従来の商品やサービスよりも、どれだけCO2の排出を減らしているのかを“見える化”。

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10日、博報堂と三井物産が共同で設立した新会社「Earth hacks」が発表された。

脱炭素社会の推進を目指しているが、その事業内容とは――。

全ての商品につけられている「デカボスコア」
全ての商品につけられている「デカボスコア」

リポート:
こちらには、こういったカバンですとか、いろいろな商品が展示されています。そして、こちらがワインホルダー。この全ての商品に「デカボスコア」というのが記載されています。

“デカボ”とは、脱炭素を意味する英語「Decarbonization(デカーボナイゼージョン)」の略。

「デカボスコア」というのは、従来の製品と比べて、原材料や製造、流通の過程で、どれだけCO2が削減されているかを数値化したものだ。

たとえば、トヨタが作ったIDカードホルダーは、車のシートレザーの切れ端から作ったアップサイクル商品。

新品のレザーで作るのと比べ、CO2の排出量が66%低いということを、スコアで表している。

Earth hacks・関根澄人社長: 
(消費者は)環境とか脱炭素に興味や関心はあるけれど、結局何をしていいか分からない、貢献を実感できないという大きな課題感としてあるなかで、このデカボスコアで分かりやすく“見える化”して、貢献を実感できる。

味の素は、フードロス削減を目指して立ち上げた「捨てたもんじゃない!」プロジェクトの中の40のレシピに「デカボスコア」を取り入れた。

リポート:
こちらの、捨てられてしまいがちなブロッコリーの茎をザーサイ風にアレンジしたもの。

ザーサイに近いシャキシャキとした食感がありますね。青臭さが特になく、味が染みこんでいてとてもおいしいです。

味の素調味料事業部・淡川彩子さん:
食材を美味しく食べきることがフードロスだけではなくて、CO2削減にもつながるということが同じタイミングで訴求できれば、より社会や地球にとって、いいことができるとお伝えしたくてデカボスコアに参画いたしました。

「デカボスコア」は、現在、日本航空やUCCホールディングスなど70社以上が導入し、広がりつつある。

一方で、消費者への「認知度の低さ」が課題になっているという。

Earth hacks・関根澄人社長: 
(目標は)2030年までに約1000社1万アイテム、認知も60%以上というのを3年以内に達成することで、(デカボスコアを)皆さまにとっての当たり前な選択基準になっていくというような世界を作っていきたい。

 “見える化”で企業と消費者をつなぐ

「Live News α」では、一橋ビジネススクール准教授の鈴木智子さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
CO2の排出量などを見える化する試み、いかがですか。

一橋ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
消費者がお店で商品を手にとった際に、体への優しさなどを考えて素材や生産国、食品ならばカロリー表示を気にする方、多いですよね。

同じように地球への優しさ、つまりCO2の排出量を見える化することを、カーボンフットプリントといいます。

企業が商品を作って、運んで、売って、消費者が使って、廃棄やリサイクルに回すまで、まるで足跡をたどるように、それぞれの過程でどのくらいのCO2が排出されたのかを測定します。

ただし、これは企業にとっては手間もコストもかかってしまいますし、消費者からすると、「CO2排出量が何グラムです」といわれても、ピンとこないですよね。

今回のデカボスコアを活用すると、企業は簡単にCO2の排出量が分かり、消費者にも、従来と比べて○○%オフといった、分かりやすい基準を示してくれるなど、カーボンフットプリントが抱えていた、さまざまな課題の解決につながる可能性があります。

SDGsの視点で企業姿勢が問われる

堤 礼実 キャスター:
今、SDGs的な商品やサービスが求められていますから、こういった試みに参加する企業は増えていきそうですね。

一橋ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
企業にとって悩ましいのは、消費者は「地球への優しさ」よりも「お財布への優しさ」などを優先しがちであること。

みんなに欲しいと思わせる商品力がないと売れない。でも、SDGsの視点に欠けていると企業姿勢を問われることになってしまうのです。

そこで、今回の「デカボスコア」は、消費者にエシカルであることを示す目印になっていく可能性があります。そうなると、「デカボスコア」を導入する企業も増えていくはずです。

堤 礼実 キャスター:
今後は、こういったものを目印に、商品やサービスを選ぶ消費者が増えていくといいですね。

一橋ビジネススクール准教授・鈴木智子さん:
カーボンフットプリントは日本語に直訳すると「炭素の足跡」となります。

デカボスコアを活用したエシカルな商品を選ぶことは、自分たちができる小さな一歩だけど、地球にとっては大きな意味のある一歩になるかもしれません。

堤 礼実 キャスター:
環境に優しいことをしたいけれど、どうすれば良いのか分からないという方もいるかと思います。

デカボスコアは1つの指標にもなりますし、長く環境問題と向き合っていくには、こうした分かりやすさや楽しさが必要なのかもしれませんね。

(「Live News α」7月10日放送分より)