子どもの想像力育む「絵本」

ロングセラーから新作まで数ある中から、この夏、親子で読んでほしい3冊を絵本のプロに聞いた。

おはなしユニットロバの耳:
ぽっつんぽつぽつ雨が降る

歌に合わせて体を動かし、ふれあいの時間を楽しむ親子。

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6月、札幌市白石区の「えほん図書館」で読み聞かせのイベントが開かれた。

おはなしユニットロバの耳:
ねずみさんのおっぱいたくさんのんでやさしいこになぁれ。じゃぁこれは?

子ども:
にんげん!

おはなしユニットロバの耳:
やわらかくてあったかいおかあさんのおっぱい

コロナ対策が緩和され、子どもたちが一堂に集まる読み聞かせに元気な声が戻ってきた。

子ども:
たのしかった!カエルがおもしろかった

母親:
うれしいですね、やっぱり。いろんな道具を使って子どもたちを楽しませてくれる。大人としても楽しい

子どもの想像力を育む絵本。 

出版市場で拡大している”児童書”

縮小傾向にある出版市場で、絵本を含む児童書は2013年以降じわじわと拡大している。 

札幌市中心部の書店では、ロングセラーと並んで、クスッと笑える新作の絵本が売り上げ上位にランクイン。

「一番人気があるのが『大ピンチずかん』。お子さまに人気がある。日常的なものからこんなことになるかなというものまでいろいろなピンチがあるので、それが子どもに人気なのだと思う」(紀伊國屋書店札幌本店・工藤由起子さん)

一方、心にそっと寄り添うような温かいメッセージが詰まった「きみのことがだいすき」。

大人がハマる絵本として注目されている。

「お母さんに贈るとしたらオススメです」(紀伊國屋書店札幌本店・工藤由起子さん)

「いないいないばぁ」や「ぐりとぐら」など長年愛されている絵本に加え、毎年登場する新作の数々。

絵本選びに迷ったときに訪れたい専門店が札幌市手稲区にある。

「ちいさなえほんやひだまり」

店主の青田正徳さんは絵本や児童書の営業マンを15年務めたあと、絵本の専門店を始めた。

2023年で29年目。

「毎週、大型書店を回って絵本を買ってくる。じっくり読んでから仕入れている」(ひだまり 店主・青田正徳さん)

1度目はイラストにだけ目を通し、面白そうなら声に出して何度も文章を読むという。

絵本を選ぶ基準は?

選ぶときの基準は3つという。

「一つ目はオリジナリティー。二つ目はリアリティー。三つ目が大事でヒューマニティー。平和につながったり、心がほっこりできるような基準でいいなと思った本がここに並んでいる。2500タイトルになる」(青田さん)

絵本への愛情と知識が、店を訪れる人にとって安心と信頼につながっている。

「こんな本ないですか?と聞くと、青田さんが絵本が大好きだから本が出てこないことがない。なくちゃならない本屋さん」(訪れていた客)

40年以上も絵本一筋の青田さんに、この夏親子で読んでほしい絵本を3冊選んでもらった。

1冊目は、今年2月に出版されたイタリアの絵本「だれのせい?」。

剣の切れ味を試そうと、森の木を切り倒したクマの兵士。 

すると、ダムの水が流れて自分の砦が壊れてしまう。

犯人捜しに出たクマが見つけた思いがけない真実とは…?

「クマの話、環境問題。いろんなことがつながりあって、私たちが地球で生きていることを気づかせてくれる」(青田さん)

2冊目は、クスッと笑える「おおかみのおなかのなかで」。 

物語は、主人公のネズミがオオカミに食べられるところから始まる。 

おなかの中にはなんと、先客のアヒルが…。

「絵が圧倒的に良い。これは面白い。なかなかこういう物語は少ない」(青田さん)

最後は、親子のぬくもりが感じられる「ぴたっ!」。

「素晴らしい絵本。動物の親子がぴたっとくっつく。自分が愛されている実感を声とぬくもりで感じられる。親子でこれをやってほしい」(青田さん)

子どもにとって「楽しみ」そのものであり、心の”栄養”にもなる絵本。

この夏、親子でどんな絵本を読みますか?