鶴の港に国際クルーズ船。国際観光都市を目指す長崎に新型コロナ前の風景が戻ってきた。一方、経済の起爆剤として国際クルーズ船の誘致を進めるのは長崎だけではない。世はクルーズ船誘致「戦国時代」へ突入か? テレビ長崎の記者がクルーズ船に乗り込み、その魅力と経済効果を取材した。

国際クルーズ船「コスタ・セレーナ」

2023年6月2日、長崎港に白い巨大な船体が姿を現した。

テレビ長崎 石橋亮一記者:
大きな客船です。2023年だけで10回、長崎に寄港する予定の「コスタ・セレーナ」です。ここ長崎から熊本・八代へ一晩、船旅を体験してきたいと思います

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取材班が乗り込んだのは、イタリア船籍の国際クルーズ船「コスタ・セレーナ」。韓国・釜山を出発し長崎、熊本をめぐる3泊4日の船旅に「途中参加」した。

客室がずらり
客室がずらり

テレビ長崎・石橋亮一記者:
エレベーターで移動してきました。コスタ・セレーナは全長290メートルあります。ここからは客室があるキャビンのスペースになります。客室がずらり! 逆を見てみると突き当たりが見えません。部屋を探すだけでも探検気分です

客室は1,500あり、それぞれにベッドやトイレ、シャワーが完備されている。

船上デッキ
船上デッキ

船上デッキにはプールやウォータースライダー、バスケットボールのコートなどもあり、運動することもできる。

テレビ長崎 石橋亮一記者:
船の中の楽しみのひとつが食事ですよね。豊富なメニューがそろっています。ほとんどを追加料金なしで食べることができます。そして乗客に応じたメニューも準備されていて、今回は韓国からの利用が多いためキムチが置いてあります

食事はブュッフェスタイルで朝6時から深夜まで、いつでも「作りたて」を味わうことができる。人気メニューは「ナポリピッツァ」だ。専門の職人が作る本場の味。水牛のモッツァレラチーズやベーコンなどの具材をのせるのではなく、包み込むのがナポリ流!

作りたてのナポリ流ピッツァに舌鼓
作りたてのナポリ流ピッツァに舌鼓

視察した長崎県や佐世保市の職員も本場の味に舌鼓を打った。

長崎県文化観光国際部 伊達良弘政策監(国際戦略担当):
おいしいですね!

カメラを向けるとハートを作ってくれた料理人
カメラを向けるとハートを作ってくれた料理人

多彩な食事を生み出しているのがチームワーク抜群の料理人たち。

パスタの種類について説明を受けていたのは、長崎南高校の吹奏楽部だ。長崎に寄港するクルーズ船を音楽で歓迎している縁で、船内の見学会に招待された。厨房や子供用スペースなど外から見ることができない船の内部を実際に見て回り驚きの連続だったようだ。

長崎南高校ブラスバンド部の部長:
内装、外装、見える風景も中身の様子もまったく違って本当に異世界に来たような感じで、何回も写真をとってすごくいい思い出になりました。ここに住みたいと思った

経済効果に県も期待

見学会を企画したのは長崎県クルーズ振興協議会とコスタクルーズだ。

コスタクルーズ日本・韓国支社 浜岡聡一支社長:
以前お世話になったものをちょっとでもお返しできたらと企画させてもらいました

2020年4月に起きた長崎に寄港中の客船内での集団感染をはじめ、新型コロナが国際クルーズに大打撃を与えた。長崎港ではピーク時に年間260隻を超えていたクルーズ船の寄港はゼロとなった。

コスタクルーズ日本・韓国支社 浜岡聡一支社長:
お詫びを申し上げるところ。今年はコロナ収まってすぐなので、いわゆる団体というか、旅行会社でオーガナイズしたツアーから始めようと今年いっぱいはこの形

午後7時すぎ、長崎南高校の演奏に見送られ、約1,700人を乗せた船が岸壁を離れた。

女神大橋の下をくぐり抜けた
女神大橋の下をくぐり抜けた

女神大橋の下をすれすれで、くぐり抜けるタイミングは乗客だけでなく、乗員にとっても、長崎寄港の「醍醐味」のひとつのようだ。

船内ではショーが盛り上がっていた
船内ではショーが盛り上がっていた

そして夜の移動中、多くの人が楽しんでいたのが音楽やショーだ。2023年、長崎港には130隻のクルーズ船が寄港を予定していて、長崎県は経済効果に期待を寄せている。

長崎県 国際観光振興室インバウンド・クルーズ班 坂庭雅史係長:
動くエンターテインメント施設と感じました。広域周遊など宿泊を伴うクルーズ商品の開発などに取り組んでいきたい

受け入れ拠点に熊本県も名乗り

誘致に動いているのは長崎県だけではない。

くまモンがお出迎え
くまモンがお出迎え

テレビ長崎 石橋亮一記者:
長崎を出て約12時間、八代が見えてきました。大きなくまモンが出迎えてくれています

アジアに近い九州がクルーズ船の寄港地として注目されていることに、熊本県も目をつけている。国やアメリカの船会社とともに「くまモンポート八代」を整備し、受け入れ拠点に名乗りをあげた。

岸壁は世界最大22万トン級のクルーズ船の受け入れが可能で、ターミナルの横には飲食店も並び、84体のくまモンがお出迎え。観光スポットとなっている。

熊本県八代市 中村博生市長:
観光案内所への通訳の配置、八代観光を楽しんでもらうために、市街地行きのシャトルバスの運行、関係者一同で準備をしてきた

新型コロナの感染拡大を乗り越え、国際クルーズ船の誘致合戦をどう勝ち抜くのか。二次交通の拡充や、体験型観光の開発など「新たな一手」も求められている。

(テレビ長崎)

テレビ長崎
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