幼稚園バスや保育所での給食中の事故などが全国各地で起きている。政府が「異次元の少子化対策」をうたう一方で、今、保育の現場では何が起きているのか、抱える課題はどこにあるのか。愛媛・松山市内の保育所でリアルな声を聞いた。

「大事な命を預るという責任感」

松山市土居田町の保育所「ジャックと豆の木園 どいだ園」。食事をしているのは、生後8カ月の男の子。子どもによって、かむ機能の発達にばらつきがあるため、保育士は、そしゃくや飲み込み具合を慎重に確かめながら離乳食を与えている。

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こちらには、0歳児、1歳児、2歳児の3つのクラスがある。国の基準では、0歳児のクラスの場合、園児3人につき1人の保育士を配置するようになっているが、こちらの園では、その基準より多くの保育士らを配置。0歳児8人を預かるクラスでは、保育士4人と看護師1人を配置している。

ジャックと豆の木園 どいだ園・藤田真寿美園長:
保育も大事ですけど、それ以前に「大事な命を預かっているっていう責任感」は大事にしているところ

保育士を基準より多く配置すれば、その分、人件費もかかる。園が方針を貫いているのは「子どもたちの成長に触れ、働く母親たちをサポート」することへのやりがいと責任感からだ。

事務作業の「ICT化」で負担軽減へ

しかし、全国的に深刻化する保育士のなり手不足は、じわじわと現場を苦しめる。

ジャックと豆の木園 どいだ園・藤田真寿美園長:
先生たちの神経をすり減らしながら、気を使いながら保育をしているのが現状

そんな保育士の負担を少しでも減らそうと、園は独自でさまざまな取り組みを行っている。その1つが、行政に提出する書類作成のサポートだ。

保育士は、子どもたちが帰ったあとも、書類作成などの事務作業があるが、これをICT化することで、時間を効率よく管理し、日中、子どもたちと触れ合う時間をより多く持てるよう工夫している。

ジャックと豆の木園 どいだ園・藤田真寿美園長:
保育士になりたいという学生の方がたくさんいる。その人たちが疲弊しないように、職場環境を、働き方含めて改善していく。国や自治体が、私たち現場の声をもっと聞き入れてくださると余裕が生まれる。そうすると、子どもたちにもゆったり関われる。保護者も安心して預けられる。それが私たちの願いです

「ゆとり」が生まれると子どものための時間が増える

こうした愛媛の保育現場の現状について、専門家は次のような課題を指摘する。

①保育士不足
②専門知識のアップデート
③事務作業の多さ
④子どものための「ゆとり」の確保

松山東雲短期大学 保育科・加納章准教授:
現状としては、やっぱり保育者が少ないよねっていうところと、なかなか研修に行く機会に恵まれない人もいるんじゃないかな

厚生労働省は「質の高い保育を展開する」ため、園に対し「職員の研修機会が確保されるよう努めなければならない」としている。しかし、人手不足で研修に人を参加させる余裕のない園では、保育士が専門知識をアップデートできない現状があるのではないかという。

また、兵庫県などで30年以上にわたり実際に保育士や園長を務めた加納准教授は、保育士の事務作業の多さも課題だと指摘する。

テレビ愛媛・橋本利恵アナウンサー:
保育士が子どもたちと遊んでいたり、保育したりっていうのは全体の一部分で、それ以外の仕事もすごく多いと聞く。余裕がないのは現場でリアルにある?

松山東雲短期大学 保育科・加納章准教授:
例えば「監査」というのがある。ちゃんと保育が行われているか、お金が適正に使われているかどうか、子どもの育ちがちゃんと確保されているかどうかっていうところがあるんですけど、似たような書類を何回も書かないといけないということもあったりするので、ICT化で作業を単純化する方法もある

テレビ愛媛・橋本利恵アナウンサー:
ICT化することで、保育士の先生方の(事務作業の)負担が軽くなる?

松山東雲短期大学 保育科・加納章准教授:
そうだと思います。そこが軽くなると、ほかのことがその時間にできる。子どものための準備であったり、子どものことを語り合う時間に変われば、日常的に子どもたちにうれしいことが増える。子どもたちがうれしいと、やっぱり先生たちもうれしくなりますから

国主導で「ゆとりを生むシステム」の構築を

「ゆとり」の確保、何より、子どもを中心にした「ゆとりある保育」が大切だと言う。

松山東雲短期大学 保育科・加納章准教授:
不適切な保育って言葉が一人歩きしましたけど、なぜそれが起こるのかっていうと、心・時間・空間、いろいろなゆとりがなくなっていた。どこかひとつでもゆとりがあれば、また別のゆとりを生む。現場の先生方が、楽しそうに、ゆとりを持って子どもと関わっている。そのあたりのゆとりを生むシステムを、まず国が主導で動いてくださったうえで、私たち保育関係者もしないといけない、地域もしないといけない、保護者もしないといけない

「子ども」を真ん中に、行政・保育関係者・保護者・地域社会が同じベクトルで進んでいくことが、少子化を打開していくうえで大切なポイントになるのではないだろうか。

(テレビ愛媛)

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