東京電力・福島第一原発で進む、処理水の海洋放出に向けた海底トンネルの工事。6月26日には一連の工事が完了し、海洋放出への動きが大詰めを迎えた。国と東電が”夏ごろ”とする放出時期が近づくなか、漁業関係者は不安を募らせている。

海洋放出への一連の工事が完了

国と東京電力は、福島第一原発に溜まる処理水を2023年夏ごろまでに沖合1キロの地点から海に放出する計画。東京電力の担当者は27日午前「ALPS処理水希釈放出設備等の実施計画に基づく工事が完了し、使用前検査の準備が整ったという判断をしております」と説明した。

掘削機の引きあげも完了 6月27日までに使用前検査の準備が整う
掘削機の引きあげも完了 6月27日までに使用前検査の準備が整う
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また、6月12日から行われていた「放射性物質を含まない水」を使った設備の試運転も、26日夜までに終了し、東京電力は「設備に問題はなく、放出に関わる設備の工事は完了した」とした。

東電「設備に問題はなく、放出に関わる設備の工事は完了」
東電「設備に問題はなく、放出に関わる設備の工事は完了」

工事の完了を受けて、原子力規制委員会による設備の使用前検査が6月28日から3日間行われる予定で、この検査で「合格証」が得られれば設備は使用できる状態になる。

6月24日に行われた原子力規制委員会による視察
6月24日に行われた原子力規制委員会による視察

”夏ごろ”の放出へ大詰め

6月26日には、海底トンネルの掘削機の引きあげ作業が行われた。東京電力・福島第一原発の沖合1キロに浮かぶ巨大なクレーン船。船の上には赤茶色のサビに覆われた四角い箱が置かれていた。そして、コンクリート製の構造物も。

6月26日 海底トンネルを掘削した機械を引き上げる
6月26日 海底トンネルを掘削した機械を引き上げる

海底トンネルを通して、沖合1キロの地点から処理水を放出するという国と東京電力の計画。船の停泊場所は、海底トンネルの出口・放出口のほぼ真上にあたる。

海底トンネルを通し沖合い1キロから処理水を放出
海底トンネルを通し沖合い1キロから処理水を放出

海底トンネルを掘り進めた機械は、予め放出口に設置しておいた箱に収容。この箱ごとクレーンで引きあげた。

クレーンで掘削機が入った箱ごと引きあげる
クレーンで掘削機が入った箱ごと引きあげる

さらに、土砂などが入り込むのを防ぐためカバーの設置作業を開始。これが、クレーン船の船上に置かれていたもう一つの構造物だった。

掘削機を引きあげたらカバーを設置
掘削機を引きあげたらカバーを設置

東京電力は26日午前の会見で「上蓋の設置が完了して固定まで終われば、基本的に海側の作業は大きな作業は終わる」と説明。26日午後4時前には放出口カバーの設置が完了した。

海洋放出の計画イメージ
海洋放出の計画イメージ

東電 報道陣に設備を公開

大詰めを迎えている海洋放出設備の設置工事。6月26日、東京電力は処理水の海洋放出に関わる設備を報道陣に公開し、トラブルに備えた設備や緊急時の対応などを紹介。「人間も機械もミスがあるものと思い、大丈夫と過信せずに対応を進めていく」と説明した。

海洋放出に関わる設備を報道陣に公開
海洋放出に関わる設備を報道陣に公開

説明をされても…拭えぬ不安

備えや安全性について、政府や東京電力が説明を重ねても、漁業関係者は不安を解消できずにいる。政丸漁業の志賀金三郎代表は「政府が“完全にやりますよ、心配はいらないよ”って言っても、漁業者は信用出来ないんですよ。工事があそこまで進んでは。何で漁業者の話を聞かないでやるのかなって」と語る。

政丸漁業の志賀金三郎代表
政丸漁業の志賀金三郎代表

「常磐もの」を代表するヒラメやメヒカリをとる底引き網漁は、7月から2カ月間禁漁となる。次の解禁日は9月1日。それまでに処理水の海洋放出が始まった場合、待ち遠しい「解禁」の先には風評被害が待っているのではないかと心配している。

待ち遠しい漁解禁の先には風評被害が待っているのでは…
待ち遠しい漁解禁の先には風評被害が待っているのでは…

明確な時期と約束への評価は

海底トンネルは数日間の試運転を終えれば工事が完了、6月28日には原子力規制委員会が最終的な検査を始める。設備面の準備が整う時期は見えてきたが、見えていないのが政府と東京電力が「2023年夏頃まで」という、海洋放出の開始がいつを指しているのか?そして「関係者の理解なしにはいかなる処分も行わない」という条件に対する現状の評価は?

「夏ごろ」とはいつ?「理解なしには…」は達成できているのか?
「夏ごろ」とはいつ?「理解なしには…」は達成できているのか?

曖昧なままにせずに、しっかりと説明することが信頼を得る近道ではないか。

(福島テレビ)

福島テレビ
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