1億3千万人分のビッグデータを活用して、食べられずに捨てられるものもある“未利用魚”の販売促進を目指す。

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Tカードを運営するカルチュア・コンビニエンス・クラブは、処理に手間が掛かったり、食べる文化がないなどの理由で、市場に出まわらない“未利用魚”を使った商品の販売を始めたと発表した。

例えば、小骨が口にあたるなどのため、値が付かないという「コノシロ」と呼ばれる魚を使った煮物「コノシロやわらか煮(税込み474円)」は、千葉・船橋市の漁協などと協力して開発したものだ。

骨が多い部分も柔らかく食べやすい「コノシロやわらか煮」
骨が多い部分も柔らかく食べやすい「コノシロやわらか煮」

リポート:
いま、骨が多い部分を食べたはずなんですが、全く気にならないほど柔らかいです。

1億3千万人分あるTカードのビッグデータを、味や商品パッケージの開発に活用したとしていて、今後は販売先を順次拡大していく予定。

魚の廃棄減少が漁業活性化の近道に

「Live News α」では、マーケティングアナリストの渡辺広明さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
私たちが知らなかった美味しそうなお魚、実はたくさんあるんですね。

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
国連の関連機関の調査によると、世界で水揚げされた魚の35%は、消費者に届くことなく廃棄されている。

廃棄の理由については、サイズの問題で売れない、漁獲量が少ない、もしくは獲れすぎた、さらには加工や鮮度管理が難しい、などがある。

食べられるのに捨てられてしまう魚”未利用魚”を活用する取り組みは、新しい食材が開発されたのと同じ意味を持ち、厳しい環境に置かれている日本の漁業が元気を取り戻すことにつながればと思う。

堤 礼実 キャスター:
水産業の危機、これはもっと考えないといけないですよね。

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
日本の漁業の生産量は1984年のピーク時と比べて、3分の1にまで減少している。

水揚げ量の減少により漁師さんの収入も減ってしまい、後継者不足が深刻化して、漁業従事者の平均年齢は56.9歳になっている。

この水産業の担い手不足が、水揚げ量の減少を加速させている面もある。

こうした悪循環から抜け出すためには、漁獲量の向上に力を入れるよりも、今回の取り組みのように、廃棄されていた魚を食べる機会を増やした方が、課題解決への近道のように思う。

海洋国家としての開発で輸出の可能性も

堤 礼実 キャスター:
今回の取り組みが成長していくためのポイントは。

マーケティングアナリスト・渡辺広明さん:
約1.3億人のTカード会員の中から、エシカルフードに関心がある会員をピックアップして、この取り組みに参加していただく開発スタイルは、これまでにない新しさがある一方、思わぬ課題などがあるかもしれないが、走りながら改良を加えていくことが可能になる。

また、商品の4Pといわれる「価格・流通・販促・戦略」についても、Tカードのビッグデータを使えるため、”精度の高い”消費者が支持する、さらなる商品開発につながりそう。

中国など新興国との食材の買い負け、さらには、グローバル物流の混乱など、食の環境が厳しくなっている。

海洋国家である日本の水産業の活性化は、食の安全保障にもつながり、ひいては冷凍技術の発展により、海外輸出への可能性も秘めている。

堤 礼実 キャスター:
こうした取り組みによって、漁業を支えるだけでなく、海洋環境の保全にもつながります。美味しいお魚を食べながら、海の未来を守ることができるなんて素敵ですよね。

(「Live News α」7月5日放送分より)

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