厳しい暑さが続く7月。
そんな夏の暑い日に食べたくなるのが「そば」だ。
想像よりも“ナナメ上”に変化を遂げたものに注目する「ナナメ上調査団」。今回はそば屋さんを特集する。
「ぬるいそば」や「日本一の太すぎるそば」「出前が格好いいそば屋さん」まで、意外な進化を遂げたそばのお店を紹介する。
まずは幅広い世代が楽しめる、趣向を凝らしたサービスを展開する最新のそば屋さんから。
日本初!回るわんこそば屋さん
去年、東京・新宿にオープンしたのは日本初の“回るわんこそば店”「くるくるわんこ」。
回転寿司でおなじみの回転レーンを使った立ち食いスタイルのお店になっている。

40分食べ放題のこちらのそば屋さんは「“わんこそば”という、誰でも知っている日本文化を、都内で気軽に体験していただきたい」というコンセプト。
回ってくるそばが入ったおわんを自分のペースで食べていけるのが魅力だ。
そんなアミューズメント感覚で楽しめるそば屋さんが登場する一方で、こだわりすぎて“ナナメ上”に進化しちゃったそば屋さんがあった。
熱くも冷たくもない新感覚のそば
東京・杉並区にある「Y’z☆kato(ワイズカトウ)」。

そば屋さんっぽくないピンクの外観に、店内にはあちこちに張られたメニューがズラリと並ぶ。
そのたくさんのメニューの中に、「ぬるいそば」の文字を発見。

そばと言えば、熱々、もしくは冷たいそばだが、「ぬるいそば」とはどんなそばなのか。
そこで注文してみると出てきたのは、ネギが乗っただけのシンプルなかけそば。

よく見ると、湯気が全く出ていない。一体どのくらいぬるいのか。
普通のかけそばの温度79.3度に対し、「ぬるいかけそば」の温度は41.2度。

その差は歴然で、確かにぬるい。
肝心の味は、調査員によると「つゆの風味やそばの香りとダイレクトに分かるし、食べやすくておいしいです」と、意外にもおいしいという感想。

だが、なぜぬるいのか。
店主・加藤巧智さんによると、「以前は駅前で立ち食いそばをやっていたんだけど、時間がなくて急いでいるお客さんが『冷ましてくれ』という人が結構いて」と、お客さんの要望でぬるいそばが誕生したという。
お客さんファースト!と思いきや、一方で「自分自身が熱いの好きじゃない。温かいご飯でも冷ましてから食べるから」といった理由も。

お客さんのためだけでなく、「熱いのが好きじゃない」という自分のためにも作った「ぬるいそば」だった。
続いては、食べるのがとても大変なそばを紹介。
“日本一太い”十割そば
益子焼で有名な栃木県益子町にある「タカクノカモソバ」というお店に、食べるのが大変なそばがあるという。
7月から新たにメニューに加わった店主渾身(こんしん)の一品が、“日本一太い”と豪語する極太そば。

そのそばの太さは、約5センチもあった。
この極太そばの気になる作り方は、そば粉とお湯を少しずつ混ぜていき、生地にしていく。
普通はこの後伸ばして切っていくが、極太そばは大きめの容器に入れ成型する。

そして30分ほどゆでたら完成だという。
見た目は「そばがき」のようだが、店主いわく、あくまでも「そば」なんだとか。
重量は、もりそば5人前相当の約800グラム。
調査員が実際に頼んでみると、この極太そばは箸では持ち上がらないため、手でつかんで食べてみようとするが、太すぎてそばつゆの器に入らない。
持てない、入らないと、これは確かに食べるのが大変だ。

調査員は仕方なく、かぶりついてそばを食べた後、つゆをゴクリ。
食べづらいものの「そばの香ばしさが、口の中に広がり、ちゃんとおそばの味がしておいしかった」と調査員は話す。
それにしても、なぜこんなそばを作ったのか。

「世の中にないものを生み出そうと。おいしければいいという部分もありますが、それ以上に感動していただければ」(タカクノカモソバ・高久博さん)
見た目も味もインパクト絶大な、そばだった。
続いては、こだわりが強すぎて入れない?そば屋さん。
入店できないそば屋さん
滋賀・甲賀市にある「生粉打 作美(きこうち さくみ)」は、夫婦で営んでいるそば屋さん。

お店の前の看板に書かれていたのは「大人そば 年齢18歳以上」の文字。
この店は、店主のこだわりが強すぎて18歳以上しか入店できないというそば屋さんなのだ。

店主の藤井さんいわく、「自分のそばが、そば好きな方にどれだけ通用するのか、そこが大きい。“大人の楽しみそば”ということで、18歳以上にさせてもらいました」とのこと。

メニューは、もりそばなどの定番はもちろん、しょうゆにつけて刺身のようにいただく、平べったいおそば「そばさし」。
そして、そば粉を溶いてあずきと合わせたぜんざいと確かに大人なラインアップだ。

こだわりが強すぎるそば屋さんはほかにも。
“ナナメ上な看板”が出るそば屋さん
埼玉・越谷市にある創業約30年の「いしいのそば越谷分店」。

親子2代で営む手打ちそばのお店のこだわりは、そば粉。
店主のふるさとで、“そばの里”と呼ばれる、福島県喜多方市宮古地区で栽培されたものだという。

透明感のある白くて、つややかな十割そばは、滑らかさとコシの強さが自慢だ。
2代目・息子の勇一さんは「同じそば粉を使っても、同じ人が打っても、同じそばにならない。毎日違うそばができてくるのが難しいけど面白いですね」と語る。
そば職人らしい言葉だが、そのこだわりが強すぎて、納得のいくそばが打てなかった時は「本日そば失敗しました」と書かれた看板を出して、問答無用でお店を休みにしてしまうようだ。

「こちらの気がすまないというか。中途半端なものを出してしまうのは、お客様に悪いという気持ちが先に勝つので…」(いしいのそば越谷分店・石井勇一さん)
さらに自分でうまくいったとしても、店主である父親が最終判断をするという。

今のところ「本日そば失敗しました」の看板を出したのは年に2、3回ほど。
食べられる確率「十割」とは行かないナナメ上なそば屋さんだ。
続いては、出前がナナメ上なそば屋さんを紹介する。
ハーレーダビッドソンで出前するそば屋さん
静岡・浜松市にある「お食事めん処 みちる」。
地産地消の食材を使用したそばや料理を提供する、地元では人気のそば屋さんだが、出前の方法がナナメ上だという。
出来上がった料理をかけ、またがったのはアメリカの人気バイクメーカー「ハーレーダビッドソン」。

店主は「乗っていてカッコイイし、楽しい!ハーレーのエンジン音で新規のお客様の家に行っても、お客様が気がついて家の外に出てきてくれる」と話す。
常連客には「『みちる』はハーレーで出前じゃなきゃダメ」と言われるほど地元に定着し、楽しみにしている人がいるという。
“ナナメ上”に進化したおそば屋さん。暑い夏、ツルっと涼しいおそばを食べに行ってみては。
(ノンストップ!『ナナメ上調査団』より 2023年7月18日放送)