いよいよ夏本番。子どもたちにとっては、海や川で遊ぶことができる絶好の機会だ。一方で、気を付けなければならないのが水の事故。海や川には危険も潜んでいる。

2022年、全国で大人も含め727人が水の事故で死亡、または行方不明になっている。山陰では島根で35人、鳥取で20人が水の事故に遭い、16人が犠牲となっている。

悲しい水の事故を減らすため、子どもたちに万一の場合の対応を教える授業を鳥取県内の小学校で取材した。

「命を守る方法」伝える授業

鳥取・米子市の彦名小学校で行われているのは、特別な水泳の授業。子どもたち自らが命を守る方法を学んでいる。

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この日、3年生が学んだのは「海や川に落ちたらどうするか」。現役の消防士や警察官などでつくる鳥取県西部のボランティアチームを講師に招き、服を着たままプールで実践した。

水中で溺れそうな時、まずやってはいけないのは「手を上げること」。岩本さんが子どもたちに問いかけた。

境港サーフレスキューチーム・岩本和貴さん:
もし水に落ちた場合に、手を上げたらどうなるか?

実際に、水面に浮かんでいる人が両腕を垂直に上げてみると、たちまち身体が水に沈んでいった。また、声を出して助けを求めることも、実は命の危険につながる。

境港サーフレスキューチーム・岩本和貴さん:
手を上げて「助けてー」と言ったらどうなるか?

実演してみると、「助けて」と言い終わらないうちに身体が沈んでいった。

境港サーフレスキューチーム・岩本和貴さん:
人間の肺も“浮き輪”です。「助けて」と言って“浮き輪”を縮めたら沈んでいきます

溺れたときは「浮いて待て」

そこで、覚えておきたい合言葉が「浮いて待て」。体力をできるだけ使わずに救助を待つことで、助かる可能性を高める。

ポイントは4つだ。
・手足を広げ大の字に
・大きく息を吸って肺に空気を送る
・手は水面より下に
・靴は履いたまま。素足より浮力が増す

授業では、まずお腹の上にペットボトルを抱いて浮かぶ感覚をつかむ。しばらくすると、小学3年生でも、ほぼ全員が安定して「浮いて待つ」ことができるようになった。体験してみた子どもたちに話を聞くと…。

参加した児童(男子):
意外と簡単でした

――できそうだと思った?

参加した児童(男子):
はい

参加した児童(女子):
最初は不安だったけど、最後はできて良かったです

参加した児童(女子):
これで、海や川に行っても気を付けようって思うようになりました

「浮いて待つ」ことの大切さを実感したようだ。

命を守るため…副署長の願い

今回、出前授業を行った岩本和貴さんは境港消防署の副署長で、この活動を17年続けている。

境港サーフレスキューチーム・岩本和貴さん:
もともと消防で水難救助隊に所属していまして、小さい子どもだったり、溺れて亡くなる方を見てきて、やっぱり、その前に事故を防ごうと

海や川で流されそうになったら、勇気を出して、とにかく「浮いて待つ」ことが、生還につながる“鉄則”だと岩本さんは力説する。

境港サーフレスキューチーム・岩本和貴さん:
流れがあればあるほど、泳ぐと逆に疲れて溺れてしまう。流れに身を任せて、浮いておくことが大事です

授業の最後に、岩本さんが子どもたちに呼びかけた。

境港サーフレスキューチーム・岩本和貴さん:
水に落ちたら?

子どもたち:
浮いて待てー!

子どもたちから、元気良く合言葉が返ってきた。

岩本さんは、1人でも多くの人がこの言葉を覚え、水難事故防止につながるよう、今後も活動していくということだ。
海や川、水辺での遊びが楽しい思い出となるよう、子どもも大人も、命を守る合言葉「浮いて待て」を覚えておきたい。

(TSKさんいん中央テレビ)

TSKさんいん中央テレビ
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