東京・銀座の地下にある、“誰とでも遊べる”バーチャル施設。

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リポート:
投げます。思いっきりいきます。

手には青い丸が表示されたスマホを持っている
手には青い丸が表示されたスマホを持っている

ピッチングフォームを見せる今湊キャスターの手にあるのは、ボールではなく、スマートフォン。

今湊キャスターが投げたボールは、女性のスマートフォンへ
今湊キャスターが投げたボールは、女性のスマートフォンへ

今湊キャスターがスマートフォンのボールを投げる素振りをすると、スマートフォンの画面に映し出された青いボールが、モニターの向こうにいる女性が持つスマートフォンに移った。

これは、リアルとバーチャルを融合させた“XRキャッチボール”の様子。
東京・中央区の「パークラボEXPT.07 キャッチボールは遊びの垣根を超えるのか?」で、7月25日まで開催している。

「窓」と呼ばれるモニターに向かって、スマートフォンのボタンを操作することで、仮想のボールを投げたり、キャッチする。

ゆっくりスマホを動かして投げてみる
ゆっくりスマホを動かして投げてみる

リポート:
今度は、ゆっくりめに行きます。ゆっくり投げるとゆっくり伝わるのが音でわかります。

キャッチの振動がスマホで伝わる
キャッチの振動がスマホで伝わる

リポート:
キャッチすると、スマホから振動が伝わってきます。

音でボールを投げる感覚やキャッチする感覚や速度を再現し、振動でキャッチする感覚を体感できる。

「Sony Park Mini(ソニーパークミニ)」から約220m離れた「ソニーストア銀座」2拠点を結んで、キャッチボールを楽しむことができる。

開発のきっかけは、ワークショップで出会った視覚障害を持つお父さんの“息子とキャッチボールをしてみたい”という思いから。

目を瞑りながら挑戦してみても…。

リポート:
迫ってくるリズムに合わせてボールをキャッチすることができました。目を閉じていても音だけの情報でキャッチボールをすることができます。

相手が投げるスピードに合わせてリズムを刻むため、目が不自由な人でも音を頼りにボールをキャッチできる。

ソニーグループ クリエイティブセンター デザインプロデューサー・反畑一平さん:
“遊び”とか“遊び場”っていうのは、誰もが楽しめるものであるというふうに考えているので、障害のある方もない方も一緒に、その作る過程に少し参加していただくようなことをやりたい。

 “誰とでも遊べる”というところも大事にしたいので、今回は200mですけど、もう地球の裏側、国や地域関係なく、さまざまな方と遊べたらいいなと思う。

新しいテクノロジーを使った“遊び”を通して、“誰もが参加できる、より自由な遊びがある社会のあり方”を考えるきっかけを提供する。

あらゆる事業こそ創業者の期待

「Live News α」では、早稲田大学ビジネススクール教授の長内厚さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
キャッチボールの仮想体験、どうご覧になりましたか。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
今回のXRキャッチボールの一方の舞台となったソニーパークミニは、かつて銀座のソニービルがあった場所です。

ここと200m以上離れたソニーストア銀座のショールームとの間で、仮想のキャッチボールを行う。これは今のソニーという会社を、よく表しているように思います。

堤 礼実 キャスター:
それは、どういうことでしょうか。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
昭和41年、ソニービルは最先端のソニー製品を、実際に手で触れて楽しんでもらえるショールームとして開業しましたが、CBSソニーファミリークラブの通販店舗、ソニープラザ、さらにはフレンチレストラン「マキシムド・パリ」など、さまざまな関連事業を集めた場でもありました。

ソニーはエレクトロニクス製品だけではないことを、消費者にアピールする場だったわけです。この「だけではない」というのは、ある意味、エレクトロニクスがメインであることを示しており、ソニービルの中にあるさまざまな事業が、相互に関係することは少なかったのです。

2022年、ソニーは組織改革を行い、ソニーグループ本社をトップに、エレクトロニクスと並ぶように、エンターテインメントや金融などを並列で位置づけています。

今回のXRキャッチボールには音響、映像、通信、センシング技術など、さまざまなソニーのビジネスが集まって、新しいエンターテインメント体験を提供しています。

これは、エレクトロニクスだけでなく、エンターテインメントや金融も、という今のソニーを示す象徴的な展示と言えます。

変化し続けることが“ソニーらしさ”

堤 礼実 キャスター:
ただ、一方で”ソニーらしさ”が薄れているのではないか、という指摘もあるようですが、いかがですか。

早稲田大学ビジネススクール教授・長内厚さん:
ソニーの創業者の1人、盛田昭夫さんは、65年前に東京通信工業からソニーへと社名変更を行う際に、「いつまで電機産業をやっているかわからない。“ソニー電子”のような社名ではなく、どんな事業をやっていてもいいように、社名を“ソニー株式会社”にした」と言っていました。

何をしても構わない、どんどんと変化していく企業こそ、もともとのソニーらしさなのかもしれません。

堤 礼実 キャスター:
ソニーが培ってきた技術を駆使して、こういった新しい体験を提供することで、社会に何かを考えるきっかけを与えてくれると思いますし、ブランドと人々をつなぐ場所にもなっていくのではないでしょうか。

(「Live News α」7月17日放送分より)