6月16日の参議院本会議で可決・成立したのが、「性的マイノリティー」いわゆる性的少数者への理解を深めるための法案「LGBT理解増進法案」だ。理解が進むことが期待されるが、レズビアンを公表する女性は「理解はしなくていいから差別はしないで」と訴える。

人口の8.9%がLGBT

「LGBT」は4つの言葉の頭文字を組み合わせたもの。女性の同性愛者、レズビアンの「L」。「G」はゲイで男性の同性愛者。「B」はバイセクシャル、両性愛者。そして「T」はトランスジェンダー、出生時に割り当てられた性別と性自認が一致しない人のこと。日本のLGBTの割合は、人口の8.9%という民間の調査結果も出ている。

出典:電通ダイバーシティ・ラボ「LGBTQ」調査2020 
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婚姻相当の関係と公認する制度

いま全国の自治体で増えているのが「パートナーシップ制度」の導入だ。同性のカップルなどを婚姻に相当する関係であることを自治体が公的に認める制度で、2015年に東京都の渋谷区と世田谷区で施行されたのを皮切りに、現在は300を超える自治体が導入した。

「パートナーシップ制度」現在は300を超える自治体が導入
「パートナーシップ制度」現在は300を超える自治体が導入

制度創設に向け福島県でも動き

6月15日に開かれた福島市の6月定例議会。「パートナーシップ制度」の創設に向けた陳情が採択された。「誰もが人権を尊重され、自分らしく生きられる福島市を実現するために、一日も早く取り組みを進めてほしい」と市内団体から出されていた陳情だ。

福島市6月定例議会「パートナーシップ制度」の創設に向けた陳情が採択
福島市6月定例議会「パートナーシップ制度」の創設に向けた陳情が採択

新日本婦人の会・福島支部の鈴木眞紀子事務局長は「ほっとしました」と話し「いろいろな事情や状況を抱えた方たくさんいますので、そういう人たちが安心してこの福島市で生活ができるように、今回の陳情したものについて進めて行ってほしいなと思っています」と語った。

新日本婦人の会・福島支部の鈴木眞紀子事務局長
新日本婦人の会・福島支部の鈴木眞紀子事務局長

パートナーシップ制度について福島県内の議会で採択されるのはこれが初めて。福島市の対応が注目される。

福島県内の議会で採択されるのはこれが初めて 
福島県内の議会で採択されるのはこれが初めて 

茨城県では、2019年7月に都道府県として初めて「パートナーシップ制度」を導入。それが「いばらきパートナーシップ宣誓制度」で、5月末時点で89組が登録している。

茨城県では2019年7月に都道府県として初めて導入
茨城県では2019年7月に都道府県として初めて導入

登録者には受領カードが交付され、これを利用することで医療機関での手術の同意や面会、携帯電話の家族割の対象にもなる。また、生命保険の受取人をパートナーに指定することができる。
一方で課題もあり、その自治体でしか効力を発揮しないため、引っ越した場合、制度を導入していない自治体では適用されない。

課題は登録した自治体でしか効力を発揮しないこと
課題は登録した自治体でしか効力を発揮しないこと

「理解しなくていい差別はしないで」

茨城県でパートナーシップ制度に登録した一人に話を聞いた。水戸市に住む滑川友理さんは、レズビアンを公表している。

滑川友理さんは「選択したものでない、自分で変えられないことを”気持ちが悪い”とか”将来そんなんじゃお先真っ暗だぞ”とか”親不孝が”とか。自分には価値がないんだっていうので、毎日毎日消えたい死にたい、そればっかりの学生生活後半だったかな」とこれまでを振り返る。

茨城県でパートナーシップ制度に登録 水戸市に住む滑川友理さん
茨城県でパートナーシップ制度に登録 水戸市に住む滑川友理さん

「LGBTを含むすべての人がよりよく暮らせる社会」を目指して、NPO法人を立ち上げた。茨城県がパートナーシップ制度を開始したその日に、パートナーの女性と登録した。

提供:NPO法人 RAINBOW茨城
提供:NPO法人 RAINBOW茨城

滑川友理さんは「私のパートナーが、自身の家族にカミングアウトしていなかったんです。パートナーシップ宣誓制度をとってから、それを根拠に家族に涙ながらカミングアウトに行ったと。何より二人の関係を証明するものがあるっていうのは、うれしく思っています」と話す。

提供:NPO法人 RAINBOW茨城
提供:NPO法人 RAINBOW茨城

国の動きについても「理解はしなくていいけど、差別はしないでねって。傷つける行為は、意識すれば今すぐやめられる。時代が変わるときって、やっぱり議論が生まれることは承知の上なので、この議論が無駄にならないことだけは願っています」と語った。

傷つける行為は、意識すれば今すぐやめられる
傷つける行為は、意識すれば今すぐやめられる

覚えておきたい2つの言葉

それは「カミングアウト」と「アウティング」
まずは自らの意思で他人に伝える「カミングアウト」これは当事者にとって勇気のいる行動。カミングアウトされたら本人の気持ちをしっかり受け止めるようにしよう。

覚えておきたい「カミングアウト」と「アウティング」
覚えておきたい「カミングアウト」と「アウティング」

一方で「アウティング」は本人の許可なく第三者に暴露すること。アウティングは重大な人権侵害、自殺に追い込まれたケースもある。悪意がなくても絶対にしてはいけない。
性的少数者が偏見や差別されることがない社会の実現は「誰か」ではなく「一人一人」の関わり方が求められる。

(福島テレビ)

福島テレビ
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