気温が高くそして日差しが強くなり、プールを楽しめる時期がやってきた。

コロナが緩和され、プール授業が再開した学校もあることだろう。しかし、夏になると紫外線が多くなり、気象庁のデータでは7月~8月は年間で最も紫外線の強さがピークを迎えるという。

紫外線を浴びすぎると、シミやしわができやすくなるなどの肌トラブルとなる可能性も。場合によっては皮膚がんの発症リスクを高めるといった話も耳にする。

(イメージ)
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そんな中、子どもの紫外線対策はどうするのか? 学校によっては「プールが汚れてしまうから」「水に油が浮くから」などの理由で、プールでの日焼け止めクリームの使用を禁止しているところもあるという。ネット上でも使用を巡って議論を呼んでいる。

日本学校保健会の「学校における水泳プールの保健衛生管理」の調査では、「日焼け止めクリームの使用を許可している学校は40~53.9%と、日焼け止めクリームに対する理解が広まってきています」としている。また、耐水性の日焼け止めクリームを使用してもプールの水質が汚濁されないとの報告もあるそうで、「日焼けしやすい児童生徒や光線過敏のある児童生徒には、日焼け止めクリームを使用させてください」としている。

小児期の紫外線対策は大変重要

では日焼け止めクリームを塗るとしたら、どんな部分を重点的に塗る必要があるのだろうか?また、クリームの他にも日焼け対策はあるのだろうか?プールなどの水遊び以外での対策も気になる。

大阪医科薬科大学・医学部皮膚科学の森脇真一教授に、“子どもの紫外線対策”について教えてもらった。


ーーそもそも紫外線を浴びすぎることで、子どもにはどんな影響がある?

ヒトは一生に浴びる紫外線量の50%以上を18歳までに浴びます。特に小児は皮膚が薄く、細胞分裂が旺盛なため、紫外線が浸透しやすく皮膚のダメージが蓄積しやすいと言われています。

マウスによる実験では、年寄りよりも若いマウスの方が、紫外線に対する感受性が高く、皮膚の中にダメージがたまりやすいという結果が出ております。また、ヨーロッパ出身の子による皮膚がん疫学調査では、紫外線が強いオーストラリアに移住した子の方が、ヨーロッパに在住していた子たちよりも皮膚がんができやすいという結果もありました。

紫外線は皮膚の老化を早め、皮膚がんのリスクを高める可能性があります。特に顔は紫外線を浴びやすいので影響の進行が早いです。そのため、小児期の紫外線対策は大変重要になってきます!


ーープールなどの水遊びの際に、日焼け止めクリームを使用することに対してはどう思っている?

日焼け止めクリームは使用するべきです。ウォータープルーフ(水に触れても取れにくい)を使用すれば水質への影響は少ないです。

他にも、プールの外ではテント下ですごす。光線過敏症では紫外線を浴びる面積を減らすラッシュガードなども有用です。プールの授業の時間の工夫(紫外線が強い時間帯である12~14時は避けるなど)も重要です。

日焼け止めクリームを塗る際のポイント

ーープールなどの水遊びに関係なく、日焼け止めクリームを塗る場合どんな部分に気をつけるべき?

顔、耳、首のうしろは日ごろから紫外線の影響を受けやすいので特に重点的に。朝に塗っても昼には効果が弱まるので、2度塗りすることも大切です。

また、適切な量を塗ることも重要です。日本人に対する調査では適切量の50~70%しか塗れていないという結果もあります。量が少ないと紫外線を阻む効果を発揮できないため、塗る量にも注意してほしいです。

日焼け止めクリームを塗る際のポイント
日焼け止めクリームを塗る際のポイント

大人も皮膚の老化・がんのリスクが高まる

ーー屋外活動をする際にするべき紫外線対策は何?

散歩や買い物などの日常生活で使用するのか、炎天下での運動やリゾート地でのレジャーで使用するのか、といった活動内容や場所。そして、塗っても目立ちにくいものや落ちにくさ、耐水性といった利便性や機能性など、そのときの状況に応じた日焼け止めの適切な使用をしてください。

他にも、帽子、サングラス、日傘、薄い長袖などを使っての物理的遮光。日陰を探して移動する。その日の紫外線の強さを知る(気象庁HPにて情報が毎日出る)ことも重要です。

屋外活動での紫外線対策
屋外活動での紫外線対策

ーー屋内にいても対策は必要?

窓際は紫外線にさらされており、窓を閉めていてもUVA(紫外線の1つ)は透過します。そのため何年も蓄積すれば紫外線のダメージが生じてきます。UVカットフィルムあるいはカーテンを設置するなどして対策をするといいでしょう。


ーー逆に紫外線の避けすぎは大丈夫なの?

ビタミンD不足が生じる可能性があります(ビタミンDは骨の代謝を維持したり、発がんの抑制、感染症の予防などに効果がある栄養素)。

しかし、健康的な食事をとっていれば少量の紫外線でもビタミンD値は正常に保たれますので、避けすぎるという心配はないと思います。


ーー大人も紫外線対策は大切?

ヤケドのような紫外線曝露後炎症(赤くなったり、皮がむけたり、重傷の場合は水疱ができたり)が起これば、その症状の程度・回数に比例して皮膚の老化、がんのリスクが高まっていきます。また、免疫力も下がるため風邪などを引きやすくなるといった影響も考えられます。

相当まれなことですが、人によっては飲んでいる薬の影響で、紫外線によるアレルギー反応により皮膚が赤くなったり、発疹や腫れが出たりといった外因性光線過敏症を引き起こす場合あります。そういった理由から、20歳以降でも紫外線対策は必要です。

日本人の肌タイプ
日本人の肌タイプ

なお、森脇教授によると、人によって紫外線に対する肌の反応は異なり、日本人には3種類の「肌タイプ」があるという。

すぐに赤くなるがあまり色が付かない「I型」。赤くなり色が付く「II型」。そして、赤くなりにくく肌がすぐに黒くなる「III型」。I型、II型、III型の順で、紫外線による老化やがんのリスクは高くなっていくのだそう。「自分がどの肌タイプなのかを知り、紫外線の対策を意識することがまずは大事」ともは話していた。

健康を守るために、子どもの頃から紫外線を意識し、しっかりと対策を講じる必要がある。その上で紫外線の強い夏を楽しんでほしい。

(イラスト:さいとうひさし)
(出典:公益財団法人日本学校保健会「学校における水泳プールの保健衛生管理 平成28年度改訂」)

プライムオンライン編集部
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FNNプライムオンラインのオリジナル取材班が、ネットで話題になっている事象や気になる社会問題を独自の視点をまじえて取材しています。