数々の機密文書を隠匿していたとされる問題でトランプ氏が起訴された。
有罪が確定するまで何人にも推定無罪が適用されるので迂闊なことを言ってならないのだが、8日に公表された49ページの起訴状を読む限り、トランプ氏は真っ黒という印象である。
軍事機密を民間人に…起訴状にトランプ氏の会話
起訴状の詳細は各種報道に譲るが、その中で、トランプ氏にとって決定的に不利と思われるのは、トランプ氏がとある軍事機密情報を、それを見る資格を持たない民間人に見せびらかしていたとされる部分である。
当該部分の会話は起訴状の15ページと16ページに記載されている。抜粋すると…
トランプ氏:
この[軍幹部]が…それを見せてくれ。サンプルをお見せするよ。彼はA国を攻撃したいと言ったんだ。驚きだろう?…中略…これはオフレコなんだが、彼らは私にこれを提示したんだ。彼が。国防総省と彼がね。
同席のライター:
ワオ
…中略…
トランプ氏:
これはとても重要な機密なんだ。
…中略…
トランプ氏:
シークレットさ。シークレット情報だ。
…中略…
トランプ氏:
これは軍部が作成したもので、私に渡されたんだ。あー、もしかすると我々は多分…そうだろう?
同席のスタッフ:
私には分かりませんね。確認してみないと…そうですね、トライしてみる必要が…
トランプ氏:
これを機密解除するのさ
スタッフ:
対処する…そうですね
トランプ氏:
大統領だったら機密指定を解除できたんだがね
スタッフ:
確かに。[笑い]
トランプ氏:
今は出来ないのさ。分かっているだろう。これはまだ機密なんだ。
スタッフ:
それは問題ですね
この会話で対象になっている機密文書がどのような物か、登場する軍幹部が誰なのか、A国とは何処なのか、起訴状では伏せられている。が、報道によれば、ミリー統合参謀本部議長が当時大統領だったトランプ氏に提出したイランに対する攻撃計画(の一部?)であろうとも言われている。
検察側は会話の録音を所持か
この会話が意味するところは、トランプ氏は第三者である民間人に公開することの出来ない機密文書であることを知りながら、当該文書を提示した。そして、この時、既に大統領職を退いていた自身に機密指定を解除する権限が無いことを自覚もしていたということである。
自身がこの文書を保持していることが違法であることをどの程度認識していたかは、この会話からだけでは判然としないが、起訴状によれば、当時、トランプ氏自身を含め同席していた全員にこの文書に記載された機密情報を見る資格は無かったという。
検察側は会話の録音を所持していると言われている。裁判が進めば、録音された音声も公開される筈だ。
これはアウトである。来週、出廷すると言われるトランプ氏がどう対応するか不明だが、言い逃れは非常に難しい。
大統領選への影響は?
問題は選挙戦への影響である。

共和党の候補者指名レースで圧倒的なリードを続けるトランプ氏は「これは魔女狩りだ」という反論を続ける可能性がある。それを信じる岩盤支持層に大きな影響は出ないかもしれない。
しかし、今回、軍部が提出した機密文書を、このように軽々に第三者の民間人に見せびらかしたことは、最高司令官としての資質に更なる疑問符が投げ掛けられる可能性は高い。
これは軍を重視する保守層・共和党支持者に間違いなく響く。どのような規模になるかは不明だが、一部支持層の離反を招く可能性は否定できない。元々、中間層の支持が高いとは言えないトランプ氏には痛手になるだろう。
数々の疑惑や極端な主張のせいで、トランプ氏のelectability=当選能力には既に陰りも見え始めている。共和党内のレースでは依然勝利を収める可能性はあるが、バイデン大統領相手の本選挙での勝利には大きなマイナス要因となるだろう。
もっとも裁判がいつどのような形で決着するかも不透明だし、仮にトランプ氏が有罪となっても、立候補は可能とされている。
普通に考えれば、今回の起訴が年貢の納め時に繋がっても不思議ではないのだが、トランプ氏には数々の逆境を撥ね退けて来た実績もある。何をしでかすか分からないという不気味さもある。そして、バイデン大統領には高齢という弱点がある。
何といってもトランプ氏には常識は通用しないのである。そして、本選挙はまだ1年半も先なのである。
*以下は起訴状記載の当該会話全英文
Trump:Well, with [the Senior Military Official]―uh, let me see that, I'll show you an example. He said that I wanted to attack [Country A ] . Isn't it amazing? I have a big pile of papers, this thing just came up. Look This was him. They presented me this―this is off the record, but---they presented me this. This was him. This was the Defense Department and him.
WRITER:Wow.
TRUMP:We looked at some. This was him. This wasn't done by me, this was him. All sorts of stuff pages long, look.
STAFFER:Mm.
TRUMP:Wait a minute, let's see here.
STAFFER:[Laughter] Yeah.
TRUMP:I just found, isn't that amazing? This totally wins my case, you know.
STAFFER:Mm- hm.
TRUMP:Except it is like, highly confidential.
STAFFER:Yeah. [Laughter]
TRUMP:Secret. This is secret information. Look, look at this. You attack, and ―
*****************************************
TRUMP:By the way. Isn't that incredible?
Staffer:Yeah.
Trump:I was just thinking, because we were talking about it. And you know, he said, “he wanted to attack [Country A] , and what . . .”
Staffer:You did.
Trump:This was done by the military and given to me. Uh, I think we can probably, right?
STAFFER:I don't know, we'll, we'll have to see. Yeah, we'll have to try to---
TRUMP:Declassify it.
STAFFER:-figure out a--yeah.
Trump:See as president I could have declassified it.
STAFFER:Yeah. [Laughter]
TRUMP:Now I can't, you know, but this is still a secret.
STAFFER:Yeah. [Laughter] Now we have a problem.
Trump:Isn't that interesting?
【執筆:フジテレビ解説委員 二関吉郎】