AI(人工知能)の力でビートルズ最後の曲が完成した。

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元ビートルズのポール・マッカートニーさんは13日、イギリスBBCのインタビューで、未完成だったビートルズ最後の曲をAI技術を使って完成させ、2023年中に発表する予定だと明らかにした。

メンバーだったジョン・レノンさんが古いデモテープに残した音源から、AI技術を使って雑音を取り除いた上で、レノンさんの歌声だけを取り出すことに成功したという。

マッカトニーさんは、「AIはある意味怖いが、ワクワクする。未来の技術なので楽しみでもある」などと話していた。

曲名は明かされていなかったが、BBCは1978年にレノンさんが書いた「ナウ・アンド・ゼン」の可能性が高いとしている。

「復元」技術でよりクリアな音が実現か

「Live News α」では、暮らしを変えるテクノロジーに詳しいIoT NEWS代表の、小泉耕二さんに話を聞いた。

堤 礼実 キャスター:
AIを使って生まれたビートルズ「最後の曲」、どうご覧になりますか。

 IoT NEWS代表・小泉耕二さん:
どんな技術を使って曲をつくったのか、詳細が伝えられてはいないため、想像を交えての考察になりますが、実は、これまでのソフトウエアでも、音源のノイズを除去したり、ある程度クリアにすることはできました。

今回の場合、AIがジョン・レノンの声を学習することで、よりクリアに彼の声を引き出す「復元」が可能になった、ということではないでしょうか。

堤 礼実 キャスター:
音楽をつくる際にAIを活用すると、どんなことができるのでしょうか。

IoT NEWS代表・小泉耕二さん:
現在のAI技術では、ジョン・レノンの声の特徴やクセを学習して、本人の代わりに「AIが歌う」ことも簡単にできます。

一方、今回の場合、オリジナルを尊重して「復元」を行ったといえます。つまり、ゼロから作ることも、復元することもできるのです。

また、作曲に関していうと、和音や旋律などは一定のロジックに基づいて作られているので、AIがなくとも、コンピュータによる作曲は比較的容易です。

それがAIの活用で、よりインテリジェントに作れるようになったので、私個人としては、AIをうまく使いこなす方が良いと思っております。

 “著作権問題”の動向を注視すべき

堤 礼実 キャスター:
芸術の分野でAIを活用することについて、さまざまな議論があるようですが、いかがですか。

 IoT NEWS代表・小泉耕二さん:
AIによる創作で、気になるのは著作権の問題です。いま、話題の生成系AIで創作する場合、過去に誰かが生み出した著作物に似ている場合があります。

AIが学習したデータの中に過去の著作物が含まれていて、知らずに作った作品が似ていた場合、権利の侵害にあたるのか、専門家の間でも意見が分かれています。

ただし、ある特定のアーティストの声や曲調を過去の楽曲から学習して、意図的にそのアーティストに似せた楽曲を生成系AIで作ったとしたら、権利侵害となる可能性は高くなるでしょう。

AIの進化と活用が進む中で、創作物に関する権利の問題は、今後、より複雑になる可能性があります。ルール作りもこれからという側面もあるので、その動向を注視しながら、作品の創作や、利用をしていく必要があります。

堤 礼実 キャスター:
今回のような使い方で、AIと人間が協力しあえるのは素敵なことですよね。

賛否はあるのかもしれませんが、ポールを中心に行った制作ということで、何年もの時を超えた仲間の共同制作に、ワクワクしている方はとても多いのではないでしょうか。

(「Live News α」6月14日放送分より)

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