外国為替市場で円安が進むなか、政府から市場をけん制する発言が相次ぎ、円を買い戻す動きも見られた。

この記事の画像(8枚)

26日の週明けの外国為替市場の円相場は、日米の金融政策の違いなどを背景に、一時1ドル143円70銭前後まで円安が進んだ。

これに対して財務省の神田財務官が朝、「足元の動きは急速で一方的」などと述べ、投機的な動きをけん制したが、市場への影響は限定的だった。

しかし夕方、松野官房長官は円安について「行き過ぎた動きに対しては適切に対応する」と発言。

その後、市場が反応し、一時1ドル142円90銭台まで円が買い戻された。

26日現在の円相場は、1ドル143円55銭~56銭、1ユーロ156円57銭~58銭の値で取引されている。

口先介入・為替介入ともに時間稼ぎ

「Live News α」では、市場の分析や企業経営に詳しい経済アナリストの、馬渕磨理子さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
進む円安に対するけん制の発言、どうご覧になりますか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
いわゆる「口先介入」を始めたようですね。為替が急速に動くのは影響が大きいため、その安定を図るのは、財務省の役割の一つです。

財務官が為替について言及したり、これから為替介入をするかもしれない、と「匂わせる」。これが「口先介入」です。

さらに、為替介入には、もう一つ、本気でお金を使って動かす「為替介入」があります。

2022年のことを思い出していただくと、9月の日銀金融政策決定会合後に、146円に向けて急速に下落すると、日本は円買い・ドル売りの為替介入に踏み切り、さらに10月にも再び介入しています。

ただ、「口先介入」も「為替介入」も効果は一時的で、すぐに円安の水準が元に戻ってしまうのは過去の経験が示しており、一時的な時間稼ぎでしかないのです。

堤 礼実 キャスター:
そもそも、なぜ、いま円安が進んでいるのでしょうか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
いま先進国の中で、日本だけが低金利・マイナス金利政策を取っています。

そのため、金利の低い日本の円を売って、金利の高いドルやユーロなどを買う動きが加速して、現在の円安を招いているのです。

そもそも欧米が利上げを行っているのは、物価高をおさえようとしているためです。

2023年は、世界に気候変動をもたらす「エルニーニョ現象」が4年ぶりに発生しています。これによって穀物価格などが高騰し、インフレが思ったよりも落ち着かないのでは?とも懸念されています。そうすると、各国の利上げも苦戦し、円安が長引く可能性があります。

140円台半ばで「悪い円安論」再燃か

堤 礼実 キャスター:
今後の為替の行方については、いかがですか。

経済アナリスト・馬渕磨理子さん:
2022年12月に、当時の黒田日銀総裁が、日本の長期金利の上限を引き上げたことで、その後、127円台まで円高が進みました。

ただ、黒田総裁の頃と違って、今は「悪い円安論」をあまり聞きません。

これは現在の株高に加え、経済が再開へと歩み出したこと。さらには意外と「円安」水準への慣れが影響しているかもしれません。

今後、為替が140円台半ばに向かうと「悪い円安論」が再燃しそうです。すると、日銀としても長期金利の引き上げも視野に入ってくるはずです。

堤 礼実 キャスター:
通貨としての円の価値がどう変わるかで、食料品の価格や電気やガスの料金などにも影響がありますよね。

この為替がどこに向かうのか、注視していきたいです。

(「Live News α」6月26日放送分より)