事件から約11か月 ついに開かれた初公判

:送検される小野勇被告(2022年)
:送検される小野勇被告(2022年)
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2022年10月、札幌市東区の自宅アパートで、小樽市の当時22歳の女子大学生の依頼を受け、首を両腕で絞めて殺害し、遺体の左わきの部分を刃物で切りつけたとして、嘱託殺人と死体損壊などの罪に問われている無職・小野勇被告(54)。

法廷に現れた小野勇被告
法廷に現れた小野勇被告

事件から約11か月が経った8月31日、札幌地方裁判所で初公判が開かれた。

▼井下田英樹裁判長:名前は何と言いますか?
 小野被告:小野勇です

▼井下田裁判長:職業は?
 小野被告:無職です

裁判長に名前などを聞かれ答えた小野被告。検察が起訴内容を読み上げ、井下田裁判長が問いかける。

▼井下田裁判長:起訴事実に間違っていることはありますか?
 小野被告:いえ、ありません

小野被告は起訴内容を認めた。

検察側の主張「自殺を手伝ったことがあるかのように嘘を言った」

検察側
検察側

検察側は事件に至る経緯を説明した。

▼検察側:ツイッターのプロフィール欄に“重度のうつ病と診断”や“心優しき死神でありたい”と記載されていた。2022年9月上旬ごろ、被害者の「殺して」などというツイートを発見し、「いいね」を送信したことがきっかけで、DMでやり取りを開始した。被害者に自殺を手伝ったことがあるかのような嘘を言って「遺体の処理に5万円ぐらいかかる」や「眠っているときに首を絞めたり、刃物で刺すなどの殺害方法がある」と説明した。

こうして、SNS上でメッセージを送り合った小野被告と女子大学生。

2人が初めて会ったのは2022年9月27日。JR札幌駅近くのカラオケ店に行き、小野被告は殺害されること本当に望んでいるか女子大学生に確認したという。

▼検察:薬を使い、意識がないうちに首の後ろをナイフで刺して殺害することを約束して、2022年10月3日に実行に同意を得て、遺体を自宅アパート浴室で解体し、土に埋めて遺棄することを計画し、被害者に伝えたが、必要な道具を準備していなかった。

小野勇被告(SNSより)
小野勇被告(SNSより)

そして、2022年10月3日朝。小野被告はレンタカーで待合せ場所のJR手稲駅に向かい、女子大学生と合流するが…

▼検察:犯行が警察に発覚しないように、被害者にDMのやりとりなどを消去するように依頼。被害者は従い、小野被告の自宅へ向かった。

札幌市東区の小野被告の自宅アパートで、女子大学生に大量の睡眠薬などを服用させ、殺害実行に使うとしたナイフを見せたという。

しかし、女子大学生は薬で深い眠りにつかなかったため、頸動脈を押さえて意識を失わせようとしたが、女子大学生に「苦しい」と言われて失敗。

▼検察:翌4日、ナイフでの殺害を断念し、女子大学生の首を両腕で絞めて窒息死させて殺害した。
 
翌5日、遺体を解体しようと浴室に運び、血抜きをするために、果物ナイフを左わきの下部分に刺して、切り裂いた。

▼検察:夜に遺体を解体するためにノコギリを購入したが、解体に踏み切れないまま遺体を放置。翌6日、SNSのDMで、遺体の写真を見せてほしいと頼まれ、遺体の一部の写真を送信した。

検察側は完全責任能力があると主張した。

弁護側の主張「自殺未遂の経験からハードルが下がって正当化していた」

弁護側
弁護側

弁護側によると、小野被告は高校卒業後に自衛隊に入隊するが、1993年に自衛隊を辞め、営業職やタクシードライバーをしていた。2004年に結婚し、子どもが生まれるも、2007年に離婚、2015年は失業後に体調を崩し、生活保護の受給をしはじめ、2017年に心療内科に通院を始めたという。

▼弁護人:2018年、ファンだったアーティストが解散し、ファン仲間に裏切られて人間関係に悩み、自殺未遂をした。さらに2019年に父親が亡くなり、母親が道外の兄の元に引っ越したことで症状が悪化し、2回目の自殺未遂をした。

こうした経験から、小野被告は自殺に対する“閾値”が低下、つまり、ハードルが下がっていて、自殺を正当化する考えになっていたという。

法廷内の小野勇被告
法廷内の小野勇被告

▼弁護人:2022年9月上旬、ツイッターで被害者の「殺して」という投稿に「いいね」をすると、DMで「ありがとうございます」というメッセージが来た。9月27日、札幌駅前のカラオケ店で殺害に使うというナイフを見せると、被害者から「直接会って安心しました」「本当にありがとうございます」と言われ、10月3日、一緒に自宅に行った。

弁護人は小野被告の考え方に、女子大学生の“死にたい”という気持ちの強さが重なったと話し、精神疾患の影響もあったとして、次のように主張する。

▼弁護人:被害者の自殺を手助けすることを正当化しているわけではない。起訴内容に争いはないが、犯行当時、心神耗弱の状態だったため、執行猶予付きの判決が妥当。

「絶対に許しません」遺族の思い

札幌地裁
札幌地裁

その後、検察は女子大学生の父親の思いを代読した。

▼父親:10月3日朝、娘が「手稲で人と会う」と言って、ご飯も食べずに出ていきました。それが最後の姿でした。10月8日、警察から「若い女性の遺体が見つかった」と連絡が入り、仕事を切り上げ、妻と一緒に飛んでいきました。心臓がバクバクして、娘じゃないことを祈りました。

両親が警察署に到着する。

▼父親:警察に一枚の写真を見せられ、言葉を失いました。目の前が真っ暗になりました。夢であってほしい、嘘であってほしいと思いました。

小野勇被告(SNSより)
小野勇被告(SNSより)

10月10日、警察から身元が判明したと連絡が入り、自殺をしたのか思ったという両親だが…

▼父親:小野勇という聞いたこともない53歳(当時)の男が殺したと聞きました。

驚きと同時に、今も残り続けているのは、憤りだ。

▼父親:小野被告のことは絶対に許しません。死刑になってほしいです。目の前で見たらつかみかかってしまいます。死刑にならなかったら、家に来いと言いたいです。娘の仏壇の前で両手をついて謝らせたいです。

北海道文化放送
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