「異次元の少子化対策」を掲げ動き出している政府。自治体によっては、それを待たずに独自の子育て支援を打ち出しているところもある。待ったなしの少子化対策、現状を取材した。

出生数が過去最少 政府は「異次元の少子化対策」

2022年に全国で生まれた赤ちゃんの数は、「77万747人」。前の年より4万人以上も減少し、1899年に統計を取り始めて以来、最も少なくなっている。

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岸田文雄首相(6月13日):
少子化は我が国の社会、経済全体に関わる問題である

異次元の少子化対策に向け、政府は児童手当の拡充などを盛り込んだ「こども未来戦略方針」を閣議決定している。

出産祝い金を拡充 「子どもが将来の町を支える」

5月のある日、地元で農業を営む大久保夫妻と2023年4月に誕生した翔絃(かいと)くんが、玉名郡和水町役場を訪れた。

出生数の減少が続く和水町では、4月からこれまでもあった出産祝い金を拡充していて、子どもの数に応じた金額を設けている。第5子以降には100万円と、手厚く設定されている。

翔絃くんは大久保夫妻にとって第4子となり、70万円の祝い金が贈られた。

大久保勝博・茜さん夫妻:
国に先駆けていろいろしてくれてありがたい

他にも小・中・高校入学時の祝い金も新設し、「切れ目のない支援」で若い世代の定住促進を図る。

和水町・石原佳幸町長:
全国的な少子化、人口減少が続く中で、和水町は特にスピードが進んでいて子どもの数が激減している状況なので、少しでもお手伝いができればと、子どもたちが将来の和水町を支えて頂くと思っているので、子どもたちへの投資は町への投資だと考える

小学校入学祝いにランドセル 男性の育休取得促進の取り組みも

一方、山鹿市では、小学校の入学時に入学祝いと子育て負担の軽減を目的に、市内全ての子どもたちにランドセルを贈っている。その数は市内8つの小学校で約400人に上る。

山鹿市教育委員会・佐藤誠記教育部次長:
「大切に使います」「ありがとうございます」という声が返ってきますし、保護者からも「大変助かります」と声を頂いているところです

2023年で20年目。これまで赤と黒の2色だけだったが、今後は別の色も検討している。

山鹿市教育委員会・佐藤誠記教育部次長:
市民に喜ばれる政策として実施。人口減少対策、それから子育て支援としてこういったものを充実させながら、山鹿に住んでいただけるような、そういう配慮をしていく

また、玉名郡長洲町では、男性の育休取得の取り組みを2022年度から始めている。
子どもが1歳2カ月になるまで通算5日以上の育休をとった男性に対して、1日あたり5,000円、最大で10万円が交付される。

2022年度の出生数は85人。23件の利用があり、4人に1人が利用したことになる。

長洲町子育て支援課・大賀留美課長:
「仕事と家事育児の両立の大変さを痛感した」とか「子どもと触れ合う時間が増えた」とか、「子どもの成長を感じることができたから良かった」という風な声が(父親から)聞かれました

長洲町子育て支援課・大賀留美課長:
今、共働き世帯も多いので、そういった家庭が安心して子育てができる環境の整備につながればと思っています

「全ての子どもの保育料無償化」「修学旅行費用を補助」

2022年度の出生数が5年前と比べて約3割に減っている八代市では、段階的に広げてきた保育料を全ての子どもたちに対象を広げた。

八代市 こども未来課・橋口伸一課長:
令和5年9月から全ての子どもの保育料を無償化する

八代市 こども未来課・橋口伸一課長:
出生数が減少する中、新たな子育て支援策に早急に取り組む必要がある。無償化の対象を広げることで、出産後の経済的な不安を抱えることなく、保育所を利用しやすい環境を整えることになります

県内14市では初めての取り組みで、2023年4月時点で1,006人の子ども、950世帯が新たな対象となる。

また、阿蘇郡産山村は修学旅行の費用を補助する。

産山村・市原正文村長:
「産山に転入したい」「ここで育てたい」「この自然環境の中で育てたい」という思いが1人でもいてくれたらいいな

村内の小中一貫校「産山学園」には現在、児童生徒合わせて95人が在籍している。
村では、2023年度から修学旅行にかかる費用を約8割の補助を決定。これにより家庭が負担する金額は、6年生は5,000円、中学2年の8年生は1万円となる。

産山学園・岩根元副校長:
児童・生徒が少ないので、対象学年の人数が毎年多かったり少なかったりで、結局、(家庭の)負担額が違っていた。そういう心配もなくなり、安心して計画が立てられる

このほか、高森町でも修学旅行費の全額補助に向け、関連予算を今議会に計上している。
537万円を今議会に計上していて、可決されれば6年生は3万円、中学2年生は7万5,000円が全額助成されることになる。

他の自治体でも医療費の無償化の対象拡充、給食費の無償化など…、いずれも予算を確保し、地域の実情にあった子育て支援策を打ち出している。

望まれる対策は…「保育園に入りやすい環境を」

どのような少子化対策、子育て支援策を望むか街で尋ねたところ、「(大学の)授業料を減らしてほしい」「お金の支援とか保育園が入りやすかったりするといいな」「私の具合いが悪い時とかに、すぐに預けられる保育施設があれば」「(育休を)男の人が取りにくい所があるので、取りやすい環境があれば」「教育費とか、ある程度貯金ないと不安かな」など様々な声が聞かれた。

少子化対策は、待ったなしとなっている。

(テレビ熊本)

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