対話型AI「チャットGPT」が就職活動でも使われ始めている。

4月14日には、採用管理ツールなどを運用する企業「アローリンク」が、チャットGPTを活用した「AI就活サポたくん」の提供を開始した。

就職活動をサポートするサービスで、主な機能は「ES作成」「ES添削」「適性診断」「就活に関する相談」の4つ。

「ES作成」では、LINEで4つの質問に答えることでエントリーシート(ES)を作成してくれる。アンケート形式で回答するだけだが、「誰でも簡単に完成度の高いES作成が可能」だとしている。

ES添削(提供:アローリンク)
ES添削(提供:アローリンク)
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「ES添削」では、誤字脱字のチェックはもちろん、文章の構成や表現のニュアンスなど、細部まで添削。「適性診断」は、回答フォームに情報を入力することで、タイプ別診断や向いている職業など、多様な情報提供をするという。

最後の「就活に関する相談」は、就職活動中の疑問や不安に、サポたくんが迅速かつ的確に回答するとのことだ。

これらのサービスをチャットGPTと連携したLINEボットにより、24時間いつでもどこでも、しかも、無料で回数制限なく利用できる。

※AI就活サポたくん(提供:アローリンク)
※AI就活サポたくん(提供:アローリンク)

チャットGPTは急速に広まり、いろいろ場面で使われ始めているように感じる。これをESの作成に使うことを、学生はどのように考えているのだろうか? また、就活生が「簡単に完成度の高いESが作成できる」ようになると、採用側の「書類選考」は変化していくのだろうか?

「AI就活サポたくん」を提供する、株式会社アローリンクの担当者に聞いた。

就活生「圧倒的に時間効率が上がった」

――「AI就活サポたくん」を開発した理由は?

就活生の就職活動のプロセスをよりスムーズで効率的にすること、そして彼らが自身の能力を最大限に発揮できる機会を提供したかったからです。

就活は非常に重要でありながらも、困難なプロセスで、多くの学生が自己表現や企業研究、面接対策などで苦労します。特にESの作成は自己PRや志望動機の表現など、自分自身を文字で表現する技術が求められるため、難易度が高いです。そのため、「AI就活サポたくん」を用いることで、自己分析の手助けをしたり、適切な表現方法を提案したりすることで、学生が自己表現のハードルを下げることを目指しました。

さらに、「AI就活サポたくん」は24時間利用可能なので、学生の自由な時間に利用できるという利点もあります。

また、情報収集にもAIは役立ちます。「AI就活サポたくん」は業界知識や過去の面接質問など、広範な情報を提供し、ユーザーが企業研究や面接準備をより効果的に行えるよう支援します。

このように、AI就活サポたくんを開発することで就活生の就職活動を全体的にサポートし、彼らが自己実現を達成するための新たな道を開くことを目指しています。


――このサービスを使ってESを作成した就活生は、どのような感想を話している?

「圧倒的に時間効率が上がった」と聞いています。従来は、先輩のESを参考にしたり、キャリアアドバイザーに意見をもらったりなど、作成に時間がかかっていました。

チャットGPTを使えば、自分に合った精度の高い情報を作る手助けをしてくれるので、面接の練習など、違うところに時間が割けるようになったなどの声をいただいております。

ES添削(提供:アローリンク)
ES添削(提供:アローリンク)

――就活生がこのサービスを使うとき、どのようなことに注意すればいい?

AIの提案や情報は「参考の一部である」ということです。自身の感情や思考、価値観を大切にしながら、それをどのように表現するかをAIと共同で考えていくことが重要です。

また、AIが提供する情報が、必ずしも最新のものではない可能性があります。私たちのAIはトレーニング時の情報に基づいていますが、それ以降の更新情報については理解できません。したがって、最新の業界動向や企業情報については、自分自身で調査し、情報を収集することが重要です。

さらに、AIの言葉遣いや表現方法が自分自身のスタイルと必ずしも一致しないかもしれない点も注意が必要です。自分自身の言葉で表現することは、ES作成の際に非常に重要な側面であり、その点は失われないように、気をつけて利用してほしいと考えています。

書類選考は「必然的に変化」

――就活生がESの作成にチャットGPTを使うこと、どのように受け止めている?

ポジティブに捉えています。ESは、企業が学生のスキル、興味、経験を理解する重要な道具であり、チャットGPTが、その作成過程を支援できると思います。

例えば、思考の整理、自己PRの表現方法の提案、業界知識の参考情報提供など、さまざまな方法で利用者をサポートすることが可能です。


――企業側はESの内容を確認するときに、どのようなことに注意すればいい?

ある意味、チャットGPTを駆使できるくらいの優秀な学生であることも間違いないので、必要以上に気をつける必要はないかと思います。

AIが作ったかどうかを見分ける診断ツールもあるので、それを活用することも、1つの手段にはなると思います。ただ、大前提として、ESだけで合否判断をしないというところが肝心になります。


――就活生が簡単に完成度の高いESが作成できるようになると、企業側の書類の合否判断は変化していくと思う?

必然的に変化していきます。大前提として、ESなどの文面だけではなく、面接などで深掘りを行い人柄や価値観などを、しっかり見極める力が採用担当に必要な力となってきます。

そのため、合格基準や求める学生像(ペルソナ)などの可視化、面接力などを強化していくことをおすすめします。

書類選考のあり方が「変わる可能性がある」

一方で、採用業務にチャットGPTを使っている会社も出てきている。AIを活用したサービスの開発会社「エクサウィザーズ」だ。

どのような採用業務にチャットGPTを使っているのだろうか? また、就活生が簡単に完成度の高いESが作成できるようになると、「書類選考」はどのように変わっていくと考えているのだろうか?

「エクサウィザーズ」の人事責任者で執行役員の半田頼敬さんに聞いた。


――どのような採用業務にチャットGPTを使っている?

現時点では、以下の業務に使っています。

・求人作成業務の採用ペルソナ(自社の求める人材像を定義したもの)の設定やアイデア出し
・スカウト文面(企業から候補者へ直接スカウトを送る、ダイレクトリクルーティングと呼ばれる採用手法において送るスカウトの文章)のたたき台作成
・採用イベントの企画や広報コンテンツの作成
・採用市場や競合調査
・文章校閲や日程の調整などオペレーション業務の効率化
・データ分析

画像はイメージ
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――チャットGPTを採用業務に使うと、どのぐらい、業務の負担を減らすことができる?

現時点では、オペレーショナルな業務やルーチンワークを効率化することによって、より、人間が時間をかけるべき、採用戦略を考えたり、対人コミュニケーションに時間を費やせる時間が増えると考えています。

日々、使い方を試行錯誤している状況ではありますが、10~20%を削減できる可能性があると思います。


――チャットGPTを採用業務に使う場合、どのようなことに気を付ければいい?

「個人情報は入れないこと」、「チャットGPTを信じすぎず、最終の意思決定や、推敲し仕上げるクオリティコントロールは人間が行うこと」です。


――就活生が簡単に完成度の高いESが作成できるようになると、「書類選考」は変わっていくと思う?

「書類選考」という選考手法そのもののあり方が、変わる可能性があると思っています。誤字脱字を含めた国語力チェックや、業界知識の理解、アイデア企画などで優劣がつきづらくなるので、他の選考手法の考案や開発が必要になるかと思います。

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書類選考について、「AI就活サポたくん」を提供する「アローリンク」、採用業務にチャットGPTを使っている「エクサウィザーズ」は共に、「今後、変化する」とみていることが分かった。

ESの作成にチャットGPTなどAIが使われることを前提にした、新たな書類選考の方法を見つける、もしくは、書類選考自体がなくなるということも、近い将来、あり得るのかもしれない。

プライムオンライン編集部
プライムオンライン編集部

FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。