4月に入り、新社会人として働き始める人もいるだろう。
希望の会社で働くための就職活動で難しいことのひとつが、自己PRや志望動機の作成。どう伝えればいいかわからず、履歴書が書けない人もいるのではないだろうか。

こうした中、新卒向けの求人サービス「BLITZCAREER」を運営する「BLITZ Marketing」(東京・渋谷)が3月23日、AIが就活生のプロフィール作成を助ける機能をリリースした。

AIアシスタント(提供:BLITZ Marketing)
AIアシスタント(提供:BLITZ Marketing)
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この機能はBLITZCAREERに「AIアシスタント」として追加。ChatGPTのAPIを活用し、入力したキーワードに沿った文章を数秒で自動作成するという。

志望動機やガクチカを数秒で考える

AIアシスタントの使い方は、BLITZCAREER上でAIチャットを立ち上げ、書いてほしい文章のカテゴリを選んで、キーワードを入力するだけ。

主な利用の流れ(提供:BLITZ Marketing)
主な利用の流れ(提供:BLITZ Marketing)

現時点のカテゴリは「業界志望理由」「将来のビジョン」「学内活動」「就活」の4つだ。

例えば、業界志望理由を選び、キーワードに「デザインが好き」「高校時代は美術部」などと入力すると「私がデザインに興味を持ったのは、私自身がデザインに触れ、自分のデザインで人を感動させたいと思ったからです…」という文章が数秒でできる。

AIが考えた文章例(提供:BLITZ Marketing)
AIが考えた文章例(提供:BLITZ Marketing)

作成された文章には「自分が制作した作品を人々に見てもらうことで、自分の表現力が広がることを実感しました」といった経験談もあり、実際にありそうな内容となっている。

BLITZCAREERの登録者数は約2000人で、AIアシスタントは約2割が既に利用しているという。

ポテンシャルがあっても言語化でつまずく学生がいる

便利そうではあるが、気になるのがAIに任せる形になること。この機能はどのように使い、企業側はどう受け止めればいいのだろう。BLITZCAREERの事業責任者に疑問点を聞いた。


――AIアシスタントの開発経緯を教えて。

就活生が、自分の強みを文章で表現できる「言語化」を支援することが目的です。就職活動において、学生には企業で活躍できるポテンシャルがあっても(エントリーシートなどでの)言語化でつまずき、面接まで進めない方がいます。それはもったいないと思い、学生と企業の接点を促進するツールになればと開発しました。


――カテゴリで作成される文章は何が変わるの?

厳密な部分はお答えできませんが、目的に応じた理想的なアウトプットが実現できるよう、それぞれのカテゴリで(ChatGPTに)事前の指示を出しています。

自力で書いた文章と比較してほしいという(画像はイメージ)
自力で書いた文章と比較してほしいという(画像はイメージ)

――AIアシスタントはどんな使い方が望ましい?

文章能力や自己表現の手本としたり、表現の幅を広げるために活用していただきたいです。お勧めの使い方は、まずは自力で自己PRなどを書き、AIアシスタントでも同じテーマで作成してみる。そして両者を比較してはいかがでしょうか。自分に足りないところが分かり、書き方の参考になります。

そして、大切なのは(作成された文章に)本人の経験や能力が伴っていること。経験していないことをキーワードに入れては意味がありませんし、内容が飛躍していないか精査する必要もあります。

自分のテーマになった言葉、大事な思いを入力してみよう

――キーワードは自由に入力できるが、どんなことを入力すればいい?

まずは自分のバックグラウンドでテーマになった言葉、大事にしている思いを記入してみてください。努力、勝利、友情のような簡単なキーワードでもいいです。詳しく書くなら、努力は「高校時代の部活の経験、逃げ出したかったけどやってよかった」とか、勝利は「英文スピーチの練習の時間が、コンテンスト優勝という経験に変わった」とか、友情は「進路に迷った時、友人の支えがあって立ち向かえた」とか。自分の経験が詰まっていることが大事です。こうした情報を入力すると、AIが言語化してくれます。


――AIだと、作成される文章の内容が似たものになったりはしない?

そうした可能性はありますが、キーワードの選定などで差別化できると思います。利用者には作成された文章をうのみにするのではなく、自身の経験に基づいた表現の参考としてほしいです。企業側は「部活で県何位になった」などの肩書きより、そこに至るまでの情熱でしたり、貢献を会社でどう再現できるのかを知りたいのではないでしょうか。

正しく使わないと面接でボロが出る(画像はイメージ)
正しく使わないと面接でボロが出る(画像はイメージ)

――企業側はAIで書いたと見抜ける?そのまま転用する人もいるのでは?

(AIの文章を)完全に引用したら見抜けると思いますが、結節点などを丁寧に修正すれば難しいかもしれません。ただ、企業の人事担当者は面接で学生の人となり、取り組みを聞かれると思います。そこで精査していただければ問題はないと思います。学生にとっても、AIが書いた内容と実際の経験が乖離していると、よくないと思うはずです。

経歴を誇張したり、書き換えるためのものではない

――AIアシスタントを就職活動に使う上での注意点を教えて。

就活時のポテンシャルを最大化させるためのもので、利用者の経歴を誇張したり、虚偽の情報に書き換えることはできません。そこを勘違いすると、面接には進むけど、不採用の数は変わらないことになりかねません。就活を一つの成長機会として、自分自身と向き合ってほしいですね。


――就職活動でAIの活用が進むとどんな影響が出てきそう?

AIは現時点だと人が行動したり、アクションする過程の中で使われています。今後はどう活用していけばいいか、思考していく時代になると思います。AIの有用性を理解しているか否かといった、採用選考の基準や指標が生まれるかもしれません。


担当者が語るように、エントリーシートだけで採用を勝ちとれるわけではない。
AIにお任せではなく、文章での表現が苦手な学生が、自分の思いや経験をちゃんと伝えられるようにAIの力を借りてブラッシュアップする、というのが賢い使い方なのではないだろうか。

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プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。