6月15日は今年度になって初めての年金支給日。実は、今回から支給額にある変化があった。

年金額アップも実は目減りしている

今年度初の年金支給日、もらった方々に話を聞いた。

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90代男性:
ちょっぴりだよ、上がったんだよ。

年金の支給があった男性に通帳見せてもらうと、2カ月分で前回よりも5000円ほど多く支給されていた。

80代女性:
ちょっと上がってましたね。年金で生きてるわけですよある意味。だから少しでも上がれば、ラッキーだと思います。

80代男性:
上がったら上がったでうれしいよ。女房とぼくで年金暮らしだもん。だから2人合わせないと生活できない。物価の値上がりの方が早い。年金はそんなに上がんない、キツイですよ。

70代女性:
1カ月にすると3000円くらい、3500円ぐらい(上がった)。上げていただいた方がうれしいですけど、若者たちはもっと苦しいだろうなと思うので。

榎並大二郎キャスター:
複雑な声もありましたが、年金支給日2カ月分だから皆さん嬉しそうな表情もありましたね。

宮司愛海キャスター:
今年度の年金支給額は、会社員などが加入する厚生年金では、67歳以下の夫婦2人のモデル世帯で、ひと月あたり4889円増えました。

というのも、年金の支給額は、物価や現役世代の賃金をもとに変わる仕組みになっているからです。

これまで何度も歴史的な物価上昇についてお伝えしましたが、その物価上昇と賃上げという流れを受けて、年金の支給額も増えたということです。

ただ、この物価と賃金の上昇分に合わせて年金の支給額を計算すると、本来であれば約6000円増えるはずなんです。しかし、今回増えたのは4889円ということで、約1200円目減りしているわけです。

榎並大二郎キャスター:
もらえる金額は増えたけど、それよりも物価・賃金の上昇が上回っているということですよね。

“マクロ経済スライド”の発動

宮司愛海キャスター:
では、なぜ目減りしたのかというと、“マクロ経済スライド”という仕組みが発動されたんです。この発動は、3年ぶりだそうです。

日本では少子高齢化が急速に進んでいて、年金保険料を納める世代が減少して今後も先細りしていく見通しです。一方で、高齢化は進む。つまり、年金を受け取る世代は増えていく。
納める人が減って、受け取る人が増えているというわけなんです。

そんな中で年金支給額が増えてしまうと、当然どんどん財源が足りなくなっていきます。
そこで、年金支給額が増えたときに抑えていくという仕組みが、“マクロ経済スライド”です。

今年度は、このマクロ経済スライドによって、年金が1200円目減りしたということなんです。

榎並大二郎キャスター:
今後も物価・賃金が上がり続けたら、マクロ経済スライドもずっと発動していくことになるんですか?

宮司愛海キャスター:
それについて、年金制度に詳しい生活経済ジャーナリスト・柏木理佳さんに話を聞きました。

今後も物価・賃金の上昇が続き、年金の支給額が増えれば「マクロ経済スライド」が発動され“目減り”することになるが、現役世代の負担が増えないようにするには、このマクロ経済スライドで“支給額を抑える”しかないということでした。

ただ、固定した保険料の範囲でやりくりができるようになれば終了することになっているということです。

「将来が不安」「老後はバラ色ではない」

榎並大二郎キャスター:
現状この年金制度を維持していくためには、目減りは仕方ないのかなと思いつつ、将来が不安になりますよね。

ジャーナリスト 柳澤秀夫氏:
公的年金制度の信頼が、ここで大きく揺らいでますよね。少子高齢化で支える世代がどんどん減ってくるわけだから、将来、本当に老後の生活はバラ色ではない。そうなってくると、年金の支給時期をさらに先送りする話になってくるし、月々の給料から天引きされる負担額も増えるかもしれない。

単に年金だけの問題ではなくて、我々としては、「この日本という国をどうするんだ」って突きつけられているという考えが必要なのかなと思います。

宮司愛海キャスター:
一人一人が考えなくてはいけない、そんな局面に立っている気がします。
年金の仕組みに関しても、疑問を感じたらうやむやにせず、どういう制度でこのなっているのかを知ることが大切だと思います。


(「イット!」6月15日放送より)