように今準備を進めている」と話した。福島県は、神明畜産に改善計画書の提出を求めている。
(福島テレビ)