世論調査は「岸田下げ」一色
通常国会が閉会した。岸田首相は夏に内閣改造と党役員人事を行い、秋の解散のチャンスを狙うらしい。政局秋の陣だ。だが先週「解散カード」をちらつかせた末に、自分から引っ込めてしまった首相に解散する力はまだ残っているのか。
週明けのメディア各社の世論調査結果は「岸田下げ」一色だった。内閣支持率はFNN・産経と朝日がともに4ポイント下落、共同は6ポイント、毎日は12ポイント下落だった。
この記事の画像(4枚)マイナンバーカードのトラブルや息子のスキャンダルなどが理由として挙げられているが、実はLGBT法案を米国の圧力で拙速に通したことや、政策が違うのに選挙協力のために行っている公明党との連立への不満が保守派の自民離れを招いているのではないか。
それより気になったのが終盤国会で見えた岸田氏の「弱気」だった。「解散は考えていない」と繰り返していた岸田氏が13日に突如「情勢を見極めたい」と述べた時、永田町では誰もが「解散か?」と考えた。そこまでは良かったのだが、なぜか2日後には解散を「考えてはいない」と宣言してしまった。
「伝家の宝刀」の使い方が悪い
あのタイミングで言ってはダメなのだ。野党が不信任を出した後、「岸田どうする?」と皆がが固唾をのむ中、おもむろに「今回は....。やめとくわ。」と切り出さないとダメなのだ。もちろんいつまでも引っ張ると自治体などに迷惑がかかるのだが、やはり一度抜いた「伝家の宝刀」をすぐに鞘に納めてはイカン。
ということで広島サミットの成功で岸田氏が手にした解散カードは威力が少し弱くなったような気がする。で、問題は秋の解散なのだがやるとしたら9月末か10月上旬。支持率は回復しているのだろうか。
野党を見ると、先日小沢一郎氏ら立憲の議員が野党候補の一本化を求めたが、維新や国民は応じない構えだし、立憲自身も執行部は共産との協力に後ろ向きなので、現実的には難しいだろう。
むしろ自民にとって怖いのは維新だ。勢いはあるが準備が進まない維新は、今回の岸田氏の解散先送りを歓迎している。早速自民の河村建夫元官房長官の長男で秘書官を務めた建一氏が維新からの出馬を検討していることがわかった。
河村氏は、選挙に出たいが自民では選挙区がない。一方の維新は、票はあるが候補者がいない。これはうまくマッチすれば双方ウインウインになる可能性がある。他にも自民系の落選中の議員や新人で維新から出馬するかどうか悩んでいる人を僕は何人か知っている。
下手な解散は岸田おろしを誘発
維新の選挙準備が進んだ時に、支持率があまり芳しくなければ岸田氏は解散できないのではないか。無理に解散しようとすると「岸田おろし」も起きかねない。
ただ岸田氏にとって幸いなことに、ポスト岸田は茂木敏充幹事長、河野太郎デジタル相、高市早苗経済安保相、林芳正外相と、実力者は並ぶものの決め手を持つ人はいない。また株価や物価など経済指標も悪くない。
だから「無理な解散」さえしなければ岸田氏は「いい首相」だ。衆院の任期まであと2年3か月。岸田氏は結構ギリギリまで解散せずに首相を続けるというのは「あり」だと思う。4年間フルに首相としての仕事を全うして最後は引く、あるいは自分の考えを示して信を問うというのは結構カッコいいのではないか。
【執筆:フジテレビ上席解説委員 平井文夫】